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番外編2 メランガのとある恋愛事情(番外編1の続き)
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「いつまでトイレに篭ってんのよっ!」
ドガンッという重い破壊音で穴を開けられたのは、アリギノ国の王宮にあるトイレのドアだ。
ユトの肘打ちでぽっかりと開いた穴から、呑気な声が聞こえる。
「あれ? もう終わったんですか? アリギノ国王とのセックス」
「シてないわよっ!」
「そうなんですか? アリギノ国王、ずいぶん早いなーと思ったんですけど」
用は終えていたのか、慌てることなくトイレから出て来た細身の兵士は、にひゃりと緊張感のない笑みをユトに向けた。
人畜無害そうな、一見めちゃくちゃ弱そうなこの男が、メランガでシュテルンに次いで2番目に強いなど、一体誰が信じるだろう。
「それじゃ、帰りますか」
「あんたを待ってたのよ、この痔主がっ!」
メランガで実質3番目に強いと言われるユトは、このあまりにも弱そうな見た目の男が嫌いだ。
ユトは考えつく中で最大の悪口を男に向けて放ったが、男はにひゃりと嬉しそうに笑った。
「痔はほぼ治っていますよ。食堂のナギちゃんのお陰で」
「は? そうなの?」
「ええ。ナギちゃん、かわいいですよねー。ぼく、ナギちゃんの前だとドキドキし過ぎて挙動不審なんですけど、嫌われてないといいな」
「あんた、そんな趣味あったんだ」
ユトが引き気味に言った言葉に、細身の兵士は首を傾げた。
「特殊な趣味じゃないでしょう?」
「いやいや、胸も発育前のあんな幼い子に、興味持ち過ぎでしょう」
「は? 幼い?」
「このロリコンッ!」
ユトが罵倒ついでに男の頭をバシッと叩くと、男はもう一段階首を右に傾けた。
「あれれ?」
「何が『あれれ』よ。あたしの誘いに乗らないと思ったら、あんたそういう趣味だったのね」
「いいえ。ぼくがあなたの誘いに乗らないのは、……ですよ」
「は? 何? よく聞こえなかった」
ユトが言うと、男はまたもにひゃりと笑った。
「それより、早く帰りましょうよ。ぼくは早くナギちゃんのご飯が食べたい」
「ナギちゃんの、じゃなくて、食堂のご飯でしょ」
「えー? いいじゃないですか。そのくらいの権利は主張しても」
「キモいから。この痔主のロリコンがっ!」
ユトが俊速で繰り出した二段蹴りを、男は二発とも軽くかわして、ユトの前を歩き出した。
「それにナギちゃんは、そんな子供じゃないと思うけどな」という男の呟きは、男の背中を追うユトの耳には届かなかった。
苛々と男の後をついてくるユトをちらりと肩越しに振り返って、男の口元が微かに緩んだ。普段見せているヘラヘラした笑いではないその顔を、ユトは知らない。
——アリギノ国王は、好みではなかったということか。
余計な手間が一人分減ったことを、男は微笑ったのだ。
この男は、ユトが関係を持った男達に、密やかに新しい女をあてがっている。
地味で影に徹したその活動は、感謝されることはあっても非難されることはない。男が取り持ったカップルは、遊びのセックスなど入る余地がないほど、お互いに満足しているからだ。
被害を受けているのは、遊び相手が気がつくと減っているユトだけだろう。
そんな男が唯一手こずっているのが、シュテルンだった。
手軽に遊べる女にしか興味のないシュテルンには、男の策略はまるで効果がなかった。だがそれも、男の与り知らぬところで、近頃何か変化があったようだ。
もしシュテルンが遊びを止めるようなことがあれば、男にとっては願ったりかなったりのはずだが、それはそれで男には面白くなかった。
——ぼくが受けた苛々は、必ず2倍にして返しますからね。
腹黒な笑みを浮かべた男の背を追っていたユトが、男の少し前に出た。
「あんたが後ろを歩きなさいよっ。あたしの前を歩くなんて、生意気過ぎるでしょ」
かわいらしい悪態を吐くユトに、男は目を細めた。ユトを追い抜くことは簡単だが、男はユトの望みどおりに、少し後ろをついていく。
にひゃりと笑うと、そのよどんだ心とは裏腹の軽い声が出た。
「えー、じゃあユトさんのお尻は、ぼくが守りますね。まあ、ぼくのお尻はナギちゃんが守ってくれるんですけど」
「ば、バカじゃないのっ!? あたし、あんたのそういうとこ、大っ嫌いっ!」
「えー、ぼくは結構好きですよ、ユトさんのことー」
