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理性と感情の狭間
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『久美子へ』と書かれた、何かが包まれた紙をインベントリから取り出す。
今日も魔獣が捕獲された事、毒蛇の魔石を貰った事、メラニーからの指摘と助言、それから提案。魔石に付与してほしい魔法の事。
メラニーの言葉を読んだ時には驚きすぎて呼吸が止まった。直接聞いた主人は相当ショックだった事だろう。
私達の状況を知って、淡々と提案してくれたメラニーさんの優しさを感じる。
まだ大丈夫、彼女は生きているのだから、今から悲しんじゃいけない。出来る事をしようと気持ちを持ち直して魔石を手に取る。
魔獣から取れたて(?)の魔石ってそのまま使えるのだろうか?疑問に思ったところで鑑定魔法を思い出し、使ってみる。
『ヴァイパーの魔石:魔力(抜けかかっている)。魔石の魔力効率--』
抜けかかっている魔力は蛇の魔力かな?これを綺麗にしたら付与が出来る?綺麗にする方法は・・・あ、浄化魔法、これを使ってみよう。浄化!
『ヴァイパーの魔石:魔力無し。魔石の魔力効率--』
うんうん、変化が出たね。じゃあこれに回復魔法を付与。
指先からじんわりと熱が抜けた感じがした後、鑑定する。
『回復の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
魔力を補充するように流してみるけれど、魔力が吸われた感じがしない。
魔力効率の部分が『--』になっているからなのかな。
とりあえずここまでにして、何とか1つ付与は出来た。魔力が少なくて、流石に続きは出来そうにないから残りは明日の朝に作ることにしよう。
翌朝、昨日と同じように洗浄と着替えを済ませ、ステータスを確認。
魔力:419/420になっていた。
人が来ないうちにもう一つの魔石を仕上げることにする。鑑定すると昨日の魔石と同じ結果だった。
『ヴァイパーの魔石:魔力(抜けかかっている)。魔石の魔力効率--』
浄化した後に結界魔法を付与する。6畳くらいの広さで、高さも2mくらいあって、魔法も攻撃も毒も通らなくて、雨や雪、強風など天候の影響を受けなくて、空気が循環して、ステルス機能と防音機能が付いていて、野生動物や虫も入ってこない物と念じつつ指先を当てると、昨日より熱い感覚がした。
『結界の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
結界の文字をさらに詳しく見ると、しっかり希望した機能がついている。
続けて魔力を補充しようとしても、昨日と同じくやはり出来ない。
自分ステータスを確認すると、魔力が減っていたけれど、まだ大丈夫そう。
魔力は355/420
取りあえず出来上がった2つにメモを貼り付けてインベントリに仕舞うと、サラが部屋に来た。
朝食の後は昨日と同じように庭に行き、ジャンと庭作業をする。
「なんだ?昨日より元気が無いな?疲れたか?」
昨夜のメラニーの発言を思い出し、考えていると時々手が止まっていた。
「そうですね。疲れが出たのかもしれません」
初日の回復魔法のお陰で体調はすこぶる良いのだけれど、気持ちが落ち込んでいたので、疲れを理由に早めに切り上げた。
「折角お誘いいただいたのに、今日はあまり出来なくてすみません」
「気にすんな。俺の仕事だからよ」
ジャンは笑顔で見送ってくれた。
部屋に戻って洗浄し、ソファに腰かける。
暫く1人にしてほしいと伝え、サラの足音が遠ざかってから鍵を閉める。
大きな魔石を取り出し、浄化して鑑定する。
『ボアの魔石:魔力無し。魔石の魔力効率--』
こちらの魔石も結界の魔法を付与する。
夫のリクエストによると、塀のための結界魔法を付与してほしいようだ。
魔法も攻撃も通らず、壁を強化維持し、魔石に魔力を入れると個人の魔力が増え、結界の魔法を会得できる可能性があるように。念じつつ指先を当てると、今朝より熱さが増した。かなりの量の魔力が消費されたようだ。
『結界の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
うん。ごっそり魔力が使われたけれど、付与は出来たみたい。
浄化と魔石の属性指定、付与魔法は出来たけれど、魔力効率の変化や魔力の補充は出来なかったと書いてインベントリに戻した。
夫から託された魔石の付与が終わって一段落したけれど、メラニーの発言が頭から離れない。
ある程度の情報を得て、魔法をそれなりに使いこなす事が出来るようになったら、ここを抜け出す事は出来るだろう。
けれども、その行動は逃げ出した人間が捜索される事態に繋がる。
運よく逃れ続けても、夫と合流するまでの間にも追手を警戒し、合流してからも逃げ続ける事になったら、心身にかかる負荷は相当なものだ。
私が穏便にここから出してもらう方法は、使いどころのない人間として放り出されることなのだろうけれど、現時点では教会側の方向性が分からない。
一般人なので出してくださいと言って、あっさり出してくれるものだろうか?
