残酷な魔女

秋の叶

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兄弟のその後

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 帰宅したリュシーは今日の出来事をマルゴに報告する。
「他人や知人同士だけじゃなく、子が親を殺す事もあれば、親が子を殺す事もある。世知辛いね」
「パメラが不審な点に気付いてくれなかったら、そのまま三人を家に送るつもりでした」
「あの子は生まれつき動けなかった分、考える時間があったんだろうねぇ。私の下で修行するだけじゃなく、同じような年頃の子からの気づきもあるって事が実感できたかい?」
「はい」
 
 この日の出来事をきっかけに、リュシーはパメラと一緒に本や新聞を読んで、感想や問題点を話し合う時間を設ける事になった。

 家にある本を読み終わると、各地の図書館へ出かける。
 パメラにとっては本だけではなく、建物や絵画、彫刻もじっくりと鑑賞する対象になる。
 目をキラキラさせて見ている様子に、自分とは違う視点に気付かされる。
 建物内に虫の駆除要員としてコウモリが住み着いていると聞いた所では、パメラが悲鳴を上げていた。
 びくびくしながら天井付近を見ていたけれど、日中に出てくることは無いはず。たぶん。

 
 暫くして、またもやジアーナが訪ねてきた。
 マルゴと話し合った後、畑の手入れをしていたリュシーの所に来る。
「リュシー、久しぶりね」
「あ、こんにちはジアーナさん。ご無沙汰しています」
「ふふっ、前に会った頃より落ち着いているわね」
 こんな時、どんな返事をしたらいいか、まだまだ戸惑う事が多いリュシーは、視線を下に向けて言葉に詰まる。

「ところでリュシー、マルゴから聞いたのだけれど、雪の国で男の子の兄弟を助けたのですって?」
「あ、はい。助けたと言えるかどうかわかりませんが・・・」
「今からそこへ案内してくれるかしら?ちょっと気になったから確認したいのよ。もちろんマルゴから許可は貰っているわ」
 拒否権の無いリュシーはこくりと頷いた。
 畑道具を片付け、洗浄をかけてから出かける準備をし、ジアーナの浮動車と一緒に飛び立つ。

  
 雪の国へ到着すると、吹雪いてはいないものの、雪が強く降っていた。
「あら、こんなに降っているなら、一晩で雪に埋もれる家もありそうね」
 ふわふわと降る雪だったら幻想的で美しいと感じるけれど、視界が真っ白になるほど雪が降ってくる状況をリュシー初めて見た。
 安全な所から、単なる風景として見ている分にはどうとも思わないが、自分事になった場合は雪に閉じ込められる恐怖を伴う。

 目的の家に着くと、ジアーナが浮動車の周りに結界を張ったので、リュシーも同じように結界を張る。
 家の前に雪が積もり扉を開けられそうも無かったので、生活魔法で吹き飛ばしてから扉を叩く。
 コココン。

 先日会ったお兄さんが扉を開く。
 最初にジアーナを見て首を傾げ、次にリュシーを見て目を開く。
「あ、あんたはこの前の魔女・・・」
「こんにちは。魔女の弟子のリュシーです。この前は名乗らなくてすみません」
「私はリュシーの師匠の友達で、同じく魔女のジアーナよ。ちょっとお邪魔していいかしら?」
 ジアーナは相手が返事をする前に扉に手をかけ、ぐいっと開いて家の中に進む。
 強引な行動に焦りつつもリュシーは後に続いた。

「今日は酷い雪ね。あら、薪が足りていないの?寒いと会話にならないでしょうから、ちょっと温度を上げるわよ」
 そう言ってジアーナは生活魔法で部屋の温度を上げた。

 話し声に弟も出てくる。
 兄弟が不審な顔をしていてもジアーナは一向に気にしない。
 勝手に椅子に座り、兄の方に話しかける。
「確かめたい事があってきたのよ。まずは座って?」
 誰の家だと突っ込まれそうな態度で椅子を指し示している。
 マルゴに『考えが足りない』と言われるリュシーでさえも、ジアーナの奔放さに驚いていた。

 見知らぬ人(リュシーには一度だけ会っているが)が、我が物顔で指示するので不安そうに腰かける兄弟。
「二人共、ちょっと確認させてね。『aestimatio』(アエスティマティオ)」
 ジアーナの呪文の後、沈黙が続く。
 何が起こっているのか分からない兄弟はジアーナとリュシーを交互に見ているし、リュシーはリュシーで魔法の行使に一つの可能性に思い至り、驚いていた。

「うん。間違いないわね。単刀直入に言うけれど、貴方たち兄弟、私の所に来ない?」
 兄弟は『何言ってんだこの人』と言う顔になるし、リュシーは『端折り過ぎですジアーナさん!』と心で叫ぶ。
「ジ、ジアーナさん、もう少し説明した方が・・・」
 唖然としている場合じゃないと自分を叱咤してジアーナを促す。

「それもそうね。・・・あなた達はこの前、ここに居るリュシーに会ったのでしょう?」
「はい」
 兄が代表して答える。
「父親に切られたのは弟の方ね?」
 こくりと二人が頷く。
「切られた後、森の中に放置されていたのでしょう?血が出ていても魔獣が寄ってこなかった理由はわかる?」
 兄は不思議そうな顔をし、弟は首を横に振る。
「もしかして魔女や魔法使いの魔法を使ったんじゃないかなと思って確かめに来たのよ。それで今見てみたら、弟は魔法使いの素質があるわね。兄の方は魔道具師の素質があるわ。だから私の所で修業しない?」
 ジアーナの説明に兄弟は口を開けて固まった。

 兄弟の様子を無視して家の中を見回すジアーナ。
「父親があんな事になっているし、未成年の貴方達だけで暮らすのも大変でしょう?見たところ家財道具もそれほど無いし、今から行けば夜には家に着くわよ」
 
 一人で話を決定し、周囲を巻き込む勢いのジアーナを見て、この三人でうまく暮らせるのだろうかと疑問に思う。
 それでも、兄弟だけで過ごすよりも、快適な住環境だけは確定している気がする。

「はい!必要なものは各自シーツに包んで、いらないものは全部置いていくのよ」
 考えがまとまらない兄弟に発破をかけるように行動を促し、パンパンと手を叩いて次々指示していく。
 ジアーナは紙に家の住人は魔女の元へ行ったと書付け、テーブルに張り付けた。
 シーツに包んだ荷物を抱えた兄弟は、荷物をまとめる間に家を出る決心をしたようだ。

 暖炉の火を消すと家の中が真っ暗になる。
 扉を開けて外に出ようとしたら、雪の重みで開かなくなっていたので、ジアーナが魔法で押し開ける。
 十数分の間に積もった雪の量にリュシーは驚く。
 浮動車は結界で無事だった。

「じゃあねリュシー。案内ありがとう」
 ジアーナは兄弟を浮動車に乗せ、荷物を結界で覆って浮動車に括りつけて飛んで行った。
 手を振ってジアーナたちを見送って、リュシーは家に帰った。

 帰宅したリュシーをマルゴは労う。
「おかえり。ジアーナはいつもの調子だったんだろう?」
「有無を言わさずってああいう事かと実感しました・・・」
「まあ、件の兄弟も生活しているうちにゆっくり考えるだろうさ」

 一人きりではなく、兄弟揃っているからきっと励まし合えるはず。
 そんな事を思うリュシーだった。
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