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王都の朝
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翌朝、心配していた旅の疲れもなく、ルイとエメリーンとヒューバートは、領地と同じように朝食の席に着いた。
「二人ともゆっくり休めたか?」
「はい。とても過ごしやすく部屋を整えて頂いていましたわ」
「はい。よくねむれました」
「そうか、それは良かった」と、ヒューバートがホッとしたような顔をしている。昨夜、ルイの部屋の中はエメリーンと共に確認したが、エメリーンの部屋の中には入らなかったので、少し心配していたようだ。
昨日確認したルイの部屋には、男の子が好きそうなブルーのアクセントクロスが貼られた壁があったり、今のルイにぴったりの大きさの、勉強机やテーブルが整っていた。ベッドも十分な広さで、肌触りの良さそうな寝具が用意されていたが、何よりエメリーンが感心したのは、絨毯やカーテンに、見事なドラゴンが描かれていたことだ。
「まあ、これはルイ様が目覚めたら喜びそうですね」
「そうだな。私も子供の頃は、同じような部屋で過ごした」
「そうなのですね」
もしかしたら、ダイナリア辺境伯の子供部屋に、代々受け継がれてきたモチーフなのかもしれないなと、エメリーンは思った。
エメリーンの部屋は、領地の部屋と良く似た雰囲気で纏められていた。絨毯の花模様も、領地の部屋と同じ柄だ。花瓶には香りの強くない花が飾られており、エメリーンの表情が解れた。
辺境伯領地でも、最初からエメリーンの部屋はしっかり整えられていた。それを思い出して、何だか懐かしいような気分になったのだ。
「ルイ様のお部屋は、見事なドラゴンの模様でしたね」
エメリーンがルイに話題を振ると、ルイが嬉しそうに頷いた。
「じゅうたんに、ドラゴンがいたの。ぼくが、えいってふんで、やっつけた!」
「まあ」
「勇ましいな、ルイ。ああ、カーテンにも小さなドラゴンがいるだろうが、カーテンは破らないようにな」
「あら、もしかして旦那様、破ったことがあるのでは?」
うっ、と言葉に詰まったヒューバートを、エメリーンとルイが笑った。
「ちちうえ、やぶったのですか?」
「旦那様、一体何枚破ったのかしら? ルイ様、旦那様の真似をしてはいけませんよ?」
「こ、子供の頃のことだ。ルイも、破ってみたければやってみても良い」
「えっ?」
カーテンを破っても良いと言われたルイが、そわそわとし始めたのを見て、エメリーンにもルイの気持ちが伝わって来た。
だが破ったカーテンを修繕するのは使用人たちだ。エメリーンとルイ、そしてヒューバートは、それぞれに控えている使用人の方を振り返った。
驚いた顔をしている者と面白そうな者、それに呆れたような笑みを浮かべた者、それぞれだ。そのみんなに声を掛けたのはエメリーンだった。
「ごめんなさい。もしものときは私にも繕わせてちょうだいね。裁縫は得意な方よ」
「えっ?」と意外そうな声が、あちこちからあがった。
「エメリーンさまは、さいほうもとくい?」
期待するようなルイの眼差しに、エメリーンが満面の笑みで頷いた。
「ええ。以前は服のお直しも自分でしていたんですよ?」
「すごい! もしかして、ちちうえもできますか?」
エメリーンのときと同じように、キラキラした目でルイに見つめられたヒューバートだったが、「いや、裁縫は、やったことがないな」と答えると、ルイの視線が微妙なものに変わった。
「そうですか……」
「そんなにがっかりすることでもないだろう」
ヒューバートの言葉にも、ルイは肩を落としたままだ。確かに裁縫は辺境伯に必要な技能ではないのだが、ルイに興味があるのならと、エメリーンが提案する。
「ルイ様もやってみますか? 裁縫」
「「「えっ?」」」
あちこちから疑問の声が上がる中、ルイが力強く頷いた。
「やる! カーテンがやぶけたら、ぼくがなおす」
「まあ。ルイ様は本当にいろいろなことに興味があって、素晴らしいですね」
エメリーンに褒められて嬉しそうなルイとは裏腹に、裁縫に興味を持ったことのないヒューバートは、少しだけ悔しそうな顔をした。
そんな朝食時のひとときを目の当たりにした王都の使用人たちは、ようやく本当に、ヒューバートの変化を実感していた。
もしかしたら、これからは胸を張って、ダイナリア辺境伯に仕えていると、言える未来が訪れるかもしれない。
