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盗賊の末路
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「同じ人間じゃないから、魔法の使い方が違って当たり前じゃない」
そんな一言を残してジアーナは帰って行った。
「確かに、私は事前に情報を得てから魔法を行使する事が多い。ジアーナの場合は出会った人の願いを叶えることが多いというし、人それぞれなんだろうね」
「師匠は『調和の魔女』と呼ばれているんですか?」
「そうみたいだね」
「じゃあ、ジアーナさんは?」
「彼女は『享楽の魔女』だったかねぇ」
「ふーん。魔女は魔女だと思っていたので、他に名前がついているなんて知りませんでした」
「二つ名は他人が勝手に付けているだけだから、自分で名乗る事は無いよ。地名を言われる魔女もいるしね」
「そうなんですね」
薬の配達のため、じめじめとした西の国を飛んでいたリュシー。
配達が終わって町の中を浮動車で進むと、甘い匂いがした。
「前にジアーナさんが食べさせてくれたお菓子かな?」
スンスンと鼻をひくつかせ、匂いの強い方へ進む。
とある家の前から漂っている事に気が付き、お店じゃなかったと肩を落とす。
家の中から一人の子供が顔を出した。
「お姉ちゃん誰?」
「私は魔女のリュシーです」
「魔女って何?」
「願いを叶える魔法を使うの」
「ふーん。何してたの?」
「良い匂いがすると思って通りかかったの」
「ハルヴァの匂いかなー。おじいちゃんが死んだからお母さんが作ってるんだ」
そこへ母親と思われる女性が顔を出す。
「ウマル誰と話しているの?」
「魔女のお姉ちゃん。良い匂いがするって」
「ああ、ハルヴァの匂いだね。見ない顔だね。」
この町に配達で来た魔女だと説明すると、ハルヴァを少し分けてくれた。
母親が家の中に戻り、子供はリュシーを見ている。
「お姉ちゃんの魔法ってどんなの?」
「生活魔法も使うし、修復の魔法も使うわ。願い事があれば叶える魔法も」
「死んだおじいちゃんを治せる?」
「それは出来ないわ」
「じゃあ、葬式の時に雨だったら嫌だから、からっからの天気にして」
「いいよ。叶えましょう」
リュシーは髪の毛の中から、白く光り輝く一本の毛をつまみ、プチッと抜き取る。
「この地域に乾燥を。『siccus』(シックス)」
言葉の終わりに両手に持っていた白く輝く毛髪が風に飛んでいく。
子供と別れ、貰ったハルヴァを食べる楽しみで胸がいっぱいになって帰宅する。
リュシーが立ち去った後、その地域ではじめじめとした空気が無くなった。
乾燥した空気は近隣の地域へ影響を及ぼしたが、リュシーは気づかなかった。
別の日、北の国へ魔石の受け取りにリュシーは出かけた。
魔獣から得た魔石は浄化しないと魔道具用の魔石にする事が出来ない。
教会の人間が浄化するが、聖女の末裔と言われる魔女も浄化できる為、リュシーが定期的に受け取りに行く。
数が少ない場合はその場で浄化し、魔石の量が多い時は持ち帰って空いた時間に行う。
今回はそこそこの量だったけれど、急ぎの用事が無かったので、その場で浄化する事にした。
魔獣解体所の片隅に用意されたテーブルに魔石が詰まった箱と空箱を置き、椅子に腰かける。
二、三十個ずつまとめて浄化して終わったものを空箱に詰める。
同じ事を繰り返し、全ての魔石の浄化を終えた。
「ご主人、魔石の浄化が終わりました!」
「おう、お弟子さん、ありがとよ!今回の御代は銀貨五枚でいいか?」
「はい、確かに受け取りました」
「またよろしくな!」
魔獣解体所を出て空を飛ぶ。
更に北に飛べばリュシーが生まれ育った村だと言うけれど、帰りたいと思った事が無かった。
それよりも周辺の村が気になったので、そちらへ行ってみる。
街道で倒れた荷馬車が目に入った。
近くに下りると一人の男性が怪我をして道路に横たわっている。
「治療は必要ですか?」
「治してほしいが、ご覧の通り荷物も何もかも奪われた。払えるものが無い」
リュシーはその場で男性に回復魔法を使った。
「あんた、魔女様だったのか。助かった」
怪我が消えていく様子に驚きつつ、男性が礼を言う。
ついでなので、倒れた荷馬車を戻し、修復魔法をかける。
荷馬車を引くための馬がいなくなっていたので、男性にどうするのか聞く。
「荷物どころか馬まで盗られちゃ何も出来ねぇ。自分で引いて行って、これを売るしかないな」
生活魔法の身体強化を使えるようなので、村まで荷馬車を引っ張るようだ。