・・・メラニーの提案は『替え玉』にしろという事だ。
遺体があれば、私が居なくなっても、私が死んだのだと思われる。
「あんな風に言われると、なんだか、高齢者施設の空きを待つような気分で複雑だなぁ」
ここからスムーズに出たい、メラニーの尊厳を損なうようで嫌だ。
そんな気持ちが行ったり来たりしている。
幸いな事にまだ彼女は生きている。だったら少しでも長く、諦めずに精一杯生き抜く事に集中してもらう。
私も夫も今出来る事をコツコツ実行して、後々の準備をする。うん、そうしよう。
少しだけ、心の方向性がついた。
サラが昼食を持ってきてくれたけれど、食べる気にならないので、インベントリから保存袋を取り出し、その中に料理を入れて、夫に『食べてみて』と付箋に書いたメモを残す。
自分用にきゅうりの浅漬けを取り出し、ポリポリ齧り、昼食の器を洗浄する。
「洗浄の魔法を使ってみたら出来るようになりました」
片づけに来たサラに伝える。
午後は助祭との面談も無いようなので、他の本が読みたいから図書室のような場所に行きたいと言ったが、許可が無いので案内できない。と断られた。
礼拝室のような、お祈りする場所を見学したいと言っても、他の参拝者がいるので今は難しいと案内を拒否される。
では、もう一度庭に行ってジャンと話がしたいと言えば、それは許可された。
庭に行くとジャンが庭木の害虫駆除をしていたので、声を掛ける。
「ジャンさん、こんにちは。午前中はすみませんでした」
「こんにちは。こっちは大丈夫だ。具合はもういいのか?」
「お陰様で少し落ち着きました。害虫駆除ですか?一緒に取っても良いでしょうか?」
2人で葉の陰や奥まった枝を1つ1つ確認しながら、火ばさみのようなものでバケツの中に害虫を入れていく。
ある程度溜まったところで乾燥した小枝や葉と一緒に燃やすらしい。
「生活魔法を試したいので、私が火を点けても良いですか?」
ジャンに聞くと快諾してくれたので、害虫を枯葉の上に落とし、虫がはみ出て行かないような大きさで火を点けた。
「豪快に火を点けたなぁー」
驚いたように言うので、本当はもっと小さい火を点けるのだったか?と焦る。
燃える様子を見ながら生活魔法で虫取りの方法について聞く。
「生活魔法で虫取り?俺は知らないなぁ。数が数だから手作業で終わらせているが・・・」
そうか、魔力には限りがあるから数の多い虫に使うには不向きなのね。
アブラムシのように小さくて沢山いる場合は、粘着テープに張り付けて、ペロンと取ると気持ちいいのだけれど。
ん?魔動車が出来ているという事は、自動車の製造過程でテープって使われている部分があるんじゃなかったっけ?じゃあ、この世界でももしかしたら粘着テープがあったりする?
「ジャンさん、ちょっとお聞きしたいのですが、粘着テープってあったりしますか?」
「粘着テープ?聞いたことが無いなぁ」
虫の話からテープの話に切り替わって、少々戸惑いつつも返事をしてくれる。
「粘着した面に張り付けて取ったら、小さな虫は逃がしにくくて良いかな?と思っただけなので」
気にしないでくださいと言葉を続けようとして、グルテンを思い出す。
グルテンを作って小枝の先にくっつけたら、小さい虫が張り付いてくれない物だろうか?