まだ微かな光だが、それでも彼らには、その光が見えてきただけでも、とても救われた気持ちになったのだった。
「二人ともゆっくり休めたか?」
「はい。とても過ごしやすく部屋を整えて頂いていましたわ」
「はい。よくねむれました」
「そうか、それは良かった」と、ヒューバートがホッとしたような顔をしている。昨夜、ルイの部屋の中はエメリーンと共に確認したが、エメリーンの部屋の中には入らなかったので、少し心配していたようだ。
昨日確認したルイの部屋には、男の子が好きそうなブルーのアクセントクロスが貼られた壁があったり、今のルイにぴったりの大きさの、勉強机やテーブルが整っていた。ベッドも十分な広さで、肌触りの良さそうな寝具が用意されていたが、何よりエメリーンが感心したのは、絨毯やカーテンに、見事なドラゴンが描かれていたことだ。
「まあ、これはルイ様が目覚めたら喜びそうですね」
「そうだな。私も子供の頃は、同じような部屋で過ごした」
「そうなのですね」
もしかしたら、ダイナリア辺境伯の子供部屋に、代々受け継がれてきたモチーフなのかもしれないなと、エメリーンは思った。
エメリーンの部屋は、領地の部屋と良く似た雰囲気で纏められていた。絨毯の花模様も、領地の部屋と同じ柄だ。花瓶には香りの強くない花が飾られており、エメリーンの表情が解れた。
辺境伯領地でも、最初からエメリーンの部屋はしっかり整えられていた。それを思い出して、何だか懐かしいような気分になったのだ。
「ルイ様のお部屋は、見事なドラゴンの模様でしたね」
エメリーンがルイに話題を振ると、ルイが嬉しそうに頷いた。
「じゅうたんに、ドラゴンがいたの。ぼくが、えいってふんで、やっつけた!」
「まあ」
「勇ましいな、ルイ。ああ、カーテンにも小さなドラゴンがいるだろうが、カーテンは破らないようにな」
「あら、もしかして旦那様、破ったことがあるのでは?」
うっ、と言葉に詰まったヒューバートを、エメリーンとルイが笑った。
「ちちうえ、やぶったのですか?」
「旦那様、一体何枚破ったのかしら? ルイ様、旦那様の真似をしてはいけませんよ?」
「こ、子供の頃のことだ。ルイも、破ってみたければやってみても良い」
「えっ?」
カーテンを破っても良いと言われたルイが、そわそわとし始めたのを見て、エメリーンにもルイの気持ちが伝わって来た。
だが破ったカーテンを修繕するのは使用人たちだ。エメリーンとルイ、そしてヒューバートは、それぞれに控えている使用人の方を振り返った。
驚いた顔をしている者と面白そうな者、それに呆れたような笑みを浮かべた者、それぞれだ。そのみんなに声を掛けたのはエメリーンだった。
「ごめんなさい。もしものときは私にも繕わせてちょうだいね。裁縫は得意な方よ」
「えっ?」と意外そうな声が、あちこちからあがった。
「エメリーンさまは、さいほうもとくい?」
期待するようなルイの眼差しに、エメリーンが満面の笑みで頷いた。
「ええ。以前は服のお直しも自分でしていたんですよ?」
「すごい! もしかして、ちちうえもできますか?」
エメリーンのときと同じように、キラキラした目でルイに見つめられたヒューバートだったが、「いや、裁縫は、やったことがないな」と答えると、ルイの視線が微妙なものに変わった。
「そうですか……」
「そんなにがっかりすることでもないだろう」
ヒューバートの言葉にも、ルイは肩を落としたままだ。確かに裁縫は辺境伯に必要な技能ではないのだが、ルイに興味があるのならと、エメリーンが提案する。
「ルイ様もやってみますか? 裁縫」
「「「えっ?」」」
あちこちから疑問の声が上がる中、ルイが力強く頷いた。
「やる! カーテンがやぶけたら、ぼくがなおす」
「まあ。ルイ様は本当にいろいろなことに興味があって、素晴らしいですね」
エメリーンに褒められて嬉しそうなルイとは裏腹に、裁縫に興味を持ったことのないヒューバートは、少しだけ悔しそうな顔をした。
そんな朝食時のひとときを目の当たりにした王都の使用人たちは、ようやく本当に、ヒューバートの変化を実感していた。
もしかしたら、これからは胸を張って、ダイナリア辺境伯に仕えていると、言える未来が訪れるかもしれない。
まだ微かな光だが、それでも彼らには、その光が見えてきただけでも、とても救われた気持ちになったのだった。
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