「何か願いはありますか?」
リュシーは男性に聞く。
「願いか・・・取り戻すだけじゃ気が済まないな。そうだな・・・いっその事、荷馬車を襲って馬まで盗った奴らが全員善人になってから、悪人に襲われて、全部まとめて破滅して欲しい」
「叶えましょう」
リュシーは髪の毛の中から、白く光り輝く一本の毛をつまみ、プチッと抜き取る。
「荷馬車を襲った者達の破滅を『Ruina』(ルイーナ)」
言葉の終わりに両手に持っていた白く輝く毛髪が風に飛んでいく。
怪我が治った男性は荷馬車を引いて村へ向かった。
その後、北の国では盗賊団の一つが急に慈善事業を始めたという。
村を回って力仕事を率先したり、困窮している人へ食料を提供したり、街道を整えたり。
世話になった村人は『ようやく真面目な人間になったのか』と感心していた。
話を聞きつけた別の盗賊団が深夜、アジトへ乗り込む。
洞窟の入り口には、以前であれば見張りがいたが、心を入れ替えた元盗賊達は見張りを置かずに寝ていた。
物音に気が付き、目を覚ますと洞窟内には沢山の現役盗賊達がいたため、驚いて応戦する。
配布のために積み上げていた小麦粉などの袋が崩れ、穴が開いて舞い散る。
そんな状態で火の魔法を使った者がいた。
着火と同時にドォォーーーン!!と大きな火の塊が膨れ上がる。
洞窟内の人間は皆、天井や床、壁に叩きつけられ、炎に身を焦がす。
意識のある者は呻きながら出口へ視線を向けるが、洞窟の天井が崩落した。
深夜の大きな音に驚いた近隣の村人が、明るくなってから洞窟に行くと、崩れた洞窟と火事の臭い、そして夥しい数の遺体が瓦礫の中にあった。
少し離れた山間の村には荷馬車を襲った盗賊団の仲間が数人いた。
人が変わったように親切に接するようになった姿を見て、感心する者もいれば不審に思う者もいる。
別の盗賊団の人間がこっそりと様子を見ていたが、ある夜、接触を図った。
その時、山から巨大な岩が転がり落ちてくる。
ドドンッ、ゴロンっと跳ねるように勢いよく回転し、弾んで元盗賊と接触を図った盗賊のいる建物に激突した。
十数人の男達は建物ごと潰される。
洞窟の爆発の振動がこのような形になったとは思わず、村人達はただただ驚くばかりだった。
魔法で大岩をどかし、死者の確認をするが村人が一人もいなかった事に胸を撫で下ろすのだった。
リュシーに願いをした男性は、盗賊団の末路を聞いて大喜びした。
「魔女様に願ったら盗賊共が減ったぞ!」
そんな一言を残してジアーナは帰って行った。
「確かに、私は事前に情報を得てから魔法を行使する事が多い。ジアーナの場合は出会った人の願いを叶えることが多いというし、人それぞれなんだろうね」
「師匠は『調和の魔女』と呼ばれているんですか?」
「そうみたいだね」
「じゃあ、ジアーナさんは?」
「彼女は『享楽の魔女』だったかねぇ」
「ふーん。魔女は魔女だと思っていたので、他に名前がついているなんて知りませんでした」
「二つ名は他人が勝手に付けているだけだから、自分で名乗る事は無いよ。地名を言われる魔女もいるしね」
「そうなんですね」
薬の配達のため、じめじめとした西の国を飛んでいたリュシー。
配達が終わって町の中を浮動車で進むと、甘い匂いがした。
「前にジアーナさんが食べさせてくれたお菓子かな?」
スンスンと鼻をひくつかせ、匂いの強い方へ進む。
とある家の前から漂っている事に気が付き、お店じゃなかったと肩を落とす。
家の中から一人の子供が顔を出した。
「お姉ちゃん誰?」
「私は魔女のリュシーです」
「魔女って何?」
「願いを叶える魔法を使うの」
「ふーん。何してたの?」
「良い匂いがすると思って通りかかったの」
「ハルヴァの匂いかなー。おじいちゃんが死んだからお母さんが作ってるんだ」
そこへ母親と思われる女性が顔を出す。
「ウマル誰と話しているの?」
「魔女のお姉ちゃん。良い匂いがするって」
「ああ、ハルヴァの匂いだね。見ない顔だね。」
この町に配達で来た魔女だと説明すると、ハルヴァを少し分けてくれた。
母親が家の中に戻り、子供はリュシーを見ている。
「お姉ちゃんの魔法ってどんなの?」
「生活魔法も使うし、修復の魔法も使うわ。願い事があれば叶える魔法も」
「死んだおじいちゃんを治せる?」
「それは出来ないわ」
「じゃあ、葬式の時に雨だったら嫌だから、からっからの天気にして」
「いいよ。叶えましょう」
リュシーは髪の毛の中から、白く光り輝く一本の毛をつまみ、プチッと抜き取る。
「この地域に乾燥を。『siccus』(シックス)」