食材を使うからもったいないかな?他に代替品があったりしないかな?そう思いながら、会話の流れと思い付きをジャンに話す。
「なるほどなー、植物にびっしり張り付いているからな」
感心しているところ申し訳ないが、もう一つ思いついた。
「風の魔法で吹き付けるのではなく、吸い込むものってありますか?」
また話が変わったなと言う顔をしながら、うーんと唸るジャン。
「先が細めの管を付けて、風の魔法で虫を吸い取って容器に格納するような魔道具があったら、もっと簡単に駆除できそうだなと思って」
それを聞いてジャンは目を見開く。
「そりゃいいな!手間が少なくて今までよりもしっかり駆除できそうだ」
現時点でそのような魔道具はないとの事だったけれど、魔道具師が開発できないか問い合わせてみると大乗り気のジャンだった。
ちなみにサラは炎を前に虫の話で盛り上がる私達に引いていた。
庭作業の後、部屋に案内されるのかと思ったら、先を歩くサラが礼拝室側に向かって行く。
「今の時間でしたら案内が可能です」
汚れたままでは失礼になるかと思い、少し立ち止まってもらって洗浄をしてから歩き出す。
礼拝室に到着し、信者ではないけれどお祈りの作法を教えてもらう。
両手共に人差し指と親指で輪っかを作るような形にし、知恵の輪のように組み合わせ、残った指は軽く握るのだそうだ。
なんだか薔薇のような形になるなと思いながら、手を組んで頭を下げる。
こちらの神様、初めまして。日本からお邪魔してます。心の中で簡単に挨拶をして頭を上げ、神像を見るけれどやっぱり知らない神様だ。
サラが歩き出したので、後ろをついて部屋に戻る。
部屋で夕食を食べ、片づけてもらったので1人になり、湯浴みをして寝る支度を済ませる。
残っている魔力で、転移魔法の練習をする。
まずは何もないところで右から左への短距離移動。
鑑定魔法と変わらないくらいの魔力が消費されて、無事に出来た。
次に衝立の向こうに移動してみる。これも無事に出来た。
部屋の端から端への移動も問題ない。
あとは・・・部屋の外への移動だけれど、ステルス結界を張った状態で庭に移動してみた。部屋の中を移動する時よりも多くの魔力を使い、無事に出来た。
誰かが近くにいたら危険なので、すぐに部屋に戻る。
今日の締めくくりに、体調不良で身動きできなくなった時が怖いので、自分に治癒魔法をかけてみたら、なんだか胸の辺りが楽になった事にドキッとする。
気が付いていなかったけれど、何か病気になっていた?具合が悪くなってからの対処にならなくてほっとした。
今日も魔獣が捕獲された事、毒蛇の魔石を貰った事、メラニーからの指摘と助言、それから提案。魔石に付与してほしい魔法の事。
メラニーの言葉を読んだ時には驚きすぎて呼吸が止まった。直接聞いた主人は相当ショックだった事だろう。
私達の状況を知って、淡々と提案してくれたメラニーさんの優しさを感じる。
まだ大丈夫、彼女は生きているのだから、今から悲しんじゃいけない。出来る事をしようと気持ちを持ち直して魔石を手に取る。
魔獣から取れたて(?)の魔石ってそのまま使えるのだろうか?疑問に思ったところで鑑定魔法を思い出し、使ってみる。
『ヴァイパーの魔石:魔力(抜けかかっている)。魔石の魔力効率--』
抜けかかっている魔力は蛇の魔力かな?これを綺麗にしたら付与が出来る?綺麗にする方法は・・・あ、浄化魔法、これを使ってみよう。浄化!