「うるさい、黙れ。この痔主がっ!」
メランガに徒歩で戻る道中、タフな二人のそんなやりとりは、飽きることなく朝までずっと続いていた。
ドガンッという重い破壊音で穴を開けられたのは、アリギノ国の王宮にあるトイレのドアだ。
ユトの肘打ちでぽっかりと開いた穴から、呑気な声が聞こえる。
「あれ? もう終わったんですか? アリギノ国王とのセックス」
「シてないわよっ!」
「そうなんですか? アリギノ国王、ずいぶん早いなーと思ったんですけど」
用は終えていたのか、慌てることなくトイレから出て来た細身の兵士は、にひゃりと緊張感のない笑みをユトに向けた。
人畜無害そうな、一見めちゃくちゃ弱そうなこの男が、メランガでシュテルンに次いで2番目に強いなど、一体誰が信じるだろう。
「それじゃ、帰りますか」
「あんたを待ってたのよ、この痔主がっ!」
メランガで実質3番目に強いと言われるユトは、このあまりにも弱そうな見た目の男が嫌いだ。
ユトは考えつく中で最大の悪口を男に向けて放ったが、男はにひゃりと嬉しそうに笑った。
「痔はほぼ治っていますよ。食堂のナギちゃんのお陰で」
「は? そうなの?」
「ええ。ナギちゃん、かわいいですよねー。ぼく、ナギちゃんの前だとドキドキし過ぎて挙動不審なんですけど、嫌われてないといいな」
「あんた、そんな趣味あったんだ」
ユトが引き気味に言った言葉に、細身の兵士は首を傾げた。
「特殊な趣味じゃないでしょう?」
「いやいや、胸も発育前のあんな幼い子に、興味持ち過ぎでしょう」
「は? 幼い?」
「このロリコンッ!」
ユトが罵倒ついでに男の頭をバシッと叩くと、男はもう一段階首を右に傾けた。
「あれれ?」
「何が『あれれ』よ。あたしの誘いに乗らないと思ったら、あんたそういう趣味だったのね」
「いいえ。ぼくがあなたの誘いに乗らないのは、……ですよ」
「は? 何? よく聞こえなかった」
ユトが言うと、男はまたもにひゃりと笑った。
「それより、早く帰りましょうよ。ぼくは早くナギちゃんのご飯が食べたい」
「ナギちゃんの、じゃなくて、食堂のご飯でしょ」
「えー? いいじゃないですか。そのくらいの権利は主張しても」
「キモいから。この痔主のロリコンがっ!」
ユトが俊速で繰り出した二段蹴りを、男は二発とも軽くかわして、ユトの前を歩き出した。
「それにナギちゃんは、そんな子供じゃないと思うけどな」という男の呟きは、男の背中を追うユトの耳には届かなかった。
苛々と男の後をついてくるユトをちらりと肩越しに振り返って、男の口元が微かに緩んだ。普段見せているヘラヘラした笑いではないその顔を、ユトは知らない。
——アリギノ国王は、好みではなかったということか。
余計な手間が一人分減ったことを、男は微笑ったのだ。
この男は、ユトが関係を持った男達に、密やかに新しい女をあてがっている。
地味で影に徹したその活動は、感謝されることはあっても非難されることはない。男が取り持ったカップルは、遊びのセックスなど入る余地がないほど、お互いに満足しているからだ。
被害を受けているのは、遊び相手が気がつくと減っているユトだけだろう。
そんな男が唯一手こずっているのが、シュテルンだった。
手軽に遊べる女にしか興味のないシュテルンには、男の策略はまるで効果がなかった。だがそれも、男の与り知らぬところで、近頃何か変化があったようだ。
もしシュテルンが遊びを止めるようなことがあれば、男にとっては願ったりかなったりのはずだが、それはそれで男には面白くなかった。
——ぼくが受けた苛々は、必ず2倍にして返しますからね。
腹黒な笑みを浮かべた男の背を追っていたユトが、男の少し前に出た。
「あんたが後ろを歩きなさいよっ。あたしの前を歩くなんて、生意気過ぎるでしょ」
かわいらしい悪態を吐くユトに、男は目を細めた。ユトを追い抜くことは簡単だが、男はユトの望みどおりに、少し後ろをついていく。
にひゃりと笑うと、そのよどんだ心とは裏腹の軽い声が出た。
「えー、じゃあユトさんのお尻は、ぼくが守りますね。まあ、ぼくのお尻はナギちゃんが守ってくれるんですけど」
「ば、バカじゃないのっ!? あたし、あんたのそういうとこ、大っ嫌いっ!」
「えー、ぼくは結構好きですよ、ユトさんのことー」
「うるさい、黙れ。この痔主がっ!」
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