召喚されたけれど、夫を捜しに出奔します

秋の叶

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メラニーの死~公一視点~

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 目が覚めると、昨日のようにサァーサァーと雨音は聞こえない。止んだかな?と思いながら起きる。
 メラニーの様子を見ると寝ているようだが、喉がゴロゴロと鳴っているので、自分や部屋ごと洗浄したら音が落ち着いた。
 ピッチャーの水を取り替え、布を濡らしてメラニーに声を掛けつつ唇を湿らせる。
「メラニーさん、おはようございます。起きていますか?」
 ちょっとだけ口が動いているけれど、目覚める気配はない。
 
 パックご飯を温め、サケフレークをかけて即席みそ汁と共に朝ご飯を終わる。
 片付けてからドアを開けて外の様子を見ると、霧雨が降っていた。
 まだ雨が止んでいなかったんだなと空を見ていたら、マサがこちらに向かって歩いてきた。
「よう、イチ、今日もこんな天気だからわしらは作業が中止だ。メラニーさんの様子はどうだ?」
「マサさん、おはようございます。実は昨夜から眠ったままなんですよ。少し顔を見ていきますか?」
「・・・そうか・・・ちょっと邪魔するよ」
 入り口で洗浄してから2人でメラニーのそばにいく。

「メラニーさん、マサだ。起きてるかい?」
 マサがそっと声をかけるが、メラニーの反応はない。
「メラニーさん、今は霧雨が降っていますよ」
 そう言いながら、また布で口元を湿らせる。
「昨日のお昼は少しだけスープを飲んだんですけどね。夜は起きないまま眠っていたようです」
「苦しそうな様子はないな」
「ええ・・・」
 暫くメラニーの顔を見て、一緒に外に出る。

「・・・今日あたりが峠かもしれないな」
 ぽつりとマサが言う。
「そうですか・・・。ここ数日は食欲も少しあったし、会話も出来たんですけど」
「そうか・・・。また後で顔を出すよ」
「はい。ありがとうございます」
 霧雨の中をマサは帰って行った。

 家の中に戻り、インベントリから妻の書いた手紙を取り出して読む。
 治癒魔法の事が書かれていたので、自分にかけてみる。
 下腹部の違和感が消えた。自分では違和感とすら思っていなかったけれど、楽になったという事は何かあったんだろうな。
「メラニーさん、ちょっと魔法をかけてみますね」
 初日にかけたけれど、もう一度メラニーに治癒魔法を使ってみる。
 ・・・特に変化はないようだ。

 追加で付与してもらった結界の魔石の魔道具を作るため、木材を加工する。
 わかりやすいようにこちらはピラミッド型に削り、底に魔石を嵌め込む穴を作る。
 移動時に使う事を考えて服に穴が開いたり、角が痛そうだなと、少し丸みを帯びたデザインに変更する。

 魔石を取り出して鑑定。
 
『結界の魔石:聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率--』

 加工した木材に魔石を嵌め込みながら魔力を流す。
 
『結界の魔道具(小):聖の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率はわずか』

 無事に出来上がったことを鑑定で確かめ、仕上げに魔力を補充して完成。
 インベントリに仕舞ったところで、メラニーの様子を見る。
 口が少し動いたような気がしたので、話しかけながら唇を湿らせる。
「メラニーさん、起きたら今度は何を飲みましょうか。初めて会った時に食べてもらった果物の味の飲み物もあるんですよ。野菜を使った緑色のスープもあるんですよ。いつも美味しそうに食べてもらって、嬉しいんです。突然知らない場所に来た俺をそのまま置いてくれて助かりましたし、話し相手がいてほっとしたんです。落ち着いて行動できたのはメラニーさんのおかげなんです。ありがとうございます」
 ゆっくりと、ぽつりぽつりと話しながら、口元や胸の上下運動を確認する。
 すーっと息を吸った後、メラニーの体は動きを止めた。

