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12-⑤
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「でもこの作戦、王子様の案だぜ?姫様とセイン王子の婚約話が出た半年前くらいに俺宛に指示が出たんだし」
「はっ?」
「姫様の婚約って話が流れればあの人が動くって予想して、事前に作戦立ててたんだ。直前に動いても警戒されるから半年かけて徐々に信頼を得て行ったってわけ。おかげで今みたいな重要拠点も任せられるくらいの奴の右腕的立場にまで出世した。さすが俺!」
「彼の簡単に相手の懐に滑り込める技量は買っていたからな。一番に敵方へ接触するように仕向けてもらった」
「……私、本当に蚊帳の外だったのね」
婚約の話も、自分の騎士が何をしていたかも、セインが動いていたことも。
半年以上前からすべては動いていたのに、ロザリアは何一つ知らなかった。
知らないままに守られて、知らない間に全てが終わっている。
その全てがロザリアにかかわることなのに。
守られてばかりで、本当に何も出来ない王女なだと、ロザリアは本気で痛感した。
「そんなに頼りない?……ううん、分かってる。私は王家の血を持ってる跡継ぎだから大事にしてもらえてるだけなのよね。私自身は全然だめだめで、守ってもらうような価値もないのに」
「……ロザリアがするべきことが、俺たちのするべきことと違うだけだ」
「意味が分からない」
肩を落として項垂れるロザリアの頭に、ジンの大きな手が載せられた。
そして彼の大きな手に乱雑に撫でられる。
「あんなに国民に好かれて、活気ある城下町を作ってんのは姫様の力」
「……?」
首をかしげるロザリアを見てジンの言うことをまったく理解していないと悟ったセインが、面倒臭そうに説明した。
「民の支持を集めるのによその国の王族たちがどれほどの苦労をしているか分かって言っているのか。ロイテンフェルトが大規模な反乱や反旗の心配なしでいられるのはロザリアが頑張ってるからだ」
「私、何もしていないわ」
「あれだけ民と気軽に仲良く出来る王女がどこにいる。流行り病や情勢の悪化などで人が不安定になるたびに毎日のように通って手を握って。あんなに目に見える民と同じ場所で民に尽くす王女なんて、俺は今のところ1人しか知らない」
「………あれは…だって…そんな大層なものじゃないわ」
ロザリアには頭を使った政務なんてとても出来ないから、せめて泣いている人が居れば元気になる手伝いをしたいと思っただけ。
王女なのにそんな小さくて誰にでも出来ることしか出来ない自分が、恥ずかしくて仕方がないのに。
(なのに、セインが褒めるようなことを言ってる)
いつだってロザリアを否定してばかりの彼が、ロザリアのそんなところを認めているなんて思ったこともなかった。
なんだか恥ずかしなって、俯いて思いっきり過振りを振る。
「ロザリア?」
「おい、姫様ー?」
呼びかけにぱっと顔を上げてから、ロザリアは自分の手を握りこんで意気込んだ。
「私、頑張るから!少しくらい政務も出来るように勉強するわ!」
王女としての自信が、ロザリアにはかけらも無かった。
けれど認めてくれる人がいた。それがセインと、ジンだった。
嬉しくて、だったらもっと頑張ろうと張り切るロザリアにセインは眉をひそめてゆるゆると首を振る。
「………いや、別にいい。変に張り切られても面倒事に発展しそうだ」
「な、なにそれ!」
ロザリアが声を上げて反論する。
それに対してセインはきっとまた意地悪なこというのだろうと思った。
けれど彼の身体はふらりと傾き、ロザリアを頼るようにロザリアの背に手を回すのだった。
「セイン!」
「あー…さすがに限界だな。馬で帰るのは無理か。おい!馬車の用意してくれー。あと屋敷内へ横になれる場所したくして」
ジンが敵方の男たちへ縄をかけていた騎士に命じる。
「…ジンがいるのに、どうしてこんなになってまで駆け付けたわけ?」
味方であるジンや、ほかにも騎士が潜入してるとセインは知っていた…と言うか彼らを指揮をしたのがセインだ。
ロザリアを護る騎士たちが側についていると分かっていたのに、どうしてこんな状態の身体でわざわざ出てきたのだ。
訪ねてみたけれど、ロザリアに支えられながらも彼はそっぽを向いてしまう。
それを見たジンが思わずと言った風に吹き出す。
「居ても立ってもいられなかったんだろ。その辺の男心にはやっぱり鈍いんだよなー」
「えーっと…すっごく心配してくれたってこと?」
「そうそう。すっごくすっごく心配だったんだよ」
「…………」
ロザリアは思わずセインの顔を凝視する。
青みを帯びていた顔に朱が走っているように見えるのは、たぶん気のせいじゃない。