『ヴァイパーの魔石:魔力無し。魔石の魔力効率--』
うんうん、変化が出たね。じゃあこれに回復魔法を付与。
指先からじんわりと熱が抜けた感じがした後、鑑定する。
『回復の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
魔力を補充するように流してみるけれど、魔力が吸われた感じがしない。
魔力効率の部分が『--』になっているからなのかな。
とりあえずここまでにして、何とか1つ付与は出来た。魔力が少なくて、流石に続きは出来そうにないから残りは明日の朝に作ることにしよう。
翌朝、昨日と同じように洗浄と着替えを済ませ、ステータスを確認。
魔力:419/420になっていた。
人が来ないうちにもう一つの魔石を仕上げることにする。鑑定すると昨日の魔石と同じ結果だった。
『ヴァイパーの魔石:魔力(抜けかかっている)。魔石の魔力効率--』
浄化した後に結界魔法を付与する。6畳くらいの広さで、高さも2mくらいあって、魔法も攻撃も毒も通らなくて、雨や雪、強風など天候の影響を受けなくて、空気が循環して、ステルス機能と防音機能が付いていて、野生動物や虫も入ってこない物と念じつつ指先を当てると、昨日より熱い感覚がした。
『結界の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
結界の文字をさらに詳しく見ると、しっかり希望した機能がついている。
続けて魔力を補充しようとしても、昨日と同じくやはり出来ない。
自分ステータスを確認すると、魔力が減っていたけれど、まだ大丈夫そう。
魔力は355/420
取りあえず出来上がった2つにメモを貼り付けてインベントリに仕舞うと、サラが部屋に来た。
朝食の後は昨日と同じように庭に行き、ジャンと庭作業をする。
「なんだ?昨日より元気が無いな?疲れたか?」
昨夜のメラニーの発言を思い出し、考えていると時々手が止まっていた。
「そうですね。疲れが出たのかもしれません」
初日の回復魔法のお陰で体調はすこぶる良いのだけれど、気持ちが落ち込んでいたので、疲れを理由に早めに切り上げた。
「折角お誘いいただいたのに、今日はあまり出来なくてすみません」
「気にすんな。俺の仕事だからよ」
ジャンは笑顔で見送ってくれた。
部屋に戻って洗浄し、ソファに腰かける。
暫く1人にしてほしいと伝え、サラの足音が遠ざかってから鍵を閉める。
大きな魔石を取り出し、浄化して鑑定する。
『ボアの魔石:魔力無し。魔石の魔力効率--』
こちらの魔石も結界の魔法を付与する。
夫のリクエストによると、塀のための結界魔法を付与してほしいようだ。
魔法も攻撃も通らず、壁を強化維持し、魔石に魔力を入れると個人の魔力が増え、結界の魔法を会得できる可能性があるように。念じつつ指先を当てると、今朝より熱さが増した。かなりの量の魔力が消費されたようだ。
『結界の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』
うん。ごっそり魔力が使われたけれど、付与は出来たみたい。
浄化と魔石の属性指定、付与魔法は出来たけれど、魔力効率の変化や魔力の補充は出来なかったと書いてインベントリに戻した。
夫から託された魔石の付与が終わって一段落したけれど、メラニーの発言が頭から離れない。
ある程度の情報を得て、魔法をそれなりに使いこなす事が出来るようになったら、ここを抜け出す事は出来るだろう。
けれども、その行動は逃げ出した人間が捜索される事態に繋がる。
運よく逃れ続けても、夫と合流するまでの間にも追手を警戒し、合流してからも逃げ続ける事になったら、心身にかかる負荷は相当なものだ。
私が穏便にここから出してもらう方法は、使いどころのない人間として放り出されることなのだろうけれど、現時点では教会側の方向性が分からない。
一般人なので出してくださいと言って、あっさり出してくれるものだろうか?
・・・メラニーの提案は『替え玉』にしろという事だ。
遺体があれば、私が居なくなっても、私が死んだのだと思われる。
「あんな風に言われると、なんだか、高齢者施設の空きを待つような気分で複雑だなぁ」
ここからスムーズに出たい、メラニーの尊厳を損なうようで嫌だ。
そんな気持ちが行ったり来たりしている。
幸いな事にまだ彼女は生きている。だったら少しでも長く、諦めずに精一杯生き抜く事に集中してもらう。
私も夫も今出来る事をコツコツ実行して、後々の準備をする。うん、そうしよう。
少しだけ、心の方向性がついた。
サラが昼食を持ってきてくれたけれど、食べる気にならないので、インベントリから保存袋を取り出し、その中に料理を入れて、夫に『食べてみて』と付箋に書いたメモを残す。
自分用にきゅうりの浅漬けを取り出し、ポリポリ齧り、昼食の器を洗浄する。
「洗浄の魔法を使ってみたら出来るようになりました」
片づけに来たサラに伝える。
午後は助祭との面談も無いようなので、他の本が読みたいから図書室のような場所に行きたいと言ったが、許可が無いので案内できない。と断られた。
礼拝室のような、お祈りする場所を見学したいと言っても、他の参拝者がいるので今は難しいと案内を拒否される。
では、もう一度庭に行ってジャンと話がしたいと言えば、それは許可された。
庭に行くとジャンが庭木の害虫駆除をしていたので、声を掛ける。
「ジャンさん、こんにちは。午前中はすみませんでした」
「こんにちは。こっちは大丈夫だ。具合はもういいのか?」
「お陰様で少し落ち着きました。害虫駆除ですか?一緒に取っても良いでしょうか?」
2人で葉の陰や奥まった枝を1つ1つ確認しながら、火ばさみのようなものでバケツの中に害虫を入れていく。
ある程度溜まったところで乾燥した小枝や葉と一緒に燃やすらしい。
「生活魔法を試したいので、私が火を点けても良いですか?」
ジャンに聞くと快諾してくれたので、害虫を枯葉の上に落とし、虫がはみ出て行かないような大きさで火を点けた。
「豪快に火を点けたなぁー」
驚いたように言うので、本当はもっと小さい火を点けるのだったか?と焦る。
燃える様子を見ながら生活魔法で虫取りの方法について聞く。
「生活魔法で虫取り?俺は知らないなぁ。数が数だから手作業で終わらせているが・・・」
そうか、魔力には限りがあるから数の多い虫に使うには不向きなのね。
アブラムシのように小さくて沢山いる場合は、粘着テープに張り付けて、ペロンと取ると気持ちいいのだけれど。
ん?魔動車が出来ているという事は、自動車の製造過程でテープって使われている部分があるんじゃなかったっけ?じゃあ、この世界でももしかしたら粘着テープがあったりする?
