リフェルトの花に誓う

おきょう

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8-④

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幼馴染だと駄目で、婚約者だと良いのか。
その線引きがよく分からないが、部屋に控えている医師や助手の女性たちもなんだかとても微笑ましいものを見るような目をしてロザリアを見ている。

「婚約者、ですもの。当たり前です」
「えぇ。セイン王子も心強いでしょう」
「頑張ってください!」

どうして応援されるのか。
しかも皆で寄ってたかって意味ありげな喜色に満ちた笑みを向けてくる。

(や、やめて欲しい。居心地が悪るすぎるわ。いくら婚約者になったって、そんな目でみられるような甘い間柄じゃないのに)

ロザリアとセインは犬猿の仲。…だと誰が認めてくれなくてもロザリアは思っている。
10年以上続いたこの関係が簡単に甘いものに変わるはずもない。

ロザリアは周囲からくるいたたまない空気から、思わず視線をそらしてしまう。
すると1人アーサーだけが何だか不満そうな顔をしているのが目に入った。
しかもどうしてか彼は後ろからグロウに口元を押さえられつつ羽交い絞めにされている。

「もっ…ごごごご……!!!」
「…あの?」
「あー、お気に為さらずに。煩い小姑はこちらで処置しますんで」
「無理よ。気になるに決まっているわ」

彼らの主がこんな状態のときに、何をじゃれついて遊んでいるのか。
さすがに勘に障って、文句を言おうと思ったけれど、その前にミシャがロザリアの手を引いて振り向かせる。

「その前にロザリア様、お着替えを致しましょうか」
「あ、そうね」

ミシャに言われて自身を見下ろしてみると、煌びやかな衣装のままだった。
大ぶりなアメジストのジュエリーも、ボリュームのありすぎるドレスも、どう考えてもさすがに病人についているにはそぐわない。

「では一度部屋に戻りましょう。先生、セインのことをどうぞ宜しくお願いいたします」
「かしこまりました」

医師が頷くのを確認してから、ロザリアは未だに何やらもみ合っているグロウとアーサーへ目を向ける。

「あの。グロウもアーサーも、本当にごめんなさい」
「……?王女?」

ロザリアの突然の謝罪に、アーサーはグロウとの揉み合いを中断し、驚いた様子でロザリアへと向かい合う。
頼りなくても、子供っぽくても、ロザリアは王女・・だ。
そんな最高位にいる人間に意味もわからず頭を下げられてしまっても困るのだろう。

「ニーチェ国の王子である方をこのように命の危機に去らせてしまったこと、全てロイテンフェルトの責任です。本国への謝罪と報告は速やかにお送りし、相応のお詫びもいたします」
「っ…なんか、すっげぇまともな対応っすね」
「う、む…」



アーサーが銀縁の眼鏡を押し上げながら息を吐く。

(これでは本当にまともな王女ではないか)

事前の情報でも、それまでアーサーが目にした部分でも、ロザリア王女は頭の足らない馬鹿王女だった。
甘やかされて緊張感のない騒々しいだけの彼女の周囲が苛立たしくてしかたがなかった。
なのに先ほど招待客に見せた対応といい、今の謝罪といい、…まったく予想外だ。

有事の時にはきちんと立てる。
そんな彼女を目の前で見せられてしまった。
甘やかされて育てられたその辺の姫君なら、泣いて引きこもってしまっても仕方がなかったのに。
認めたくは無いけれど、王位に立つための最低限の心づもりは持っているらしい。

「顔を上げて下さい、あなたのこともロイテンフェルトに対しても責めるつもりはありません」
「そうそう、別に命に別状は無いんですし。国の方にも我々からきちんと説明しておきますから大丈夫ですよぅ」
「本当…?」

不安そうに上目使いで見上げられてしまっては、もう責めることなんてできない。
毒薬については、セインを苦しめた犯人の方を恨むことにした。

「今回の件については、の話です!私はあなたが王子の伴侶だなんて認めません!」
「はっ?えっ…と?」
「あー。お気になさらず。この人、縁談に反対派なもので…」
「そうだったの?!」
「そうです!あなたの様な粗野な人間、ぜっったいにセイン王子には相応しくありませんから!」

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