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メイちゃんはうしろむき
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わたしの友達、メイちゃんはうしろむきでした。
小学生のころ、ほかのクラスメイトとあまり打ちとけられなかったわたしに明るく声をかけてくれたのが、メイちゃんでした。休み時間に一人で本を読んでいるわたしがその快活な声に顔を上げてみると、なぜかメイちゃんはうしろを向いていました。そして、うしろを向いたままでわたしとお話してくれました。メイちゃんのお話はとても面白く、わたしはついつい堪えきれずに吹きだしてしまいましたが、そのたびにメイちゃんは嬉しそうに肩を揺らすのです。さらさらの長い黒髪が揺れるたび、ああ、メイちゃんは美人さんだなぁと思いました。
その日から、わたしはメイちゃんと休み時間を一緒に過ごすことが多くなりました。もっとも、本を読んでばかりのわたしにメイちゃんが絶えず声をかけ続けてくれただけなのですが、自分からだれかに声をかけることができないわたしには、そんなメイちゃんのことを尊敬していました。メイちゃんはやっぱり常にうしろむきでしたが、わたしはメイちゃんの後ろ姿がとても好きでした。そして、くつくつと笑うメイちゃんの揺れる黒髪も大好きでした。
無論、メイちゃんはわたしと違って明るく溌剌としているので、わたし以外のお友達もたくさんいました。そしてなぜか、わたし以外の友達といるとき、メイちゃんは前を向いていました。ドッチボールをするときも、給食を食べるときも、掃除をするときも、前を向いていました。それはみんなからするといつものメイちゃんなのかもしれませんが、うしろむきのメイちゃんの揺れる黒髪の美しさを知っているわたしとしては、前を向くメイちゃんの明るい笑顔にどこか翳りを覚えずにはいられませんでした。それはわたしの気のせいだったのかもしれませんが、確信めいた強いなにかがありました。けれども、うしろむきのメイちゃんが前を向こうとしているのですから、友達のわたしとしては応援せねばなるまいと思いました。
その後クラスが離れたり、また一緒になったりしながらも進学し、わたしとメイちゃんは中学生になりました。担任の先生に自己紹介を促されたので、みんな順番に教壇に立って自己紹介をしてゆきました。
メイちゃんの番になりました。さらさらの黒髪を揺らしながら教壇に昇ったメイちゃんは、くるりとみんなに背をむけました。
「よろしくお願いします」
いつもの、明るいメイちゃんの声でした。ところが、教室中がどっと嘲笑に包まれました。
「おい、ちゃんと前を向け。バカにしているのか」
けたけたと鳴る笑い声の中、担任の先生が訝るような目を向けたまま、メイちゃんを嗜めました。肩を落としたように見えたのも束の間、すぐにくるりと前を向き、その溌剌とした太陽のような笑顔をみんなに向けました。
「冗談です」
すると、今度は教室中で安堵のため息と歓迎の拍手が巻き起こりました。照れたように頬を染めるメイちゃんに、担任の先生も顔を綻ばせました。そんな光景を、わたしはとてもおそろしく思いました。なぜかはわかりません。ですが、とてもおそろしく思いました。
わたしの番になりました。おずおずと教壇に昇りましたが、ずらりと並ぶクラスメイトからの視線に足はこわばり、口はガチガチと震えました。ぎゅっと握りこんだ拳は血の流れが滞り、びりびりと痺れてくるのがわかります。わたしは恐怖に戦きました。
そんな中、ふとうつむいていた視線を上げてみると、まん中の席でメイちゃんがくるりと後ろをむいて、そのさらさらの黒髪を揺らしていました。周囲の訝る視線もなんのその、メイちゃんは堂々とうしろむきとなっていました。ああ、いつものメイちゃんだ。その姿を見て、わたしは安堵しました。足のこわばりは消え、口の震えは止まり、解けた拳に血が流れだし、じんじんと熱くなりました。
