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新メニューはいかがですか
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ナギの目の前で、昨夜——いや正しくは今朝、考案されたばかりの二つの定食『がっつりスタミナランチ』と『すっきり減量ランチ』が飛ぶように売れた。
早速大量に作ってしまったパムとナナの能力の高さにも脱帽だが、そもそも食材がすべて揃っていたことが不思議だ。
『すっきり減量ランチ』は事務職の女性たちに好評で、また兵士専用食堂を利用する事務職の人間が増えるだろう。
ランチタイムが終わると、パムとナナが珍しくナギに話しかけてきた。
「ナギ、次はナニツクル?」
「『しなやかで強靭な筋肉増強ランチ』」の予定です」
「おお、ツヨそうだ」
美味しそうではなく、強そうだという感想に疑問を持つことなく、ナギは「はい」と良い返事をした。それからなぜか、パムとナナは2人揃って電池が切れたかのように黙り込んだ。
ナギは首を傾げながらも、良い機会だと思ってパムとナナに質問した。
「お二人は作りたいレシピはありませんか?」
いつもナギの問いに即答する二人が、お互いを見つめ合い、もじもじしている。
——え、何だろう? 珍しい。
「あー、遠慮なく言ってください。ね?」
遠慮などする必要は微塵もない。考えるのはナギでも、作るのはパムとナナだ。
「……が……ル、テイショク」
蚊の鳴くような声で何かを言ったパムに、ナナが同意して首を縦にブンブンと振る。
「え? すみません。よく聞こえなくて。もう一度言っていただけますか?」
「……セが、ノビル、テイショク」
「……え?」
「セガノビルテイショク!!」
ようやく聞き取れたパムの声はやはり小さかったが、そのパムをフォローして定食名を叫んだナナの声は、耳がキーンとするくらい大きなものだった。
そしてその叫びが合図だったかのように、パムとナナはスタタタッと厨房から出ていく。
「ヤスメ、ナギ。またヨルハタラケー!!」
いつもとは違う2人の行動が照れ隠しであることを察したナギは、しばらく我慢していたが次第に可笑しくなって肩を揺らして笑った。
「あは、あははははっ!」
——意外すぎる。『背が伸びる定食』って。背が低いの、気にしてたんだ。
声を上げてナギが心から笑ったのは、一体いつ以来のことだろう。それはナギ自身ですらもう思い出せないほど昔のことだ。
「はは……」
そのせいか、すぐに笑いは消えてしまった。残ったのは、ほんの少し頬が上がったままの顔で、うつむいたナギの姿。
——あー、やっぱりちょっと疲れてるな。昼寝でもしようっと。
急激にナギを襲った倦怠感は、半分は昨夜の夜更かしのせいで、残りのほとんどはシュテルンのせいだ。足りないあと少しの原因については、ナギは考えることをあっさりと放棄した。
「どうでもいい……」
ナギが口にしたのは、『面倒くさい』と同じく、考えることを放棄する言葉だ。苦しすぎる感情から逃れて前を向くためなら、ナギはそれらの言葉を使うことに躊躇しなかった。
今もナギを苛む絶望の底の記憶は、不意に訪れては、微かな油断であっという間にナギを抜け殻にしてしまう。だがナギはもう、そこで立ち止まったりはしない。
「あ、カニ。カニ食べたい」
抜け殻から連想したのか、ナギは唐突に明るい声を出した。
苦しみの中にいる人が、おおよそ言わないであろうことをあえて言葉にしたナギは、すぅっと身体が軽くなるのを感じて、両腕を上げて伸びをする。リラックスしたナギの口から、欠伸が漏れた。
「うん、その前に寝よう」
何よりも生きることにこだわるナギは、気分転換に長けている。過言ではなく、ナギはそうでなければ生きて来られなかったのだ。
背筋を伸ばして前を向いたナギは、質の良い仮眠が取れそうなベッドを目的に、シュテルンの部屋へと向かった。シュテルンは日中には部屋にいないだろうと予測してのことだ。
——ま、居ても寝るけど。
欠伸をしながらたどり着いたシュテルンの部屋は、ナギの予想通りもぬけのカラだった。
ナギは会ったことはないが掃除担当がいるらしく、シュテルンの部屋は空気まで綺麗になっている。脇目も振らずにベッドに向かったナギは、バフンとベッドに倒れ込んだ。
「あー、最高ー」
