10 / 47
過去の記憶
全ての始まり…
しおりを挟む
「最近人気のお店があって今日は其処に予約を入れといたの」
「あっ!知ってます。あのスイーツが人気のところですよね?」
「えぇ。スイーツだけじゃなくて料理も女性向けの店なの」
一度行ってみたかった店だ。予約を入れないと入れないちょっと高級感溢れる店。
「よく予約入れられましたね」
「知り合いが其処で働いてるのよ」
そんな事を話しながら歩いていた時だった。
「キャーーッ!!」
「「!?」」
遠くから悲鳴が聞こえる。
「おいっ!こいつナイフを持ってるぞっ!」
「逃げろっ!」
「助けて!」
目の前の人達が一斉に此方に走ってくる。
「ちょっ!何があったの!」
「強盗がナイフを持ってこっちに逃げて来てるんだっ!あんた達も早く逃げな!」
男性が走り去りながら教えてくれる。
「レム!私達も騎士団が来るまで安全な所に逃げるわよ!」
「うん!」
そうして2人で走り出した時。
「うわぁ~ん!お母さんどこ~!」
「!?」
耳に聴こえる子供の泣き声。
(まさかっ!)
振り返ると小さな子供が逃げ惑う人の隙間に見える。その更に後ろにはナイフを持った男。
「レムっ!?」
ソフィーさんの驚いた声を聞きながらその子の元に走る。人の流れに逆らいながら走るが中々進まない。
(こうなったら…)
足に力を込め思いっきり飛ぶ。人々の頭上を2~3メートル飛び越え子供のいる手前付近に着く。子供の方を向いた瞬間血の気が引いた。子供のすぐ近くに男が近付いていて手にしたナイフを振りかぶっていた。
「ダメッ!」
全てがスローモーションに見えた。
ゆっくりと降りて来るナイフ。
嗤う男の顔。
顔を真っ赤にして泣く子供。
間に合わない…そう思った。
カキィーーーンッ!!
金属の高い音が聞こえる。
「ぐぁっ!!」
続けて男の呻き声と血の匂い。
「あっ…」
目の前には風に揺れる赤い髪。右手で剣を持ち左手には子供を抱えた1人の騎士。
「リュ…シュオン」
私の声に振り返った彼の目には怒りが見えた。
「何…やってる」
「えっ?」
「一体何をしてるんだっ!」
彼の怒鳴り声を初めて聞いた。
「何故っ!何故避難していない!何故騎士を待たなかった!」
「だって子供が…」
「それでもっ!お前が危険な目にあったかも知れないんだぞ!!自身を守る事すら出来ないのに何をしてるんだっ!」
彼の言いたい事はわかる。自分の身すら守れないのに自身を危険に晒した。本当なら騎士を待つのが正しいのだろう。
(だけど…)
「その子が…。お母さんに助けを求めて泣いてたから」
この子が居なかったら私も騎士を待っていた。でも耳に聞こえてしまったから。この目で認識してしまったから。恐怖で泣く小さな子供を。
「私は自分の行動を間違ったとは思わない」
「っ!」
口を開いたが何も言わず結局口を噤む。
「ルーっ!」
「お母さんっ!」
遠くの人集りから女性が飛び出して来る。名前を呼ばれた子供は母親を求め手を伸ばす。リュシュオンは女性に近付き子供を渡す。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
泣きながら子供を抱きしめ感謝の言葉を口にする女性を見て安堵する。
(良かった…)
その時だった。
視界にゆっくりと立ち上がる男が視界に入る。
「くそッくそッ!殺してやる。絶対殺してやる!」
血に濡れた手をリュシュオンに向けた男。すると飛ばされたナイフが浮き上がりリュシュオン目掛けて飛んで行く。
「リュシュオンっ!」
驚いて振り返るリュシュオンの前に身体を滑り込ます。
「っ!」
「レムっ!」
心臓の辺りに鋭い痛みが走る。身体から力が抜け倒れるが地面すれすれでリュシュオンが抱き止める。
「レムっ!しっかりしろ!誰か治癒師を!」
そんな彼の焦った声を何処か他人事の様に聞いていた。
「あっ!知ってます。あのスイーツが人気のところですよね?」
「えぇ。スイーツだけじゃなくて料理も女性向けの店なの」
一度行ってみたかった店だ。予約を入れないと入れないちょっと高級感溢れる店。
「よく予約入れられましたね」
「知り合いが其処で働いてるのよ」
そんな事を話しながら歩いていた時だった。
「キャーーッ!!」
「「!?」」
遠くから悲鳴が聞こえる。
「おいっ!こいつナイフを持ってるぞっ!」
「逃げろっ!」
「助けて!」
目の前の人達が一斉に此方に走ってくる。
「ちょっ!何があったの!」
「強盗がナイフを持ってこっちに逃げて来てるんだっ!あんた達も早く逃げな!」
男性が走り去りながら教えてくれる。
「レム!私達も騎士団が来るまで安全な所に逃げるわよ!」
「うん!」
そうして2人で走り出した時。
「うわぁ~ん!お母さんどこ~!」
「!?」
耳に聴こえる子供の泣き声。
(まさかっ!)
