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猫だと思って、あまり構わないで
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「は? 今、何て言った?」
シュテルンが言葉とは裏腹に面白そうな顔をした。嫌な予感がしながらも、ナギは考えてきた作戦通りに話を続ける。
「だから、私ここに住むから」
「ああん?」
「私の部屋、狭いのよ。ここは広いから問題ないでしょ」
『ここ』とナギが示したのは、ダダーンと40畳はあるリビング、いや、引き戸を開けて寝室が繋がっているので50畳くらいはあるであろうシュテルンの部屋だ。シュテルン1人では絶対に広すぎる。
ナギの与えられた部屋は1DKで洋室は6畳だが、本当はナギに不満などない。狭さに難癖を付けたのは、シュテルンの部屋に居座るための口実だ。
だがシュテルンの部屋をあちこち覗くうちに、浴室前にミストサウナのリモコンが付いていたり、御影石のカウンターや流しの排水口にディスポーザーが付いているキッチンがあったりして、ナギのテンションは一気に上がった。
——野菜くずなんかも、そのまま細かくして流しちゃうディスポーザー付きとか! こんなもん、高級マンションにしかないもんだと思ってたよ。メランガ、すごいっ! でもシュテルンの部屋では宝の持ち腐れすぎるっ!
「……で?」
キッチンで排水口のディスポーザーのフタを開けたり閉めたり5回は繰り返していたナギに、シュテルンが背後から呆れたような声で聞いた。
「で、って?」
「つい先日はメランガから出せと言っていたが、今度は俺の部屋に住むだと? お前、一体何を企んでる」
「た、企むなんて人聞きが悪い。あー。え、えーと? この前の……、が、良かった、から?」
——我ながら、棒読み過ぎるな、うん。
「あん? この間の夜が忘れられないとでも言うのか? 無表情で嘘を吐くな。お前、俺よりそのディスポーザーとやらに惹かれてるだろ」
シュテルンが苦い顔をするのに、ナギは素直に頷きそうになったが、かろうじて堪えた。
「ソ、ソンナコトナイヨー。で、でも、その、アレ、は、シュテルンがその気になったらで良いので、あの、ひと月に1回とか、うん、そんなもんで良いかなー。あとはその、私のことは猫のようなものだと思って、あまり構わないでもらえると」
「うれしいな、なんて」と言う話の続きは、シュテルンの睨みがあまりに剣呑だったため、声にならなかった。
——あ、あれ? うわっ? もしかして、この世界には猫がいない、とか? 確かにメランガで猫や犬は見た覚えがないかも……。で、でも豚肉や牛肉は普通にあるよね?
「その気になったら、だと? 猫だかなんだか知らんが、俺の部屋にある穴なら、俺は毎日使わせてもらう。それが嫌なら今すぐこの部屋から出ていけ」
——え? 引っかかってたの、そっち?
「い、いえー、毎日お相手しますともー。わー、う、うれしいなー」
ナギの表情は完全に無だった。心にも無いことを言葉にするのが、ナギは得意ではない。
——っていうか、猫でもなく穴、とか。もー、なんでこうクズなの。いや、いいのかクズで……。
「いいだろう。お前の目的が何かは相変わらず分からんが、俺がお前を見張るのには都合が良い」
「そ、そうね。そうだよ。私から離れず、見張っていた方が良いよ。うん」
——馬鹿め、いやクズめ。見張られてるのが自分の方だとは、夢にも思うまい。
ニヤリとほくそ笑んだナギは、次の瞬間シュテルンの肩に担ぎあげられていた。
「ん?」
「じゃ、早速」
「え、えええっ?」
「今日はドロドロに溶かして抱いてやるよ」
米俵のように運ばれながら、ナギはシュテルンの不穏な言葉に身震いした。
「え、えーと適当で。いや、適度で」
「黙れ」
ぼすんとベッドに落とされ、シュテルンがのし掛かってきても、もう少し足掻いてみる。それがナギだ。
「うわ。あ、あ! そ、そういえば、シュテルンには、処女にいきなり突っ込むとか、嫌がっている女を無理矢理とか、そういう趣味はないのね」
前回も今回も、セックスのときにはクズらしからぬ気遣いを見せるシュテルンを不思議に思ってナギが聞くと、シュテルンが露骨に嫌そうな顔をした。
「ああん? お前、そういうのが好みか?」
「はっ? そ、そんなわけないじゃないっ!」
「それは良かった。あんなもん、さして気持ち良くねえぞ」
「え……」
「ひと通り試してみたがな。大体、処女とか無理矢理とか、面倒くさいだろうが」
「そ、そ、ソウ、デスカ」
気が遠くなりながらも、ナギはシュテルンが殺人もいたってシンプルに行うことを思い出した。シュテルンは人を嬲ること自体を楽しむタイプではない。
「おら、もう黙ってろ。喘ぎ声だけはいくらでも許してやる」
——ああ、でも発言はやっぱりクズだ……。
無駄な抵抗のその後、ナギはシュテルンの宣言通りに抱かれ、翌日見事に声が枯れていた。今回は歩き方も不自然なガニ股だ。
幸いにもカウンター越しの兵士たちには気付かれることはなく、「風邪っぽい」と思われただけだったが、同じ厨房内にいるパムとナナには、大いに面白がられた。
「ナギ、動きがカタカタシテル」
「ロボか? ナギ、改造サレタカ?」
——厨房内、3人ともロボっぽいとか……。コントか。
「うぐぅっ……」
しゃがもうとして腰の痛みに掠れ声で呻いたナギは、今夜のことに思いを馳せて、深いため息を吐いた。
——ああ、毎晩とか、絶対無理ーっ!
