召喚されたけれど、夫を捜しに出奔します

秋の叶

文字の大きさ
27 / 29

冬の準備

しおりを挟む
 日中は明るいうちに行ったことのない方面の街道を進み、材料を仕入れたり、合間に魔道具を作製する。
 夜はランダムで適当な町の塀に魔道具を取り付ける。
 夫が浮くタイプの小型魔動車を試行錯誤で作成中、私はスカーフタイプの冷暖房道具を増産していた。
 夏が過ぎれば気温が下がって寒くなっていくはず。そうなると寒さは命に直結する事態になるので、これで少しでも助かる人がいればと思っている。

 今までコンロの魔道具は夫が作っていたけれど、河や海岸に岩が多い地域の魔道具師と交渉し、見本のコンロと付与した魔石を渡して製作と販売をしてもらう事になった。
 付与された魔石さえあれば、比較的楽に作ることが出来る品だったため、職人に喜ばれた。
 これは主に雪の影響が少ない地域で増産してもらった。

 合流から5日後、タイヤを必要としない、浮くタイプの乗り物が完成した。
 『浮動車』と命名する。
 試運転を兼ねて北に向かって街道を進んだ。
 
 浮動車に強化をかけるとスピードも上がる。
 結界でステルスモードにしているとはいえ、事故が怖い。
 それでも南の方よりも人の往来が少ないので、順調に走らせる(飛ばせる?)事が出来、農村地域に到着した。

 街道沿いの山を切り拓き、少しずつ作物を増やして広げている最中の地域のようだ。
 魔道具の店で冷暖房のスカーフを見せると喜ばれたが、欲しい数を購入するだけの資金が無いという。
 魔石と交換でも大丈夫だと言えば、それならと大小の魔石を見せてくれた。
「随分前に、冷夏と魔獣の被害が重なって、飢饉になった事があるんだ。それで魔獣の被害だけでも減らしたくて毎年狩っているから、魔石と交換だったらありがたいねぇ」
 持っていたスカーフを全て魔石と交換する。
「この冬は暖かく過ごせる人が多くなりそうで助かるよ」
 衣食住の確保が出来ないと体力のない人から死んでいく。
 子供が減った場合はその先に繋がらない。
 開墾地域は全ての物が不足している上に、自然の厳しさも相まって生活の向上に時間がかかる。
 冬が来る前にどれだけ準備できるかが重要になる。

 この村に魔道具師がいるか聞くと、1人いるというので紹介してもらった。
 大きな魔石を使って冷暖房の魔石を作る。
 その間に夫と、紹介してもらった魔道具師がどんな形の魔道具にしていくか話し合う。
 各家庭に取り付けるなら石より木で作った方が軽い。
 実際に火が出るわけでもないしという事で、木材で製作する事が決定した。

『冷暖房の魔道具(大):火と水と風の魔力を付与した魔石が使われている。魔石の魔力効率は十分』

 試作品が2つ出来たところで、動きを確認し、他の地域でも同じような品を作っても大丈夫と許可をもらう。
 冷暖房用の付与魔石を追加で渡すと、この先少しずつ作り進める仕事が出来たと喜ばれた。
 今回の報酬は冷暖房魔道具のデザインという形で合意した。
 
 その後、村人総出で魔獣狩りをするというので、作戦を立て、追い込み罠を提案する夫。
 村に近い出口に大きな穴を私と夫が掘り、村人が奥の山から大音量で魔獣を追う。
 猪だけじゃなく、鹿や熊まで穴に落ちた。
 十数匹が落ちたところで、穴の壁を登りそうな熊は夫と私で1匹ずつ窒息コースに、他の魔獣は村人が止めを刺した。
 
 これで秋の収穫は安泰になりそうだ!
 お祭りモードに突入した村人から猪肉を少し貰い、魔石は付与をして魔道具師に預ける。
 穴は埋め戻したが、伐採の手間が省けたと木材を運びながら笑顔の住人達だった。
 日が暮れる前に村を発ち、今年の冬は快適に過ごせますようにと祈る。

 この日の2人の金銭的な収支は赤字だったが、気にしなかった。

 数週間後、冷暖房の魔道具の噂が周辺の村々に届き、魔道具を作りたい人、付与の参考にしたい人が技術を学び、魔道具を買い付けたい人が村を訪れ、人の動きが活発になった。
 その年の冬から村では寒さで死ぬ事なく過ごせるようになったという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~

オレンジ方解石
ファンタジー
 恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。  世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。  アウラは二年後に処刑されるキャラ。  桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

処理中です...