「よろしく、お願いします」
辿々しくはありましたが、わたしの口から挨拶が飛びだしました。途端、熱くなった眼頭より涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。
霞んでゆく視界のまん中で、うしろむきのメイちゃんはゆらゆらとその黒髪を揺らし続けていました。
あの自己紹介のあとから、メイちゃんはよりうしろむきになりました。小学生のころはわたしの前だけだったのに、授業中にもうしろむきとなりました。先生から注意されると一旦は前を向きますが、しばらくするとやっぱりうしろを向いてしまいます。そのたびに、あの自己紹介の日と同じような嘲笑がまだらに聞こえてくるのですが、そんな輩にどこか見せつけるように、メイちゃんは後ろを向き続けました。
まだらだった嘲笑がまた教室中に広がるまで、あまり時間はかかりませんでした。嘲笑の波がひとつとなって、教室の青い空間を歪めるように唸らせたその日から、メイちゃんはふたたび前を向くようになりました。前を向いたメイちゃんの溌剌とした笑顔は、みんなを笑顔にしました。成績もよく、運動神経もバツグンで、学級委員にまで立候補しました。全校生徒のお手本として、もはや前向きのメイちゃんを知らない人は校内に存在しなくなりました。
それでも、メイちゃんはわたしの前ではうしろむきでした。そのころのメイちゃんは図書室でわたしとふたりきりのときだけ、うしろむきになりました。小学生のころと違って、メイちゃんが前を向いたときの笑顔は、もうひと匙の翳りすらもこぼれぬほどに完璧でしたが、わたしへと向けてはくれませんでした。
ある日、図書室本棚に伸ばしたわたしの手が、男の子の手に触れました。とっさにひっこめましたが、男の子はにっこりとわたしの顔をのぞきこみました。
「この本、すきなの?」
どぎまぎしながら、わたしはうなずきました。
「うれしいな。ぼく、周りに本を読むひとがいなくてさ。よかったら、お友達にならない?」
にこにことした男の子は、ケンと名乗りました。その本をゆずってくれたケンくんは、別の本を借りて図書室を去ってゆきました。
ややあって、メイちゃんがやってきました。わたしがケンくんとのことを話すと、そのとき顔をまっ赤に染めたわたしをおもしろく思ったのか、メイちゃんはうしろむきのままわたしをからかってきました。いつもなら楽しいメイちゃんとのやりとりでしたが、ケンくんとのことをからかわれると、なんだかとってももやもやとしてしまいました。そんなわたしのようすにとまどったメイちゃんは、うしろむきのまま「ごめんね」と謝ってくれました。
その日から、なんだかメイちゃんと一緒にいても、あまり楽しくなくなってしまいました。メイちゃんはうしろむきのまま、これまでのようにわたしに楽しいお話をしてくれましたが、心の底から笑えない自分がいました。そんなわたしに、うしろむきのまま、メイちゃんは綺麗な黒髪をゆらしながら、最後にはかならず「ごめんね」と謝るのでした。
ある雨降りの日、わたしは図書室でケンくんと偶然会いました。どぎまぎしてしまいましたが、今度はすんなりとお話しすることができました。ケンくんとの時間はとっても楽しくて、幸せでした。
「そういえば、あのへんてこりんはどうしたの?」
話のなかで、ケンくんは突然こう言いました。
「へんてこりん?」
「へんてこりんさ。あの、うしろむきの子。最近は妙にかしこまっているけれど、ついこの間までずうっとうしろをむいていたじゃないか。人間、やっぱり前を向かなくちゃ」
このときのわたしは、どうしても二の句が継げませんでした。そしてわたしは、ケンくんとの時間をやっぱり幸せに思い、楽しく過ごしました。
