地球を殺すと決めた、地球で恋に落ちた

松藤かるり

文字の大きさ
12 / 13

11,距離(上)

しおりを挟む
 学校で耀くんに話しかけるのを許されるようになった。時間を決めて待ち合わせて一緒に登校をし、昼休みは二人で集まってお弁当を食べ、待ち合わせて下校をする。

 授業中やそれ以外の時間はわからないけれど、私と一緒にいる時に耀くんが他の生徒から危害を加えられることはなかった。少しでも私は耀くんを守れているのだろうか。

「池田さんさ、最近二年の先輩と一緒にいるよね?」

 その日々が続いた六月下旬のこと。帰りのホームルーム中に、前の席にいた子が振り返ってそう言った。

「あれは……」

 度々話してはいるけど友達と言えるほど親しくはなくて、私と耀くんの関係について彼女は知らないのだ。どう説明すべきかと迷っていると、その子はにこりと笑って私の肩を叩いた。

「カレシでしょ!? やるじゃーん、どうやって知り合ったの?」
「耀く……穂別先輩とはそういう関係じゃないから!」
「でも一緒に学校に来たり帰ったり、あとお昼ご飯一緒に食べてるって目撃情報も聞いたよー」

 違う、と首を横に振りながら、でも私と耀くんが彼氏彼女の関係として周りに見られていたのだと思うと、心の奥がぽかぽかと温かくて嬉しくなってくる。

 いじめから守るという名目であって、学校でひとりぼっちでいるかもしれない耀くんを助けるものだ。だから勘違いしてはいけない。そう言い聞かせても、どうにも口端は緩んでしまう。

「前に、池田さんが先輩たちに呼び出されてたでしょ? だから心配したけど……でも楽しそうでよかった」
「う、うん……」
「何かあったら相談してね。あと、たまにでいいから私ともお昼ご飯食べよ」

 中学の嫌な経験からか、友達を作るということに慣れていない。こうして話していてもいつかは裏切られるのではないかと怖くなってしまう。こうして昼食を食べようとか、グループ分け一緒にしようと提案をされても頷くけれど、どこか楽しめない自分がいた。

 だから、耀くんと一緒に行動ができるのは私にとって幸せなのだ。私の中で耀くんは信頼できる人だから気を許して接することができる。

「……もー、いつになったら私と連絡先交換してくれるの。池田さんと仲良くなりたいのに」
「そ、そのうち……」
「別にいいけどさー! 遊びに行こうって話してもいつも忙しい、でしょ? 夏休みは付き合ってよね。ってか池田さんって呼び方もそろそろ――」

 私に勇気があれば、この子とも仲良くできるのだろうか。でもまだ、友達を作ることは怖くて、そんな勇気はでてこない。

「こら、そこ! 静かにしなさい!」
「はーい!」

 雑談もさすがに長引きすぎたのか、いよいよ先生に気づかれて注意されてしまった。その子はぺろりと舌を出して先生に謝り、教卓の方へと向き直る。

 しばらく待つと、その子から破ったノートの端切れが渡された。手紙というやつだ。

『怒られちゃった、ごめんね巻きこんで。今度ゆっくり話そうよ。池田さんともっと仲良くなりたい! あと華奈ちゃんって呼んでもいい?』

 綴られた小さな丸い字は女の子がたくさん詰まっているようだった。女子高生らしいやりとりなのかもしれない。どんな返事を書こうかと悩んでいると先生が私の名を呼んだ。

「池田。この後少し残ってくれ。図書委員の仕事を頼みたいんだ」
「お願い……ですか?」
「今日の図書委員当番はB組の子だったんだけど風邪で休んでてな。お前に代わってほしいんだ」

 放課後は耀くんと待ち合わせをしていたので、図書委員の仕事が入ると遅れてしまう。そのことは頭にあったけれど先生の頼み事を断れなくて、結局引き受けるしかなかった。


「ごめんね、耀くん」

 待ち合わせ場所についてすぐ私は耀くんに事情を話した。

「図書委員か……ま、それは仕方ないよな」
「本当にごめん! 先に帰っていても大丈夫だよ」

 待ち合わせ場所は人気のない屋上近くの階段。図書委員の仕事が終わるのは二時間後なので、その間ここで待っているのは大変だ。それに耀くんがいじめられるのではないかという心配もある。自ら提案しておいて当日に断るなんて申し訳ないけれど、先に帰ってもらった方がいいのではないかと思った。
 けれど、耀くんは首を横に振る。

「別にいいよ。俺も図書室で時間潰してるから。今日雨だから、どっちにせよ隠れ場所寄れないし」
「二時間あるけど、いいの? 気を遣わせてごめんね」
「適当な本でも読んでるよ。だから謝るなって」

 耀くんは恥ずかしそうに頬をかいていて、その仕草につい笑ってしまう。

「なんだよ」
「ううん、何でもない」

 本当は、残ってでも一緒に帰ると言ってくれたことが嬉しかった。申し訳ないと思いながらも、そうなったらいいのにと願っている自分がいたから、こうして叶うことが嬉しくてたまらない。

「ほら、行くぞ。図書室だろ」

 頷いて隣を歩く。屋上近くを離れて、生徒たちの姿がまばらにある廊下へ。すれ違う人たちには私たちが彼氏彼女の関係だと思われているのだろうか。そうであったなら、少し幸せだ。もしも耀くんをいじめる上級生たちがきたって、今なら追い返してやる。そんな風に浮かれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

処理中です...