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動揺のティーパーティ
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「どうぞ、おすわりください」
「ありがとうございます」
フェリスの案内で、ルイが席に座る。それはとても可愛らしい光景だった。ついそれを微笑ましく見守っていた大人たちも、ルイとフェリスが座ったのを見て、思い出したように動き出した。
「あら、わたくしったら、ぼんやりしてごめんなさい。どうぞヒューバートさん、エメリーンさんもお掛けくださいな」
「はい」
「ありがとうございます」
――あら? オリヴィア様は、旦那様も『さん』付けしているのね。
丸テーブルを囲んだ席に着きながら、エメリーンはそんなことを考えていた。親しみのこもったその声色に、ヒューバートと夫妻の親しさが分かる。
ヒューバートの家族だから、エメリーンとルイも、オリヴィアからいきなり名前に『さん』付けで呼ばれたのか、とエメリーンは納得した。
――牽制では無かったのね……。
オリヴィアに『さん』付けで呼ばれたとき、身分を弁えろと、表面には至上の優しい微笑みを浮かべながら、そう言われているのだとエメリーンは思っていた。
王族とはこういうものか、とエメリーンはそれをそのまま受け止めていたのだが、ヒューバートに対するオリヴィアの態度を見て、考えすぎだったかもしれないと思い直した。
「さあ、今日の日のために、いろいろなデザートを用意させた。どうぞ楽しんでくれたまえ」
王太子ファビアンの言葉通り、テーブルにはたくさんの種類のケーキやフルーツなどが並んでいる。紅茶を供されながら、それらを見ているだけでも華やかで楽しいが、ある一つのケーキを見て、エメリーンの身体が一瞬強張った。
白くてなめらかなクリームが美味しそうなそのケーキには、赤い花びらが散りばめられている。見た目にとても綺麗なそのケーキは、花の香りもきっと楽しめるのだろう。
そう思いながらも、エメリーンはそっとそのケーキから視線を離した。エメリーンはその内心の動揺を、誰の目からも上手く隠すことに成功した。
「楽しんで貰いたいと、ケーキやフルーツの他にも、珍しいお菓子を用意した」
ファビアンがそう言うと、長細い形の焼き菓子が一人ずつの前に置かれた。
「これは? 初めて見る菓子だ」
ヒューバートの言葉にルイが頷くと、ファビアン王太子が、何故だかホッとしたように微笑った。
「そうか。ヒューバートとルイ殿は初めてなのだね。辺境伯夫人はどうかな? 実家で食べたことがあるかもしれないね」
ファビアンはオリヴィアとは異なり、エメリーンを少し距離を感じる呼び方で呼んだ。そのことに気を取られていたからか、エメリーンはつい本当のことをポロリと答えた。
「いえ、あの家ではお菓子はほとんど食べたことはありません」
「は?」
「あ、いえ、その……」
王太子夫妻が目を見合わせている。どうやらオルクス子爵家でのエメリーンの扱いは、王太子夫妻には知られていなかったらしい。エメリーンはそれについては、少しホッとした。
「これ、とても美味しいです」
「え、ええ、どうぞお好きなものをお好きなだけ食べてちょうだいね」
余計なことを言ってしまったと思ったエメリーンは、すぐに話を切り替えて微笑んだが、オリヴィアは動揺が隠せないようだ。少しぎこちない会話になった。
王太子夫妻の様子にヒューバートは疑問を持ったが、エメリーンはお菓子に気が逸れていたこともあり、そのことはあまり気にならなかった。
食べてから思い出したが、サクッとして、中がしっとりしているそのお菓子を、エメリーンは一度だけ食べたことがあった。正確に言えば、食べたのはエメリーンではなくアリサだ。
――確か、隣国の珍しいお菓子が手に入ったって、サイラスが食べさせてくれたのよね。
さすがに王族は珍しいお菓子も手に入るのだな、とエメリーンは深く考えずに、懐かしいお菓子の味を楽しんだ。そんなエメリーンの姿を、王太子夫妻はジッと意味ありげに見つめていたのだが、エメリーンはそのことに気が付かなかった。
