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空を飛ぶ
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箒で空を飛ぶ練習に入ると宣言されてから、下準備としての魔法の訓練をしていたら二年経過した。
その間、掃除のために箒を使う事があっても、飛ぶために使う事は無かった。
マルゴが見ていない隙にちょっと箒を跨いでみたりもしたけれど、浮くための呪文を知らなかったので、飛びようもなく、間抜けな姿に一人で落ち込んだのは内緒だ。
「師匠。飛ぶための箒はどんな箒でもいいの?あっ・・・ですか?」
言葉遣いも練習中のリュシー。
「素材によって魔力を通しやすい物もあるようだけれどね。基本的には私達魔女の魔力で飛ぶから、どれでも大きく変わりはないと思うよ。こだわる人はこだわるんだろうけどね」
ほれ、と手渡された箒を両手で握る。
「『Natat』(ナタット)」
教えてもらった呪文を口にすると、スッと体の熱が引いた感じがした後、ぶわっと箒ごと体が舞い上がる。
垂直に急上昇し、そのまま落下した。
「いった~い!死ぬー!」
「こうなるから初めに結界魔法が必要だというのがわかったかい?それと、呪文を唱える時にはただ言うのではなくて、どんな風に飛ぶのか姿を想像しないとね」
一応のため、地面に衝撃を抑える結界を張っていたマルゴが、予想通りの反応だと頷きながら言う。
回復魔法で打撲を癒しながらリュシーは涙目だ。
「治療の魔法も、結界の魔法も生活魔法だって最初はともかく、今はどう使いたいか何気なく想像して使っているだろう?新しく使う魔法ほど慎重に想像することが必要だよ」
「はい、師匠」
「じゃあもう一度やってごらん」
立ち上がって箒を跨ぎ、今度は先に結界の魔法を使う。
その後浮かぶための魔法を使う時には、屋根の上まで浮かぶ想像をして呪文を唱えた。
スーッと箒ごと体が浮き上がり、想像していた場所まで上がったところで止まった。
「おお!師匠、出来ました!っわわわっ!」
無事に浮き上がった事による喜びで集中力が途切れたところで、自由落下する体。
冷静に魔法を使う前に地面とご対面。
「ひぐっ・・・結界って大事だね。あっ、ですね」
怪我が無くて何よりだと思いながらマルゴは課題を伝える。
「まずは屋根の上まで浮かんで、家の周りを五周飛べるようになる事。余裕があったらゆっくり飛んだり、早く飛んだり調節出来るようになる事」
「はい、師匠」
「飛ぶために大事な事は?」
「自分が怪我をしない事、他人や物を傷つけない事」
「そうだね。それじゃあ後は一人で練習できるね?私は庭にいるよ」
「はい、師匠」
マルゴが庭で薬草を取って干している間、リュシーは何度も上空から落ちては飛んで落ちては飛んでを繰り返し、魔力が尽きてその日は終わった。
家の中に入っていつも通りの家事をしていると、ぽつりとリュシーが言う。
「師匠が飛んでいるのを見ていて、もっと簡単に出来ると思っていたのに、全然出来なかった」
しょんぼりしている様子を見ながら静かな声でマルゴは諭す。
「世の中は簡単に見えることが沢山あるけれど、熟練しないと出来ない事で溢れているよ。コツコツと諦めずにこなしてようやく出来る事ばかりだ」
「師匠も?」
「そりゃもちろんだ。出来ない事だらけだったし、今でも出来ない事があるよ」
「そうなんだ・・・。あっ、ですね」
一人で考える時間も大事なので、マルゴはそっと見守った。
翌日、魔法の練習時間になるとリュシーは箒を手に空に浮かぶ。
屋根の上で浮かぶ時間が持続したが、声を掛けると集中力が切れて落下する。
「師匠!話しかけないで!あっ、です」
「『話しかけないでください。』だね。会話で落ちるようではまだまだだね」
「もう!・・・もう一回やってみ・・・ます」
三日目、上空に留まる時間が長くなり、少し進むようになった。
それでも声を掛けると落下するので、何度も浮かび直す。
四日目、今度は声を掛けるだけじゃなく、簡単な計算をしてもらった。
あっという間に落下するので、会話以上に集中力が切れるようだ。
二週間ほど経過すると会話をしたり、計算をしても落下する回数が減った。
ふらふらしながらも家の周りを一周出来るようになった。
一カ月後には話をしながらゆっくりと飛び、五周出来るようになった。
そこでマルゴは課題を積み上げる。
「箒で飛びながら、畑に生活魔法で水遣りをしておいで。もちろん自分の結界も維持するんだよ」
複数の魔法を行使しながら飛ぶのは難易度が上がる。
「まだ早く飛ぶのもゆっくり飛ぶのも調節出来ないのに、更に増やすなんて!」
文句を言いながらもマルゴが日常的に行っている事なので、出来るようにならないと!と意気込んでいる。
二か月後には結界に包んだものを箒に括りつけて飛びながら、畑の水遣りをするようになる。
三か月後には緩急をつけて飛べるようになり、複数の魔法を行使出来るようになった。
「うん、基本が出来るようになったね。後は持久力と不慮の出来事に遭っても慌てずに対処出来るようになる事だね。そろそろ私の仕事についてきてもいい頃合いだ」
「え?本当?留守番じゃなくて、一緒に行っても良いの?あっ、ですか?」