「ジャンさん、ちょっとお聞きしたいのですが、粘着テープってあったりしますか?」
「粘着テープ?聞いたことが無いなぁ」
虫の話からテープの話に切り替わって、少々戸惑いつつも返事をしてくれる。
「粘着した面に張り付けて取ったら、小さな虫は逃がしにくくて良いかな?と思っただけなので」
気にしないでくださいと言葉を続けようとして、グルテンを思い出す。
グルテンを作って小枝の先にくっつけたら、小さい虫が張り付いてくれない物だろうか?
食材を使うからもったいないかな?他に代替品があったりしないかな?そう思いながら、会話の流れと思い付きをジャンに話す。
「なるほどなー、植物にびっしり張り付いているからな」
感心しているところ申し訳ないが、もう一つ思いついた。
「風の魔法で吹き付けるのではなく、吸い込むものってありますか?」
また話が変わったなと言う顔をしながら、うーんと唸るジャン。
「先が細めの管を付けて、風の魔法で虫を吸い取って容器に格納するような魔道具があったら、もっと簡単に駆除できそうだなと思って」
それを聞いてジャンは目を見開く。
「そりゃいいな!手間が少なくて今までよりもしっかり駆除できそうだ」
現時点でそのような魔道具はないとの事だったけれど、魔道具師が開発できないか問い合わせてみると大乗り気のジャンだった。
ちなみにサラは炎を前に虫の話で盛り上がる私達に引いていた。
庭作業の後、部屋に案内されるのかと思ったら、先を歩くサラが礼拝室側に向かって行く。
「今の時間でしたら案内が可能です」
汚れたままでは失礼になるかと思い、少し立ち止まってもらって洗浄をしてから歩き出す。
礼拝室に到着し、信者ではないけれどお祈りの作法を教えてもらう。
両手共に人差し指と親指で輪っかを作るような形にし、知恵の輪のように組み合わせ、残った指は軽く握るのだそうだ。
なんだか薔薇のような形になるなと思いながら、手を組んで頭を下げる。
こちらの神様、初めまして。日本からお邪魔してます。心の中で簡単に挨拶をして頭を上げ、神像を見るけれどやっぱり知らない神様だ。
サラが歩き出したので、後ろをついて部屋に戻る。
部屋で夕食を食べ、片づけてもらったので1人になり、湯浴みをして寝る支度を済ませる。
残っている魔力で、転移魔法の練習をする。
まずは何もないところで右から左への短距離移動。
鑑定魔法と変わらないくらいの魔力が消費されて、無事に出来た。
次に衝立の向こうに移動してみる。これも無事に出来た。
部屋の端から端への移動も問題ない。
あとは・・・部屋の外への移動だけれど、ステルス結界を張った状態で庭に移動してみた。部屋の中を移動する時よりも多くの魔力を使い、無事に出来た。
誰かが近くにいたら危険なので、すぐに部屋に戻る。
今日の締めくくりに、体調不良で身動きできなくなった時が怖いので、自分に治癒魔法をかけてみたら、なんだか胸の辺りが楽になった事にドキッとする。
気が付いていなかったけれど、何か病気になっていた?具合が悪くなってからの対処にならなくてほっとした。
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