ナギの心の叫びが届いたのかどうかは不明だが、その晩シュテルンは自室に戻っては来なかった。
シュテルンが言葉とは裏腹に面白そうな顔をした。嫌な予感がしながらも、ナギは考えてきた作戦通りに話を続ける。
「だから、私ここに住むから」
「ああん?」
「私の部屋、狭いのよ。ここは広いから問題ないでしょ」
『ここ』とナギが示したのは、ダダーンと40畳はあるリビング、いや、引き戸を開けて寝室が繋がっているので50畳くらいはあるであろうシュテルンの部屋だ。シュテルン1人では絶対に広すぎる。
ナギの与えられた部屋は1DKで洋室は6畳だが、本当はナギに不満などない。狭さに難癖を付けたのは、シュテルンの部屋に居座るための口実だ。
だがシュテルンの部屋をあちこち覗くうちに、浴室前にミストサウナのリモコンが付いていたり、御影石のカウンターや流しの排水口にディスポーザーが付いているキッチンがあったりして、ナギのテンションは一気に上がった。
——野菜くずなんかも、そのまま細かくして流しちゃうディスポーザー付きとか! こんなもん、高級マンションにしかないもんだと思ってたよ。メランガ、すごいっ! でもシュテルンの部屋では宝の持ち腐れすぎるっ!
「……で?」
キッチンで排水口のディスポーザーのフタを開けたり閉めたり5回は繰り返していたナギに、シュテルンが背後から呆れたような声で聞いた。
「で、って?」
「つい先日はメランガから出せと言っていたが、今度は俺の部屋に住むだと? お前、一体何を企んでる」
「た、企むなんて人聞きが悪い。あー。え、えーと? この前の……、が、良かった、から?」
——我ながら、棒読み過ぎるな、うん。
「あん? この間の夜が忘れられないとでも言うのか? 無表情で嘘を吐くな。お前、俺よりそのディスポーザーとやらに惹かれてるだろ」
シュテルンが苦い顔をするのに、ナギは素直に頷きそうになったが、かろうじて堪えた。
「ソ、ソンナコトナイヨー。で、でも、その、アレ、は、シュテルンがその気になったらで良いので、あの、ひと月に1回とか、うん、そんなもんで良いかなー。あとはその、私のことは猫のようなものだと思って、あまり構わないでもらえると」
「うれしいな、なんて」と言う話の続きは、シュテルンの睨みがあまりに剣呑だったため、声にならなかった。
——あ、あれ? うわっ? もしかして、この世界には猫がいない、とか? 確かにメランガで猫や犬は見た覚えがないかも……。で、でも豚肉や牛肉は普通にあるよね?
「その気になったら、だと? 猫だかなんだか知らんが、俺の部屋にある穴なら、俺は毎日使わせてもらう。それが嫌なら今すぐこの部屋から出ていけ」
——え? 引っかかってたの、そっち?
「い、いえー、毎日お相手しますともー。わー、う、うれしいなー」
ナギの表情は完全に無だった。心にも無いことを言葉にするのが、ナギは得意ではない。
——っていうか、猫でもなく穴、とか。もー、なんでこうクズなの。いや、いいのかクズで……。
「いいだろう。お前の目的が何かは相変わらず分からんが、俺がお前を見張るのには都合が良い」
「そ、そうね。そうだよ。私から離れず、見張っていた方が良いよ。うん」
——馬鹿め、いやクズめ。見張られてるのが自分の方だとは、夢にも思うまい。
ニヤリとほくそ笑んだナギは、次の瞬間シュテルンの肩に担ぎあげられていた。
「ん?」
「じゃ、早速」
「え、えええっ?」
「今日はドロドロに溶かして抱いてやるよ」
米俵のように運ばれながら、ナギはシュテルンの不穏な言葉に身震いした。
「え、えーと適当で。いや、適度で」
「黙れ」
ぼすんとベッドに落とされ、シュテルンがのし掛かってきても、もう少し足掻いてみる。それがナギだ。
「うわ。あ、あ! そ、そういえば、シュテルンには、処女にいきなり突っ込むとか、嫌がっている女を無理矢理とか、そういう趣味はないのね」
前回も今回も、セックスのときにはクズらしからぬ気遣いを見せるシュテルンを不思議に思ってナギが聞くと、シュテルンが露骨に嫌そうな顔をした。
「ああん? お前、そういうのが好みか?」
「はっ? そ、そんなわけないじゃないっ!」
「それは良かった。あんなもん、さして気持ち良くねえぞ」
「え……」
「ひと通り試してみたがな。大体、処女とか無理矢理とか、面倒くさいだろうが」
「そ、そ、ソウ、デスカ」
気が遠くなりながらも、ナギはシュテルンが殺人もいたってシンプルに行うことを思い出した。シュテルンは人を嬲ること自体を楽しむタイプではない。
「おら、もう黙ってろ。喘ぎ声だけはいくらでも許してやる」
——ああ、でも発言はやっぱりクズだ……。
無駄な抵抗のその後、ナギはシュテルンの宣言通りに抱かれ、翌日見事に声が枯れていた。今回は歩き方も不自然なガニ股だ。
幸いにもカウンター越しの兵士たちには気付かれることはなく、「風邪っぽい」と思われただけだったが、同じ厨房内にいるパムとナナには、大いに面白がられた。
「ナギ、動きがカタカタシテル」
「ロボか? ナギ、改造サレタカ?」
——厨房内、3人ともロボっぽいとか……。コントか。
「うぐぅっ……」
しゃがもうとして腰の痛みに掠れ声で呻いたナギは、今夜のことに思いを馳せて、深いため息を吐いた。
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