ふと図書室の入り口のほうを見ると、メイちゃんがとびらの陰からこちらを遠慮がちにのぞいていました。それに気づいていながら、わたしはケンくんとお話しを続けて、日が暮れたのでケンくんとそのまま一緒に帰りました。
次の日、メイちゃんが図書室にやってきました。いつものようにうしろむきのまま、メイちゃんはわたしに楽しいお話をしてくれました。
そのとき、ふとわたしはうしろむきのメイちゃんと一緒にいることが、とっても恥ずかしいことのように思えてきました。どんどんよそよそしくなってゆくわたしに、メイちゃんはいつものように楽しいお話を続けて、最後にまた「ごめんね」と謝りました。
そのとき、わたしのなかからなにかがあふれて、はじけとびました。
「一緒に、前を向こうよ」
この言葉がわたしの口からこぼれたとき、メイちゃんの黒髪の揺れがぴたりと止まりました。そうしてから、くるりと前を向いたメイちゃんは、また、
「ごめんね」
と言いました。そのときメイちゃんの浮かべた笑顔は、まるで向日葵のように絢爛で美しく、これまで見たメイちゃんのなかでもっとも綺麗なもののように見えました。
その日、わたしは初めて、前を向いたメイちゃんと夕暮れまでお話ししました。とっても楽しかったけれど、うしろむきのメイちゃんとのお話しのほうが楽しかったことに気がつきました。
そのあと、二人で一緒に帰りました。落日がわたしとメイちゃんの影法師を伸ばしました。途中の分かれ道で、お互いにばいばいと手を振りました。すこし歩いてから、なんとなく気になってふり返ってみると、メイちゃんは満面の笑みを浮かべたまま、ずうっとずうっと、見えなくなるまで、手を振っていました。
次の日、いつものように登校すると、担任の先生からメイちゃんが自殺したことを告げられました。
お葬式で見た、遺影のなかのメイちゃんは、笑ったような顔で前を向いていました。棺のなかのメイちゃんは、薄化粧された顔を前に向けていました。
メイちゃんのお母さんは、泣きながらこう言いました。
「この子は、とっても、前向きな子でした」
大人になったわたしは、今でも、前を向けずにいます。
小学生のころ、ほかのクラスメイトとあまり打ちとけられなかったわたしに明るく声をかけてくれたのが、メイちゃんでした。休み時間に一人で本を読んでいるわたしがその快活な声に顔を上げてみると、なぜかメイちゃんはうしろを向いていました。そして、うしろを向いたままでわたしとお話してくれました。メイちゃんのお話はとても面白く、わたしはついつい堪えきれずに吹きだしてしまいましたが、そのたびにメイちゃんは嬉しそうに肩を揺らすのです。さらさらの長い黒髪が揺れるたび、ああ、メイちゃんは美人さんだなぁと思いました。
その日から、わたしはメイちゃんと休み時間を一緒に過ごすことが多くなりました。もっとも、本を読んでばかりのわたしにメイちゃんが絶えず声をかけ続けてくれただけなのですが、自分からだれかに声をかけることができないわたしには、そんなメイちゃんのことを尊敬していました。メイちゃんはやっぱり常にうしろむきでしたが、わたしはメイちゃんの後ろ姿がとても好きでした。そして、くつくつと笑うメイちゃんの揺れる黒髪も大好きでした。
無論、メイちゃんはわたしと違って明るく溌剌としているので、わたし以外のお友達もたくさんいました。そしてなぜか、わたし以外の友達といるとき、メイちゃんは前を向いていました。ドッチボールをするときも、給食を食べるときも、掃除をするときも、前を向いていました。それはみんなからするといつものメイちゃんなのかもしれませんが、うしろむきのメイちゃんの揺れる黒髪の美しさを知っているわたしとしては、前を向くメイちゃんの明るい笑顔にどこか翳りを覚えずにはいられませんでした。それはわたしの気のせいだったのかもしれませんが、確信めいた強いなにかがありました。けれども、うしろむきのメイちゃんが前を向こうとしているのですから、友達のわたしとしては応援せねばなるまいと思いました。
その後クラスが離れたり、また一緒になったりしながらも進学し、わたしとメイちゃんは中学生になりました。担任の先生に自己紹介を促されたので、みんな順番に教壇に立って自己紹介をしてゆきました。
メイちゃんの番になりました。さらさらの黒髪を揺らしながら教壇に昇ったメイちゃんは、くるりとみんなに背をむけました。
「よろしくお願いします」
いつもの、明るいメイちゃんの声でした。ところが、教室中がどっと嘲笑に包まれました。
「おい、ちゃんと前を向け。バカにしているのか」
けたけたと鳴る笑い声の中、担任の先生が訝るような目を向けたまま、メイちゃんを嗜めました。肩を落としたように見えたのも束の間、すぐにくるりと前を向き、その溌剌とした太陽のような笑顔をみんなに向けました。
「冗談です」
すると、今度は教室中で安堵のため息と歓迎の拍手が巻き起こりました。照れたように頬を染めるメイちゃんに、担任の先生も顔を綻ばせました。そんな光景を、わたしはとてもおそろしく思いました。なぜかはわかりません。ですが、とてもおそろしく思いました。
わたしの番になりました。おずおずと教壇に昇りましたが、ずらりと並ぶクラスメイトからの視線に足はこわばり、口はガチガチと震えました。ぎゅっと握りこんだ拳は血の流れが滞り、びりびりと痺れてくるのがわかります。わたしは恐怖に戦きました。
そんな中、ふとうつむいていた視線を上げてみると、まん中の席でメイちゃんがくるりと後ろをむいて、そのさらさらの黒髪を揺らしていました。周囲の訝る視線もなんのその、メイちゃんは堂々とうしろむきとなっていました。ああ、いつものメイちゃんだ。その姿を見て、わたしは安堵しました。足のこわばりは消え、口の震えは止まり、解けた拳に血が流れだし、じんじんと熱くなりました。
「よろしく、お願いします」
辿々しくはありましたが、わたしの口から挨拶が飛びだしました。途端、熱くなった眼頭より涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。
霞んでゆく視界のまん中で、うしろむきのメイちゃんはゆらゆらとその黒髪を揺らし続けていました。
あの自己紹介のあとから、メイちゃんはよりうしろむきになりました。小学生のころはわたしの前だけだったのに、授業中にもうしろむきとなりました。先生から注意されると一旦は前を向きますが、しばらくするとやっぱりうしろを向いてしまいます。そのたびに、あの自己紹介の日と同じような嘲笑がまだらに聞こえてくるのですが、そんな輩にどこか見せつけるように、メイちゃんは後ろを向き続けました。
まだらだった嘲笑がまた教室中に広がるまで、あまり時間はかかりませんでした。嘲笑の波がひとつとなって、教室の青い空間を歪めるように唸らせたその日から、メイちゃんはふたたび前を向くようになりました。前を向いたメイちゃんの溌剌とした笑顔は、みんなを笑顔にしました。成績もよく、運動神経もバツグンで、学級委員にまで立候補しました。全校生徒のお手本として、もはや前向きのメイちゃんを知らない人は校内に存在しなくなりました。
それでも、メイちゃんはわたしの前ではうしろむきでした。そのころのメイちゃんは図書室でわたしとふたりきりのときだけ、うしろむきになりました。小学生のころと違って、メイちゃんが前を向いたときの笑顔は、もうひと匙の翳りすらもこぼれぬほどに完璧でしたが、わたしへと向けてはくれませんでした。
ある日、図書室本棚に伸ばしたわたしの手が、男の子の手に触れました。とっさにひっこめましたが、男の子はにっこりとわたしの顔をのぞきこみました。
「この本、すきなの?」
どぎまぎしながら、わたしはうなずきました。
「うれしいな。ぼく、周りに本を読むひとがいなくてさ。よかったら、お友達にならない?」