振り返ると小さな子供が逃げ惑う人の隙間に見える。その更に後ろにはナイフを持った男。
「レムっ!?」
ソフィーさんの驚いた声を聞きながらその子の元に走る。人の流れに逆らいながら走るが中々進まない。
(こうなったら…)
足に力を込め思いっきり飛ぶ。人々の頭上を2~3メートル飛び越え子供のいる手前付近に着く。子供の方を向いた瞬間血の気が引いた。子供のすぐ近くに男が近付いていて手にしたナイフを振りかぶっていた。
「ダメッ!」
全てがスローモーションに見えた。
ゆっくりと降りて来るナイフ。
嗤う男の顔。
顔を真っ赤にして泣く子供。
間に合わない…そう思った。
カキィーーーンッ!!
金属の高い音が聞こえる。
「ぐぁっ!!」
続けて男の呻き声と血の匂い。
「あっ…」
目の前には風に揺れる赤い髪。右手で剣を持ち左手には子供を抱えた1人の騎士。
「リュ…シュオン」
私の声に振り返った彼の目には怒りが見えた。
「何…やってる」
「えっ?」
「一体何をしてるんだっ!」
彼の怒鳴り声を初めて聞いた。
「何故っ!何故避難していない!何故騎士を待たなかった!」
「だって子供が…」
「それでもっ!お前が危険な目にあったかも知れないんだぞ!!自身を守る事すら出来ないのに何をしてるんだっ!」
彼の言いたい事はわかる。自分の身すら守れないのに自身を危険に晒した。本当なら騎士を待つのが正しいのだろう。
(だけど…)
「その子が…。お母さんに助けを求めて泣いてたから」
この子が居なかったら私も騎士を待っていた。でも耳に聞こえてしまったから。この目で認識してしまったから。恐怖で泣く小さな子供を。
「私は自分の行動を間違ったとは思わない」
「っ!」
口を開いたが何も言わず結局口を噤む。
「ルーっ!」
「お母さんっ!」
遠くの人集りから女性が飛び出して来る。名前を呼ばれた子供は母親を求め手を伸ばす。リュシュオンは女性に近付き子供を渡す。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
泣きながら子供を抱きしめ感謝の言葉を口にする女性を見て安堵する。
(良かった…)
その時だった。
視界にゆっくりと立ち上がる男が視界に入る。
「くそッくそッ!殺してやる。絶対殺してやる!」
血に濡れた手をリュシュオンに向けた男。すると飛ばされたナイフが浮き上がりリュシュオン目掛けて飛んで行く。
「リュシュオンっ!」
驚いて振り返るリュシュオンの前に身体を滑り込ます。
「っ!」
「レムっ!」
心臓の辺りに鋭い痛みが走る。身体から力が抜け倒れるが地面すれすれでリュシュオンが抱き止める。
「レムっ!しっかりしろ!誰か治癒師を!」
そんな彼の焦った声を何処か他人事の様に聞いていた。
468
あなたにおすすめの小説
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる