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二年目 ~領地編~
贋金
しおりを挟む購入した衣装を馬車で運び屋敷に戻る。
馬車の中で気になっていたことを確かめて確信を得た。
早く伝えないと。
逸る気持ちでクレイルさんを探すと丁度執務室にいた。
「アラン、私を探していたようですが、何かありましたか?」
「クレイルさん、こちらを見ていただけますか。
服飾店で品物を購入した際にたまたま釣り銭でいただいたのですが」
そう言って半金貨を机の上に置く。
「これがどうか……」
半金貨を手にしたクレイルさんの言葉が止まった。
表、裏と返しながら重さを量るように手を上下させる。
「今日行った服飾店でこれを?」
「ええ、店主の話では早めの避暑に来た方がドレスを求めるときに2枚の半金貨で支払っていったと言っていました。
勝手なこととは思いましたが、その店にあった半金貨は全て両替してもらい持って帰っています」
「そうでしたか……」
勝手をして申し訳ありませんと謝るとクレイルさんは首を振った。
「いえ、それは良い判断でした。
しかし……」
硬貨の表面をなぞり、思案していたクレイルさんが口を開く。
「アラン、明日から領内の店を回り調査をお願いします。
たまたまならまだ良いのですが、その客の支払い方からしても偶然でない可能性があります。
半金貨を使用していることから狙うとしたら一定以上の高級店でしょう。
対象となる店は私の方でまとめておきますので、行って同様の半金貨での支払いを受けた店がないか確認してください」
険しい顔で命じるクレイルさんも俺と同じ危機感を抱いているようだった。
「承知しました。
見つけたら全て回収でよろしいでしょうか?」
「ええ、よろしく頼みます」
これ以上の流通は避けなければならない。
店側には現段階で事情は説明できないので両替という形で回収をするのがいいだろう。
他所へ流れることだけは止めないと。
流通の証拠が掴めた時点で侯爵へ報告する、それまで他言無用だとも命じられ頷く。
「それにしてもこの侯爵領内で贋金だなど……」
クレイルさんが厳しい顔で呟いた。
机に置いた2枚の半金貨。
白みを帯びた金色は柔らかに太陽の光を反射し、彫られた刻印を浮かび上がらせる。
丸い硬貨の表側、左右から下へ弧を描くように施された蔦模様は本物と違わぬ緻密さに見える。
しかし本来ならこの蔦模様は中央に据えられた神樹の根と絡み合っているデザインなのだが、ここにある半金貨はどちらも蔦だけが絡み神樹とは繋がっていない。それが光に当てるとよくわかった。
重さも微妙に違う。
この半金貨が贋物であることの証左だった。
軽々しく話せる内容ではない。
今日同行していた女性使用人は支払いの時は馬車に戻っていたため、このことを知るのは俺とクレイルさんのみ。
誰かに気づかれ口の端に上る前に早く突き止めなければならない。
贋金は重罪だ。侯爵家の領内でばら撒かれているとなれば侯爵家もただでは済まない。
早急に調べを進め対策をしないと大変なことになる。
明日の調査で他の店にも贋金が回っていることが確認されれば、人員を増やしてどこから入ってきたかの捜査を始めることになる。
偶然であれば良いが……。
これが侯爵家を貶める策略などであれば許せない。
贋金が流通しているというだけでも侯爵家にとって重い悪評だが、万が一侯爵家で贋金を作りばら撒いているなどと取られ処罰されるようなことになれば、ただではすまない。
恩人であり大切な友人たちに及びかねない影響は排除しなければ。
絶対に犯人を突き止める。
固く誓う俺に気負い過ぎないようにと忠告するクレイルさんも同じような顔をしていた。
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