「ジンの話、本当?」
でも素直じゃない王子様は、予想通り答えてはくれなかった。
「はっ?」
「姫様の婚約って話が流れればあの人が動くって予想して、事前に作戦立ててたんだ。直前に動いても警戒されるから半年かけて徐々に信頼を得て行ったってわけ。おかげで今みたいな重要拠点も任せられるくらいの奴の右腕的立場にまで出世した。さすが俺!」
「彼の簡単に相手の懐に滑り込める技量は買っていたからな。一番に敵方へ接触するように仕向けてもらった」
「……私、本当に蚊帳の外だったのね」
婚約の話も、自分の騎士が何をしていたかも、セインが動いていたことも。
半年以上前からすべては動いていたのに、ロザリアは何一つ知らなかった。
知らないままに守られて、知らない間に全てが終わっている。
その全てがロザリアにかかわることなのに。
守られてばかりで、本当に何も出来ない王女なだと、ロザリアは本気で痛感した。
「そんなに頼りない?……ううん、分かってる。私は王家の血を持ってる跡継ぎだから大事にしてもらえてるだけなのよね。私自身は全然だめだめで、守ってもらうような価値もないのに」
「……ロザリアがするべきことが、俺たちのするべきことと違うだけだ」
「意味が分からない」
肩を落として項垂れるロザリアの頭に、ジンの大きな手が載せられた。
そして彼の大きな手に乱雑に撫でられる。
「あんなに国民に好かれて、活気ある城下町を作ってんのは姫様の力」
「……?」
首をかしげるロザリアを見てジンの言うことをまったく理解していないと悟ったセインが、面倒臭そうに説明した。
「民の支持を集めるのによその国の王族たちがどれほどの苦労をしているか分かって言っているのか。ロイテンフェルトが大規模な反乱や反旗の心配なしでいられるのはロザリアが頑張ってるからだ」
「私、何もしていないわ」
「あれだけ民と気軽に仲良く出来る王女がどこにいる。流行り病や情勢の悪化などで人が不安定になるたびに毎日のように通って手を握って。あんなに目に見える民と同じ場所で民に尽くす王女なんて、俺は今のところ1人しか知らない」
「………あれは…だって…そんな大層なものじゃないわ」
ロザリアには頭を使った政務なんてとても出来ないから、せめて泣いている人が居れば元気になる手伝いをしたいと思っただけ。
王女なのにそんな小さくて誰にでも出来ることしか出来ない自分が、恥ずかしくて仕方がないのに。
(なのに、セインが褒めるようなことを言ってる)
いつだってロザリアを否定してばかりの彼が、ロザリアのそんなところを認めているなんて思ったこともなかった。
なんだか恥ずかしなって、俯いて思いっきり過振りを振る。
「ロザリア?」
「おい、姫様ー?」
呼びかけにぱっと顔を上げてから、ロザリアは自分の手を握りこんで意気込んだ。
「私、頑張るから!少しくらい政務も出来るように勉強するわ!」
王女としての自信が、ロザリアにはかけらも無かった。
けれど認めてくれる人がいた。それがセインと、ジンだった。
嬉しくて、だったらもっと頑張ろうと張り切るロザリアにセインは眉をひそめてゆるゆると首を振る。
「………いや、別にいい。変に張り切られても面倒事に発展しそうだ」
「な、なにそれ!」
ロザリアが声を上げて反論する。
それに対してセインはきっとまた意地悪なこというのだろうと思った。
けれど彼の身体はふらりと傾き、ロザリアを頼るようにロザリアの背に手を回すのだった。
「セイン!」
「あー…さすがに限界だな。馬で帰るのは無理か。おい!馬車の用意してくれー。あと屋敷内へ横になれる場所したくして」
ジンが敵方の男たちへ縄をかけていた騎士に命じる。
「…ジンがいるのに、どうしてこんなになってまで駆け付けたわけ?」
味方であるジンや、ほかにも騎士が潜入してるとセインは知っていた…と言うか彼らを指揮をしたのがセインだ。
ロザリアを護る騎士たちが側についていると分かっていたのに、どうしてこんな状態の身体でわざわざ出てきたのだ。
訪ねてみたけれど、ロザリアに支えられながらも彼はそっぽを向いてしまう。
それを見たジンが思わずと言った風に吹き出す。
「居ても立ってもいられなかったんだろ。その辺の男心にはやっぱり鈍いんだよなー」
「えーっと…すっごく心配してくれたってこと?」
「そうそう。すっごくすっごく心配だったんだよ」
「…………」
ロザリアは思わずセインの顔を凝視する。
青みを帯びていた顔に朱が走っているように見えるのは、たぶん気のせいじゃない。
「ジンの話、本当?」
でも素直じゃない王子様は、予想通り答えてはくれなかった。
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