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第1章

No.110

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アルフォンスは、怒りに任せてドラゴンブレスを放っていた。

(これが、真琴を殺そうとした………っ!)

今は炎の中で悶え苦しんでいるあの蛇が、真琴を殺そうとしたと思うと目の前が真っ赤になってしまった。

あの蛇も、元々は普通の蛇だったのだ。
それを、あの蛇獣人に追跡魔法の素材として利用されただけの哀れな生き物だ。

そう頭では理解している。

だが、アルフォンスは決して許せなかった。
何故なら、真琴に傷があったからだ。

真琴の手足や顔、肌の出ている所に出来た大小様々な切り傷。それらの傷は、草木で出来た傷だ。頬に出来た傷など、少量だが血が出ている。それなのに、真琴は痛いとも言わない。

……いや、そもそも怪我をしている事すら気が付いていないのだ。

それ程までに必死に逃げていたのだ。
全身の切り傷の痛みすら認識出来ない程、必死に。

(どれ程、怖かっただろう…)

平和な争いの無い世界から来た真琴。
いつも笑顔で、相手への思いやりを忘れ無い真琴。

(そんな彼女が、泣いたのだ)

わんわんと幼子の様に人目も憚らずに。
大きな声で叫びながら、ひたすら泣いた。


その姿は、アルフォンスに強い衝撃を与えた。


分かっていた。
真琴に、辛い思いをさせた事。経験しなくていい、見なくてもいい事をさせた事。

怒鳴られると思っていた。
泣かれると思っていた。

それら全てをする権利が真琴にはあると分かっていた。


ーーだが結局は、頭で分かっ気になっていただけでで本当に "理解"はしていなかったのだ。


「うわぁーーん」と、アルフォンスを気にもせずに幼子の様に泣いた彼女を見て、アルフォンスは初めて"理解"した。

心の何処かでは、思って決め付けていたのだ。。

彼女真琴はきっとアルフォンスを責めずに"助けてくれてありがとう"と優しく笑うのだと』

優しい彼女の事だからと…。
だが、どうだ?

周囲を気遣う心優しい彼女が、周りの迷惑になるだとか関係なく泣き叫けんでいる。怖かった、辛かったと声を上げて泣いている。

この姿こそが、アルフォンスの全ての罪の結晶だ。

今回の件だけでは無い。
18年前から始まった己の愚かな罪の代償を全て彼女に背負わせてしまった。

(本来なら、俺が背負うべきモノなのに…っ!!)

真琴を苦しめた者達への怒りと憎しみ。もっと早く助ける事の出来なかった後悔。

何より、真琴に辛い思いをさせた己への怒り、憎しみ。

それらがごちゃ混ぜになってしまい、ドラゴンブレスを止める事が出来なかった。





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