【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺

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一年目 ~学園編~

束の間の息抜き

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 レオンの屋敷に招かれたのは冬期休暇の直前だった。
 休暇で領地に戻る前にと誘われ、断るのもおかしかったので招待を受ける。
 婚約解消をされたことはまだ誰にも言っていない。
 自分の感情を整理するのでいっぱいいっぱいだった。
 レオンもあれから何も聞いてこない。
 エドガーと過ごすレイチェルを見かけた際に物言いたげな視線をされたが、黙殺した。
 彼女たちのことは来期になり俺がいなくなれば自ずと広まることだ。
 いよいよ学園を去ることになれば挨拶をしないわけにはいかない。黙っていたことをレオンは怒るだろうか。
 何もないように振る舞う自分を滑稽だとも思うが、口にして腫れ物に触るような扱いを受けるのも嫌だった。
 そんな中レオンの招待を受けたのは一人で寮にいると悪いことばかり考えてしまうからだ。
 気分転換との思いもあるのだろうとありがたく招待に応じた。





「アラン様!
 ようこそおいでくださいました!」

 ぱっと顔を輝かせて出迎えてくれたのはレオンの妹のクリスティーヌ様。
 嬉しそうな笑顔で歓迎を表してくれるクリスティーヌ様に俺も笑顔を返す。
 俺とレオンの2つ年下のクリスティーヌ様は喰えない性格をしているレオンと違い素直で可愛らしい子だ。
 兄の友人として度々訪れているせいか、いつも歓迎してくれて時間が合えばレオンと共に学園の話などをすることも多い。
 来年入学でもある彼女は早く俺やレオンと学園に通うのが楽しみだと言っていた。

「これ、入学祝に」

 俺が試験に合格したときにもレオンやクリスティーヌ様がこうして招いてお祝いしてくれた。
 その時にクリスティーヌ様からは彼女が使っている物と同じノートをプレゼントとしてもらっている。
 なめらかな紙はとても書きやすくて大切な内容のまとめにだけ使っている。日々の雑記に使うのはもったいなすぎて。
 俺がやすやすと買えるような品でもないし。

「ありがとうございます!」

 お祝いにということで街で人気の菓子を買ってきた。
 近しい間柄であれば学園で使えるような品を送るのが一般的だけど、兄の友人でしかない俺がそういった残る品を贈るのは迷惑になる可能性もある。
 あまり貧相な物を贈るわけにはいかないし、これから婚約者だって出てくるだろう彼女相手に下手な物は贈れない。
 素直に喜んでくれるクリスティーヌ様に微笑ましい気分になる。
 お茶の時に一緒に食べましょうねと言われて微笑む。レオンがクリスティーヌ様を可愛がるのもわかるな。
 レオンはあからさまに態度には出さないけれど妹を見る目はいつも穏やかで温かい。
 丁度降りてきたレオンが俺たちを見て渋面を作る。

「クリスティーヌ、アランが来たらすぐ呼べと言っただろう」

 レオンの文句にちょっと話していただけよとクリスティーヌ様が唇を尖らせる。

「お兄様は学園でも一緒ではありませんか、少しくらいお話ししたっていいでしょう」

「話をするのはいいが何もエントランスでなくてもいいだろう」

 後で呼ぶから部屋に戻ってろと手を振るレオンに一瞬むっとした顔を見せたクリスティーヌ様だがの前であることを思い出したのか気を取り直して微笑みを浮かべた。

「アラン様、お祝いありがとうございます。
 お茶のときにはぜひ学園のお話を聞かせてくださいね」

 入学への期待に満ちた目に見つめられて寸暇言葉につまる。
 もちろんですと返す俺をレオンの目がじっと見つめていた。


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