「遠方への仕事が無い時は、近所の配達を怪我無く、事故無くこなせるように」
「はい、師匠」
リュシーが魔女見習いとしての動き始める。
その間、掃除のために箒を使う事があっても、飛ぶために使う事は無かった。
マルゴが見ていない隙にちょっと箒を跨いでみたりもしたけれど、浮くための呪文を知らなかったので、飛びようもなく、間抜けな姿に一人で落ち込んだのは内緒だ。
「師匠。飛ぶための箒はどんな箒でもいいの?あっ・・・ですか?」
言葉遣いも練習中のリュシー。
「素材によって魔力を通しやすい物もあるようだけれどね。基本的には私達魔女の魔力で飛ぶから、どれでも大きく変わりはないと思うよ。こだわる人はこだわるんだろうけどね」
ほれ、と手渡された箒を両手で握る。
「『Natat』(ナタット)」
教えてもらった呪文を口にすると、スッと体の熱が引いた感じがした後、ぶわっと箒ごと体が舞い上がる。
垂直に急上昇し、そのまま落下した。
「いった~い!死ぬー!」
「こうなるから初めに結界魔法が必要だというのがわかったかい?それと、呪文を唱える時にはただ言うのではなくて、どんな風に飛ぶのか姿を想像しないとね」
一応のため、地面に衝撃を抑える結界を張っていたマルゴが、予想通りの反応だと頷きながら言う。
回復魔法で打撲を癒しながらリュシーは涙目だ。
「治療の魔法も、結界の魔法も生活魔法だって最初はともかく、今はどう使いたいか何気なく想像して使っているだろう?新しく使う魔法ほど慎重に想像することが必要だよ」
「はい、師匠」
「じゃあもう一度やってごらん」
立ち上がって箒を跨ぎ、今度は先に結界の魔法を使う。
その後浮かぶための魔法を使う時には、屋根の上まで浮かぶ想像をして呪文を唱えた。
スーッと箒ごと体が浮き上がり、想像していた場所まで上がったところで止まった。
「おお!師匠、出来ました!っわわわっ!」
無事に浮き上がった事による喜びで集中力が途切れたところで、自由落下する体。
冷静に魔法を使う前に地面とご対面。
「ひぐっ・・・結界って大事だね。あっ、ですね」
怪我が無くて何よりだと思いながらマルゴは課題を伝える。
「まずは屋根の上まで浮かんで、家の周りを五周飛べるようになる事。余裕があったらゆっくり飛んだり、早く飛んだり調節出来るようになる事」
「はい、師匠」
「飛ぶために大事な事は?」
「自分が怪我をしない事、他人や物を傷つけない事」
「そうだね。それじゃあ後は一人で練習できるね?私は庭にいるよ」
「はい、師匠」
マルゴが庭で薬草を取って干している間、リュシーは何度も上空から落ちては飛んで落ちては飛んでを繰り返し、魔力が尽きてその日は終わった。
家の中に入っていつも通りの家事をしていると、ぽつりとリュシーが言う。
「師匠が飛んでいるのを見ていて、もっと簡単に出来ると思っていたのに、全然出来なかった」
しょんぼりしている様子を見ながら静かな声でマルゴは諭す。
「世の中は簡単に見えることが沢山あるけれど、熟練しないと出来ない事で溢れているよ。コツコツと諦めずにこなしてようやく出来る事ばかりだ」
「師匠も?」
「そりゃもちろんだ。出来ない事だらけだったし、今でも出来ない事があるよ」
「そうなんだ・・・。あっ、ですね」
一人で考える時間も大事なので、マルゴはそっと見守った。
翌日、魔法の練習時間になるとリュシーは箒を手に空に浮かぶ。
屋根の上で浮かぶ時間が持続したが、声を掛けると集中力が切れて落下する。
「師匠!話しかけないで!あっ、です」
「『話しかけないでください。』だね。会話で落ちるようではまだまだだね」
「もう!・・・もう一回やってみ・・・ます」
三日目、上空に留まる時間が長くなり、少し進むようになった。
それでも声を掛けると落下するので、何度も浮かび直す。
四日目、今度は声を掛けるだけじゃなく、簡単な計算をしてもらった。
あっという間に落下するので、会話以上に集中力が切れるようだ。
二週間ほど経過すると会話をしたり、計算をしても落下する回数が減った。
ふらふらしながらも家の周りを一周出来るようになった。
一カ月後には話をしながらゆっくりと飛び、五周出来るようになった。
そこでマルゴは課題を積み上げる。
「箒で飛びながら、畑に生活魔法で水遣りをしておいで。もちろん自分の結界も維持するんだよ」
複数の魔法を行使しながら飛ぶのは難易度が上がる。
「まだ早く飛ぶのもゆっくり飛ぶのも調節出来ないのに、更に増やすなんて!」
文句を言いながらもマルゴが日常的に行っている事なので、出来るようにならないと!と意気込んでいる。
二か月後には結界に包んだものを箒に括りつけて飛びながら、畑の水遣りをするようになる。
三か月後には緩急をつけて飛べるようになり、複数の魔法を行使出来るようになった。
「うん、基本が出来るようになったね。後は持久力と不慮の出来事に遭っても慌てずに対処出来るようになる事だね。そろそろ私の仕事についてきてもいい頃合いだ」
「え?本当?留守番じゃなくて、一緒に行っても良いの?あっ、ですか?」
「遠方への仕事が無い時は、近所の配達を怪我無く、事故無くこなせるように」
「はい、師匠」
リュシーが魔女見習いとしての動き始める。
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