うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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村の居候

颯の魔石

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 それから数日はいつものように過ごしていた。
 学び舎に行ったり、塀の魔道具に魔力を入れたり、ジロウの所に行ったり、ネグリジェを完成させてTシャツパジャマを卒業したり、マサ達の靴作りに着手したり、夜は颯と会ったり。

 そうそう、目覚ましの魔道具はかなり評判が良いらしい。
 教会や鉄道がある駅に行かなくても時間を把握できるようになったという事で、ジロウの知り合いの職人さんが大忙しだそうだ。
 商売をしている人は店に呼び出しの魔道具と目覚まし時計をセットで設置しているみたい。

 ジロウが作ったマッサージ器は、何度か試作をして私が絶賛した物を商品化してくれた。
 回転部品のカバーになる布は、マホがまとめて縫ってくれる事になった。
 何故ここでマホが出てくるかというと、ジロウとマホがお付き合いしているというのを最近知ったからだった。
 まぁぁぁ、そんな事になっていたの?と私の中のおばさんが目を覚まし、微笑ましく二人を見守る事態になった。
 村の中で安定した稼ぎのあるジロウは優良物件だと思うよ。うんうん。

 マッサージ器が出来たことで、私のスケジュールを再び見直した。
 呼び出しの魔道具付与を一日に五組。村で欲しい人用に一つ、魔道具店に四つ。
 マッサージ器付与を一日に三つ。村に欲しい人がいた時は一つ、欲しい人がいなければ三つ丸ごと魔道具店に。
 目覚まし時計の付与は五つ。いきなり増やすより、レアリティを付けつつ、長く作るんですって。
 浄化の魔道具は気が向いた時に一つ二つ作る形になった。
 全部こなすと、私の稼ぎは銀貨1枚と小銀貨2枚になる。

 このところ買っておいた材料で作成する事が多いため、着々とお金が貯まっている。
 免許が取れる年齢になったら浮動車が欲しい。
 いくらするのか分からないけれど、金貨が何十枚も必要なのはわかる。
 しっかり貯めなくては。

 マッサージ器の登録関係についても私は辞退した。
 その代わり完成品を一台もらって家に置いたら、マサよりもキヨが虜になっていた。
 今までで一番喜んでもらえた品かもしれない。
「しのが嫁に行く時に祝いとしてもう一台贈ろう。」
 ジロウはそう言うけれど、私ってこの世界で結婚するんだろうか?
 前の世界で縁が無かったせいか、いまいちピンとこない。
 だって、猪だよ?

 結婚まで長いから、売れ行きが落ち着いたら下さいと言ったら笑われた。
 うん、笑って流してくれるくらいで丁度いい。

 夜になって山の上に行く前に自分の鑑定をした。

魔法:生活魔法、回復魔法、治癒魔法、浄化魔法、結界魔法、鑑定魔法、検索・閲覧魔法、転写魔法、付与魔法、手芸魔法、転移魔法、インベントリ

 結界きたーーーー!!
 思わずテンションが上がってしまった。
 これでちょっと無謀な事も試せる。
 危険な事は試すつもりはないよ?
 ほら、一人旅とか、ちょっと山を歩くとか、結界があれば安心でしょう?
 今日からは叔母さんを見習って、結界の種類を練習しよう。
 何なら結界の魔道具をこっそりジロウに作ってもらおう。
 嬉しくなりながら山の上に転移した。

「よっ!来たな。」
 山の上では颯が待ち構えていた。
 まだ魔力が増えている実感はないそうだ。
 たった数日だものね。

「何か良い事でもあったのか?」
 私の様子を見て聞かれたので、結界魔法を覚えたと伝える。
「おー、塀の魔道具に魔力を入れていたら覚えるかもしれないって聞いたあれか。実際どれくらい入れていたんだ?」
「一日に三カ所~四か所くらいに毎日。ひと月弱っていう所かな?」
 この世界に来てまだひと月経過していない事を考えると、意外に早く覚えられたようで嬉しい。
 聞いた颯はスンとする。
「一つの魔道具で力尽きている俺には遠いな・・・。」
「颯さんの場合は、魔力が増えたら出来る事が沢山あるじゃないですか!」
 励ましも込めて言う。
「そうだな、魔力が増えたらでっかい建築が出来るかもしれないよな。」
 颯に聞いたところ、以前は建築会社に勤務していたのだそう。
 その影響か建築魔法があったので、将来に期待だ。