言葉の終わりに両手に持っていた白く輝く毛髪が風に飛んでいく。
子供と別れ、貰ったハルヴァを食べる楽しみで胸がいっぱいになって帰宅する。
リュシーが立ち去った後、その地域ではじめじめとした空気が無くなった。
乾燥した空気は近隣の地域へ影響を及ぼしたが、リュシーは気づかなかった。
別の日、北の国へ魔石の受け取りにリュシーは出かけた。
魔獣から得た魔石は浄化しないと魔道具用の魔石にする事が出来ない。
教会の人間が浄化するが、聖女の末裔と言われる魔女も浄化できる為、リュシーが定期的に受け取りに行く。
数が少ない場合はその場で浄化し、魔石の量が多い時は持ち帰って空いた時間に行う。
今回はそこそこの量だったけれど、急ぎの用事が無かったので、その場で浄化する事にした。
魔獣解体所の片隅に用意されたテーブルに魔石が詰まった箱と空箱を置き、椅子に腰かける。
二、三十個ずつまとめて浄化して終わったものを空箱に詰める。
同じ事を繰り返し、全ての魔石の浄化を終えた。
「ご主人、魔石の浄化が終わりました!」
「おう、お弟子さん、ありがとよ!今回の御代は銀貨五枚でいいか?」
「はい、確かに受け取りました」
「またよろしくな!」
魔獣解体所を出て空を飛ぶ。
更に北に飛べばリュシーが生まれ育った村だと言うけれど、帰りたいと思った事が無かった。
それよりも周辺の村が気になったので、そちらへ行ってみる。
街道で倒れた荷馬車が目に入った。
近くに下りると一人の男性が怪我をして道路に横たわっている。
「治療は必要ですか?」
「治してほしいが、ご覧の通り荷物も何もかも奪われた。払えるものが無い」
リュシーはその場で男性に回復魔法を使った。
「あんた、魔女様だったのか。助かった」
怪我が消えていく様子に驚きつつ、男性が礼を言う。
ついでなので、倒れた荷馬車を戻し、修復魔法をかける。
荷馬車を引くための馬がいなくなっていたので、男性にどうするのか聞く。
「荷物どころか馬まで盗られちゃ何も出来ねぇ。自分で引いて行って、これを売るしかないな」
生活魔法の身体強化を使えるようなので、村まで荷馬車を引っ張るようだ。
「何か願いはありますか?」
リュシーは男性に聞く。
「願いか・・・取り戻すだけじゃ気が済まないな。そうだな・・・いっその事、荷馬車を襲って馬まで盗った奴らが全員善人になってから、悪人に襲われて、全部まとめて破滅して欲しい」
「叶えましょう」
リュシーは髪の毛の中から、白く光り輝く一本の毛をつまみ、プチッと抜き取る。
「荷馬車を襲った者達の破滅を『Ruina』(ルイーナ)」
言葉の終わりに両手に持っていた白く輝く毛髪が風に飛んでいく。
怪我が治った男性は荷馬車を引いて村へ向かった。
その後、北の国では盗賊団の一つが急に慈善事業を始めたという。
村を回って力仕事を率先したり、困窮している人へ食料を提供したり、街道を整えたり。
世話になった村人は『ようやく真面目な人間になったのか』と感心していた。
話を聞きつけた別の盗賊団が深夜、アジトへ乗り込む。
洞窟の入り口には、以前であれば見張りがいたが、心を入れ替えた元盗賊達は見張りを置かずに寝ていた。
物音に気が付き、目を覚ますと洞窟内には沢山の現役盗賊達がいたため、驚いて応戦する。
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着火と同時にドォォーーーン!!と大きな火の塊が膨れ上がる。
洞窟内の人間は皆、天井や床、壁に叩きつけられ、炎に身を焦がす。
意識のある者は呻きながら出口へ視線を向けるが、洞窟の天井が崩落した。
深夜の大きな音に驚いた近隣の村人が、明るくなってから洞窟に行くと、崩れた洞窟と火事の臭い、そして夥しい数の遺体が瓦礫の中にあった。
少し離れた山間の村には荷馬車を襲った盗賊団の仲間が数人いた。
人が変わったように親切に接するようになった姿を見て、感心する者もいれば不審に思う者もいる。
別の盗賊団の人間がこっそりと様子を見ていたが、ある夜、接触を図った。
その時、山から巨大な岩が転がり落ちてくる。
ドドンッ、ゴロンっと跳ねるように勢いよく回転し、弾んで元盗賊と接触を図った盗賊のいる建物に激突した。
十数人の男達は建物ごと潰される。
洞窟の爆発の振動がこのような形になったとは思わず、村人達はただただ驚くばかりだった。
魔法で大岩をどかし、死者の確認をするが村人が一人もいなかった事に胸を撫で下ろすのだった。
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