君の小水が飲みたい

27、ロキの奸計と神々の悪ふざけ

　やったぞ！　ミスティルティンの槍をドワーフ共を騙して作らせることが出来た！
　バルデルスめ、待っていろ。今から、殺してやる。

｢なあ、みんな！　不死身となったバルデルスに、色々投げて試さないか？｣

｢ん？　面白い！　どれ、私の鎚ハンマーを受けてみるか？　バルデルス？｣

｢あぁ？　そうだな、トールの神器ミニョルニルが私を傷つけられるのか、試してみるか｣

　トールハンマーがバルデルス目掛けてふるわれた。
　しかし、バルデルスは無傷で真っ赤に焼けたミニョルニルを受け止める。

｢｢｢｢｢｢｢オオオオー！｣｣｣｣｣｣｣

｢素晴らしい！　では皆で色々投げて遊んでみるか？！｣

｢ロキ、面白い遊びを思い付いたな、よし、皆でやるか！｣

｢バルデルス良いな？｣

｢ん？　まあ、神器でさえこの程度だ。訓練だとしても楽なものだ。良いぞ、皆で遊んでみよう｣

｢ヘズ、お前もやってみろよ｣

｢私は今、バルデルスの蛇毒で目が見えん。もうすぐにより見えるようになるのだ、暫し待てロキ｣

｢なあに、遊びだ、ほら、皆で遊んでいるんだ、ヘズも適当にこの槍でも投げてみろよ｣

｢ん？　やけに軽いな？　だが、金属か？　ほう、面白い槍だ。ロキ、バルデルスの位置を教えろ｣

　ひっかかった！　コレでバルデルスも終わりだ！　
　
　ロキに渡されたミスティルティンの槍が盲目のヘズによってバルデルスに放たれた。
　新芽という幼く非力故に契約をしていなかったヤドリギも、わずかの時で成長し、かつ、ドワーフ達の手により鍛えられた武器となっていた。
　その黄金の鍛えられた武器がバルデルスを貫く。
　遊びに興じていた神々がその様に驚愕し、慌て出す。
　ロキはいち早く姿を変えてその場から消えた。

｢おい？！　どういう事だ！　バルデルス！　バルデルス！｣

｢いかん！　すぐに治療師を！｣

　バルデルスの息が絶えるとともに、暗闇に包まれ、大粒の雹が降り注ぐ。

｢うわあ！　皆、建物の中へ！｣

｢誰か光を！　入り口が見えん！｣

｢ガアアアア！｣｢オワアア！｣｢ヒイィィー！｣｢ガハッ！｣

｢おい？！　大丈夫か？！｣

　悲鳴が上がり、しばらくして、辺りはゴツゴツと地面に落ちて来る雹の音が響く。

｢トール！　ミニョルニルで照らせ！｣

　やっと駆け付けたオーディンが見たモノは、ミスティルティンに貫かれて息堪えたバルドルの姿と、呆然とミニョルニルを掲げるトール。
　そして気を失い、血を流して横たわる者達と、なおも降り注ぎ、襲い来る拳大の雹。
　
｢クッッ！　間に合わなかったか！『身体強化！』トール、動けるか？！｣

｢あ、ああ、だ、大丈夫だ！｣

｢身体強化をしろ！　動ける者は皆をヴァルハラへ運ぶぞ！｣

　動ける者数名。
　だがその数名も無傷ではない。

｢リック！　リックは無事か？！｣

｢オーディン様？！　コレは何事ですか？！｣

｢リック、頼む。聖水を頼む！｣

　光神バルドルを失った。
　これからオルガの預言が現実となる。
　早くも雹が降った。フィンブルヴェドが来たのだ。
　戦乱の世が始まるのか？！

｢くそっ！　バルデルスをグラズヘイム神殿へ！｣

｢オーディン様？！　バルデルス様が？！｣

｢リック、バルデルスには最早治療は要らぬ｣

｢ッッ！｣

｢オーディン様！　ヴァナヘイムからヴァン親族が攻めて来ます！｣

｢ヘイムダル！　ワルキューレを呼び出せ！　死兵をよみがえらせよ！｣

｢はいっ！｣

｢皆、迎え撃つぞ！｣