 ・・・。
 首を触ってみたけれど、自分がドキドキしすぎてよくわからない。
 暫く呆然と見ていたけれど、ゆらりと椅子から立ち上がり、マサの元へ行く。

 霧雨が止んでいた。
 マサの家の扉を叩くと、返事をして出てきてくれたが、俺の顔を見て問う。
「イチ、メラニーさんは?」
 返事が出来ず、ふるふると首を横に振る。
「村の皆に声を掛けてそっちに行くから家で待っててくれ」
 頷いてメラニーの家に戻った。

 メラニーの体を洗浄し、その後はよく覚えていない。
 村の皆が次々に来て、メラニーに挨拶をして行くのをぼんやり見ていた気がする。 
 こちらの作法がよくわからないので、葬儀のようなものがあるのか分からないが、メラニーの願いがあるので遺体を引き取っていく旨をマサに伝えたように思う。
 
 気が付けばそれなりに時間が経過していた。
 この後の事を考えると、遺体を運ぶための道具を準備しなくてはいけない。
 メラニーが腐敗してしまうので、手を合わせ、謝罪しながらインベントリにシーツごと入ってもらう。

 マサの所に行き、村の人達に知らせてくれた礼を言い、木材を使う許可をもらう。
 暗くなるまでに大八車のようなものを作ることにした。
 建築魔法のおかげもあって、スムーズに作る事が出来たのがありがたい。
 
 インベントリから塀の結界魔道具と、地蔵の置物を取り出し、マサの家に行く。
 壁を強化する魔道具を作ったから取り付けたい。と、暗くなり始めた村の中、壁まで一緒に行ってもらい、設置するのを見てもらう。
 毎日村の皆で魔力を流してほしいと伝え、結界については言及しなかった。
 追加で作っている塀も、繋がっていれば問題なく強化されることを願うばかりだ。
 
 周囲に人がいなかったので、そっとマサに置物の魔道具を渡す。
「これは何だ?飾りか?」
 訝しむマサに使い方と、機能を説明すると、口を開けたまま驚いた。
「今までのお礼も兼ねているので、受け取ってもらえると嬉しいです。使う時はあまり人に知られないように使ってくださいね」
「この魔道具があれば、とても助かる。助かるが・・・塀の強化と合わせるともらい過ぎだ」
 マサの言い分を黙殺し、明日の朝、ここを発つと伝えてメラニーの家に戻った。
 
 空っぽのベッドを見てメラニーの死を実感する。
 たった数日、一緒に過ごしただけだけれど、彼女には感謝しかない。
 まずはメラニーの願いを叶えなくては。

 俺は土間の一部を掘って甕を見つける。
「結構大きい甕なんだな」
 そのまま持ち上げる事が出来ないので、一旦インベントリに入れ、土を戻してから甕の中を確認する。
 むわりと湿気やカビ臭さが立ち上がるが、思ったよりも中身は酷くないようだ。
 中にはいくつかの魔石、お金が入った小袋、本、筆記具、身分証と思われるものが入っていた。
「本を燃やすのは簡単だけれど、ここですぐ燃やした方がいいのか、後で燃やした方がいいのか・・・村を出てからにするか」
 家の中にあったメラニーの少ない衣服を甕に入れ、甕ごとインベントリに戻す。
 妻にメラニーの訃報と、明日の朝出発することを書いて、その夜は飲み物だけ飲んで寝た。

 翌朝、妻が保存袋に入れてくれた料理を食べ、自分と家中を洗浄し、シーツを巻いたメラニーの遺体を背負って家を出て、大八車にそっと乗せて歩き出す。
 マサに会ったので挨拶すると、小さな包みを渡された。
「やる」
 中を確認すると、供養代なのか 魔道具の対価としてなのか、魔石が入っていたので、お礼を言って受け取った。
 
 何人かの村人とすれ違い、お互い頭を下げ、どちらからともなく『お世話になりました』『ありがとうございました』といって別れる。
 村の入り口を通り過ぎ、見えなくなったところで藪へ移動し、周囲を確認して大八車ごとインベントリに入れた。
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