「今日は渡したいものがある。」
 徐に颯が言う。
「渡したい物?何ですか?」
 これだ。と言ってインベントリから出したのは大量の魔石。
「自分で飯を食う時には魔石を食べないように気を付けていて、キラキラしているから木のうろの中に隠していたんだ。それと山の中に落ちていたのを拾った。」
 数えながら拾ったら、百個ほどあった。中には手の平くらいの大きさの物も数個あった。
「これ、ざっくりした計算だと、銀貨四枚以上になるんじゃないかなー?」
「おっ!そんなにもらえるのか?」
「確実じゃないけど、一旦預かっても良いですか?」
「そのために持ってきたから宜しく。」

 大きさを分類し、数を数えてお互い確認した上で石盤に書いて計算したものを、生活魔法で切った木の面に書き込む。
 手の平くらいの大きな魔石が三個、五百円くらいの魔石が二十二個、一円玉くらいの魔石が七十五個。
 書き込んだ木の板を二枚作って、一枚を颯に渡す。

「これ、俺が持つのか?」
「ええ、お金が絡んでいるものだからこそ、お互いの認識に齟齬が有ったらいけないでしょう?信用問題になってしまうので、証書代わりに保管していただけたら・・・。」
「小さいのにしっかりしてるな。あー元の年齢が違ってたんだったか。」
「そう言う事です。」
 にっこりと笑ってインベントリに魔石と数を書きつけた木板を仕舞う。

 実際問題、颯にとっての私も、私にとっての颯もどんな人物なのか、どんな立ち位置なのかはっきりしていない。
 現時点では『異世界で出会って情報を共有できる人材』という以外の何ものでもないわけで、颯が人間に戻る事が出来たらどんな本性が出てくるか謎だ。
 お互いにとって『良い人』であればまだいいけれど、そうとは限らないと心構えをしている。
 浄化の魔石のお陰で凶暴性や残虐性は抜けているんだろうけれど・・・。
 
 魔石はジロウに買ってもらうべきか、登録所に売りに行くべきか。
 ジロウの知り合いに買ってもらえるかもしれないし、相談してみよう。


 翌日、ジロウの所へ行って付与をした後、魔石の販売について相談する。
「こんなに大量にどうしたんだ?」
 ですよねー。
 子供がこんなに害獣駆除するわけないですものね。
 ここは正直に言おう。
「知り合いが集めていたものをそろそろ売りたいっていうので、預かったんです。」
 うん、嘘じゃない。
「買いに行く面倒が減るから、俺の所で全部買い取ってもいいぞ?」
「本当ですか?」
「ちょっと待て、計算する。」

 大きな魔石は一つで銀貨一枚と小銀貨五枚、三つで銀貨四枚と小銀貨五枚、五百円玉くらいの魔石は一つ銅貨八枚換算で、銀貨一枚と小銀貨七枚と銅貨六枚、一円玉くらいの小さい魔石は五十個で銀貨二枚で購入する事が多いので、今回も同じ価格で銀貨三枚。
トータルで銀貨九枚と小銀貨二枚と銅貨六枚になった。

 ジロウに木板に内訳を書いてもらい、代金を預かる。
「しっかり渡しますね。買っていただいてありがとうございます。」
 思った以上に颯の軍資金が得られたので、自分のお金じゃないけれどほくほくする。
「この頃結構な勢いで魔道具を作っているからな。こっちも懐が暖かいし、助かるよ。もしまだあるなら買うと伝えてくれ。」
 山の中で拾ってはインベントリに入れられるようになったようだから、きっとまた持ち込むかもしれない。
 放置して他の魔獣が食べて巨大化するより、掃除にもなって良いかもしれないなぁ。

 夜になって山の上に行く。
「颯さん、こんばんは。」
「こんばんは、しの。」
「無事に魔石を買ってもらえましたよ。」
「おお、もう買ってもらえたのか!」
 フクロウの顔なので表情があまり変わらないけれど、嬉しそうに話す。

 ジロウに書いてもらった内訳の板を渡し、預かり証を返してもらって代金を渡す。
 書かれていた数字と実際の代金に間違いが無いか確認して収納してもらった。
 木板に転写していた文字は洗浄で消してインベントリに入れる。また使うかもしれないからね。
「夕べ聞いていた金額の倍以上の値段で驚いたよ。」
 予想以上の金額に浮かれる颯だった。

「初期費用って結構掛かるから、お金があるに越したことがないですしね。」
「君の場合はどれくらいかかった?」
「下着を縫うための布を買ったり、鞄や靴、靴下のための材料を揃えて、服も作ろうと思っていて、現時点で出来上がっていないので・・・まだ出費が続きます。」
「俺達がいた環境を基準にしたら、欲しいものが簡単に手に入らないのが難点だな。ふんどしの締め方なんて知らんぞ?パンツをもらって良かったよ。あ、パンツ代を渡してなかったな、いくらだ?」
「ああ、それは一枚だけですし、異世界記念にプレゼントします。それ以外は人間になったらちゃんと請求しますよ。」
「ははっ、ありがたくもらうよ。」
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