「ありがとうございます」
フェリスの案内で、ルイが席に座る。それはとても可愛らしい光景だった。ついそれを微笑ましく見守っていた大人たちも、ルイとフェリスが座ったのを見て、思い出したように動き出した。
「あら、わたくしったら、ぼんやりしてごめんなさい。どうぞヒューバートさん、エメリーンさんもお掛けくださいな」
「はい」
「ありがとうございます」
――あら? オリヴィア様は、旦那様も『さん』付けしているのね。
丸テーブルを囲んだ席に着きながら、エメリーンはそんなことを考えていた。親しみのこもったその声色に、ヒューバートと夫妻の親しさが分かる。
ヒューバートの家族だから、エメリーンとルイも、オリヴィアからいきなり名前に『さん』付けで呼ばれたのか、とエメリーンは納得した。
――牽制では無かったのね……。
オリヴィアに『さん』付けで呼ばれたとき、身分を弁えろと、表面には至上の優しい微笑みを浮かべながら、そう言われているのだとエメリーンは思っていた。
王族とはこういうものか、とエメリーンはそれをそのまま受け止めていたのだが、ヒューバートに対するオリヴィアの態度を見て、考えすぎだったかもしれないと思い直した。
「さあ、今日の日のために、いろいろなデザートを用意させた。どうぞ楽しんでくれたまえ」
王太子ファビアンの言葉通り、テーブルにはたくさんの種類のケーキやフルーツなどが並んでいる。紅茶を供されながら、それらを見ているだけでも華やかで楽しいが、ある一つのケーキを見て、エメリーンの身体が一瞬強張った。
白くてなめらかなクリームが美味しそうなそのケーキには、赤い花びらが散りばめられている。見た目にとても綺麗なそのケーキは、花の香りもきっと楽しめるのだろう。
そう思いながらも、エメリーンはそっとそのケーキから視線を離した。エメリーンはその内心の動揺を、誰の目からも上手く隠すことに成功した。
「楽しんで貰いたいと、ケーキやフルーツの他にも、珍しいお菓子を用意した」
ファビアンがそう言うと、長細い形の焼き菓子が一人ずつの前に置かれた。
「これは? 初めて見る菓子だ」
ヒューバートの言葉にルイが頷くと、ファビアン王太子が、何故だかホッとしたように微笑った。
「そうか。ヒューバートとルイ殿は初めてなのだね。辺境伯夫人はどうかな? 実家で食べたことがあるかもしれないね」
ファビアンはオリヴィアとは異なり、エメリーンを少し距離を感じる呼び方で呼んだ。そのことに気を取られていたからか、エメリーンはつい本当のことをポロリと答えた。
「いえ、あの家ではお菓子はほとんど食べたことはありません」
「は?」
「あ、いえ、その……」
王太子夫妻が目を見合わせている。どうやらオルクス子爵家でのエメリーンの扱いは、王太子夫妻には知られていなかったらしい。エメリーンはそれについては、少しホッとした。
「これ、とても美味しいです」
「え、ええ、どうぞお好きなものをお好きなだけ食べてちょうだいね」
余計なことを言ってしまったと思ったエメリーンは、すぐに話を切り替えて微笑んだが、オリヴィアは動揺が隠せないようだ。少しぎこちない会話になった。
王太子夫妻の様子にヒューバートは疑問を持ったが、エメリーンはお菓子に気が逸れていたこともあり、そのことはあまり気にならなかった。
食べてから思い出したが、サクッとして、中がしっとりしているそのお菓子を、エメリーンは一度だけ食べたことがあった。正確に言えば、食べたのはエメリーンではなくアリサだ。
――確か、隣国の珍しいお菓子が手に入ったって、サイラスが食べさせてくれたのよね。
さすがに王族は珍しいお菓子も手に入るのだな、とエメリーンは深く考えずに、懐かしいお菓子の味を楽しんだ。そんなエメリーンの姿を、王太子夫妻はジッと意味ありげに見つめていたのだが、エメリーンはそのことに気が付かなかった。
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