にこにことした男の子は、ケンと名乗りました。その本をゆずってくれたケンくんは、別の本を借りて図書室を去ってゆきました。
ややあって、メイちゃんがやってきました。わたしがケンくんとのことを話すと、そのとき顔をまっ赤に染めたわたしをおもしろく思ったのか、メイちゃんはうしろむきのままわたしをからかってきました。いつもなら楽しいメイちゃんとのやりとりでしたが、ケンくんとのことをからかわれると、なんだかとってももやもやとしてしまいました。そんなわたしのようすにとまどったメイちゃんは、うしろむきのまま「ごめんね」と謝ってくれました。
その日から、なんだかメイちゃんと一緒にいても、あまり楽しくなくなってしまいました。メイちゃんはうしろむきのまま、これまでのようにわたしに楽しいお話をしてくれましたが、心の底から笑えない自分がいました。そんなわたしに、うしろむきのまま、メイちゃんは綺麗な黒髪をゆらしながら、最後にはかならず「ごめんね」と謝るのでした。
ある雨降りの日、わたしは図書室でケンくんと偶然会いました。どぎまぎしてしまいましたが、今度はすんなりとお話しすることができました。ケンくんとの時間はとっても楽しくて、幸せでした。
「そういえば、あのへんてこりんはどうしたの?」
話のなかで、ケンくんは突然こう言いました。
「へんてこりん?」
「へんてこりんさ。あの、うしろむきの子。最近は妙にかしこまっているけれど、ついこの間までずうっとうしろをむいていたじゃないか。人間、やっぱり前を向かなくちゃ」
このときのわたしは、どうしても二の句が継げませんでした。そしてわたしは、ケンくんとの時間をやっぱり幸せに思い、楽しく過ごしました。
ふと図書室の入り口のほうを見ると、メイちゃんがとびらの陰からこちらを遠慮がちにのぞいていました。それに気づいていながら、わたしはケンくんとお話しを続けて、日が暮れたのでケンくんとそのまま一緒に帰りました。
次の日、メイちゃんが図書室にやってきました。いつものようにうしろむきのまま、メイちゃんはわたしに楽しいお話をしてくれました。
そのとき、ふとわたしはうしろむきのメイちゃんと一緒にいることが、とっても恥ずかしいことのように思えてきました。どんどんよそよそしくなってゆくわたしに、メイちゃんはいつものように楽しいお話を続けて、最後にまた「ごめんね」と謝りました。
そのとき、わたしのなかからなにかがあふれて、はじけとびました。
「一緒に、前を向こうよ」
この言葉がわたしの口からこぼれたとき、メイちゃんの黒髪の揺れがぴたりと止まりました。そうしてから、くるりと前を向いたメイちゃんは、また、
「ごめんね」
と言いました。そのときメイちゃんの浮かべた笑顔は、まるで向日葵のように絢爛で美しく、これまで見たメイちゃんのなかでもっとも綺麗なもののように見えました。
その日、わたしは初めて、前を向いたメイちゃんと夕暮れまでお話ししました。とっても楽しかったけれど、うしろむきのメイちゃんとのお話しのほうが楽しかったことに気がつきました。
そのあと、二人で一緒に帰りました。落日がわたしとメイちゃんの影法師を伸ばしました。途中の分かれ道で、お互いにばいばいと手を振りました。すこし歩いてから、なんとなく気になってふり返ってみると、メイちゃんは満面の笑みを浮かべたまま、ずうっとずうっと、見えなくなるまで、手を振っていました。
次の日、いつものように登校すると、担任の先生からメイちゃんが自殺したことを告げられました。
お葬式で見た、遺影のなかのメイちゃんは、笑ったような顔で前を向いていました。棺のなかのメイちゃんは、薄化粧された顔を前に向けていました。
メイちゃんのお母さんは、泣きながらこう言いました。
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