掃除の行き届いた部屋のベッドは、シュテルンの存在をこれっぽっちも感じさせない。それは素晴らしいことのようで、どこか寂しいことでもあるとナギは思った。
「一人、か……」
早速大量に作ってしまったパムとナナの能力の高さにも脱帽だが、そもそも食材がすべて揃っていたことが不思議だ。
『すっきり減量ランチ』は事務職の女性たちに好評で、また兵士専用食堂を利用する事務職の人間が増えるだろう。
ランチタイムが終わると、パムとナナが珍しくナギに話しかけてきた。
「ナギ、次はナニツクル?」
「『しなやかで強靭な筋肉増強ランチ』」の予定です」
「おお、ツヨそうだ」
美味しそうではなく、強そうだという感想に疑問を持つことなく、ナギは「はい」と良い返事をした。それからなぜか、パムとナナは2人揃って電池が切れたかのように黙り込んだ。
ナギは首を傾げながらも、良い機会だと思ってパムとナナに質問した。
「お二人は作りたいレシピはありませんか?」
いつもナギの問いに即答する二人が、お互いを見つめ合い、もじもじしている。
——え、何だろう? 珍しい。
「あー、遠慮なく言ってください。ね?」
遠慮などする必要は微塵もない。考えるのはナギでも、作るのはパムとナナだ。
「……が……ル、テイショク」
蚊の鳴くような声で何かを言ったパムに、ナナが同意して首を縦にブンブンと振る。
「え? すみません。よく聞こえなくて。もう一度言っていただけますか?」
「……セが、ノビル、テイショク」
「……え?」
「セガノビルテイショク!!」
ようやく聞き取れたパムの声はやはり小さかったが、そのパムをフォローして定食名を叫んだナナの声は、耳がキーンとするくらい大きなものだった。
そしてその叫びが合図だったかのように、パムとナナはスタタタッと厨房から出ていく。
「ヤスメ、ナギ。またヨルハタラケー!!」
いつもとは違う2人の行動が照れ隠しであることを察したナギは、しばらく我慢していたが次第に可笑しくなって肩を揺らして笑った。
「あは、あははははっ!」
——意外すぎる。『背が伸びる定食』って。背が低いの、気にしてたんだ。
声を上げてナギが心から笑ったのは、一体いつ以来のことだろう。それはナギ自身ですらもう思い出せないほど昔のことだ。
「はは……」
そのせいか、すぐに笑いは消えてしまった。残ったのは、ほんの少し頬が上がったままの顔で、うつむいたナギの姿。
——あー、やっぱりちょっと疲れてるな。昼寝でもしようっと。
急激にナギを襲った倦怠感は、半分は昨夜の夜更かしのせいで、残りのほとんどはシュテルンのせいだ。足りないあと少しの原因については、ナギは考えることをあっさりと放棄した。
「どうでもいい……」
ナギが口にしたのは、『面倒くさい』と同じく、考えることを放棄する言葉だ。苦しすぎる感情から逃れて前を向くためなら、ナギはそれらの言葉を使うことに躊躇しなかった。
今もナギを苛む絶望の底の記憶は、不意に訪れては、微かな油断であっという間にナギを抜け殻にしてしまう。だがナギはもう、そこで立ち止まったりはしない。
「あ、カニ。カニ食べたい」
抜け殻から連想したのか、ナギは唐突に明るい声を出した。
苦しみの中にいる人が、おおよそ言わないであろうことをあえて言葉にしたナギは、すぅっと身体が軽くなるのを感じて、両腕を上げて伸びをする。リラックスしたナギの口から、欠伸が漏れた。
「うん、その前に寝よう」
何よりも生きることにこだわるナギは、気分転換に長けている。過言ではなく、ナギはそうでなければ生きて来られなかったのだ。
背筋を伸ばして前を向いたナギは、質の良い仮眠が取れそうなベッドを目的に、シュテルンの部屋へと向かった。シュテルンは日中には部屋にいないだろうと予測してのことだ。
——ま、居ても寝るけど。
欠伸をしながらたどり着いたシュテルンの部屋は、ナギの予想通りもぬけのカラだった。
ナギは会ったことはないが掃除担当がいるらしく、シュテルンの部屋は空気まで綺麗になっている。脇目も振らずにベッドに向かったナギは、バフンとベッドに倒れ込んだ。
「あー、最高ー」
掃除の行き届いた部屋のベッドは、シュテルンの存在をこれっぽっちも感じさせない。それは素晴らしいことのようで、どこか寂しいことでもあるとナギは思った。
「一人、か……」
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