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三年目 ~再びの学園生活編~
ロレイン様の祝福
しおりを挟む夏季休暇明けの学園は驚きや好奇心で覆われていた。
幾人かの学生がいなくなったことやそれが贋金という重大犯罪に関わっていたことで学園の噂は持ち切りで。
学園としても校内で取り引きが行われていたことの対応などで混乱しているようだった。
侯爵家が摘発を行ったため俺やクリスティーヌ様にも注目が集まり、俺は捌くのに苦労している。
級友たちがそういった人たちを遠ざけようとしてくれるのがありがたい。
クリスティーヌ様にはもう少し控えめなようで、そちらはロレイン様が近くにいることで回避が叶っているそうで。
さすがに侯爵令嬢二人が仲良く話しているところに割って入れる者はそういないようだった。
「おめでとうございます」
講義の終わりに噂の仔細を聞きたい学生に捕まり、迎えに来るのが少し遅れた教室。
ロレイン様に開口一番おめでとうございますと言われて目を白黒させる。
クリスティーヌ様とのこと、と小さく落とされた声に思わず教室の外を確認してしまう。
誰もいないことを確認してロレイン様に向き直る。
「ええと?」
「侯爵がお認めになったそうじゃありませんか、ですからおめでとうございますと」
状況が飲み込めない俺にロレイン様がもう一度同じ言葉を詳しく述べる。
クリスティーヌ様を見ると顔を朱に染めている。俺が来るまで何の話をしていたのかそれでわかった。
我に返ってお礼を述べ、問いを返す。
「ありがとうございます、驚かれてはいないのですね」
「驚いてはいますわ、けれどそれよりも片恋に泣いていた友人が幸せ一杯の顔でお父様に婚約を許してもらえたと報告してくれたのですもの。
その喜びの方が大きかったのです」
急展開に驚いていますけれどねと悪戯な笑みを見せるロレイン様に戸惑いつつ笑みを浮かべる。
そこまで聞いていたのかと驚くと共にそこまで相談できる友人がいることを喜ばしく思う。
「本当にアラン様には驚かされますね、ほんの少し前にはクリスティーヌ様が叶わぬ恋だと頬を濡らすほどに立場が違いましたのに。
贋金事件でも大活躍だったと聞きましたよ。
その功績を以てクリスティーヌ様とのことを認められたのかしら?」
「それはわかりませんが、その功績を以て認めていただくつもりでしたし、不足があればどのようなことをしてもそれを埋めるつもりでした」
俺の返事に驚きを浮かべた後、ロレイン様は口元を緩めクリスティーヌ様へ良かったわねと囁く。
「本当に良かったわね。
アラン様がこんなに情熱的な方だなんて驚きました。
私も婚約者に会いたくなってきてしまったわ」
あてられてしまうわと笑いを含んだ声で言うロレイン様にはにかんだ笑顔を見せるクリスティーヌ様。その表情に俺も照れてしまう。
「ロレイン様の婚約者は同じ南方の方でしたね」
話を逸らすようにクリスティーヌ様がロレイン様の婚約者のことに触れる。
「ええ、ひとつも学年の重ならない歳で残念だったわ」
ロレイン様の婚約者はもう卒業しているらしく残念そうに息を吐く。
いつか紹介させてくださいねと話を締めてロレイン様は教室を出て行った。
二人きりになって向けた視線がぱちっと合ってお互いに目を逸らしてしまう。
さっきまで普通にできていたのに、急になんか……。
気恥ずかしい雰囲気が漂って顔が見づらい。
それはクリスティーヌ様も同じなようで、伏せた頬が薄赤く染まっていた。
「俺たちも、戻りましょうか?」
「そうね。
ああ、そうだわ。 近く教授が時間を取ってくれないかって言っていたの」
早い方が良いと伝言を受けてクリスティーヌ様と予定を話し合う。
俺も学園内での贋金の捜査が終わり少し時間に余裕ができたため、放課後であればいつでも構わない。
休日はまだまだ事件の処理の終わらないのでそちらに時間を割く必要があった。
もうしばらくしたら侯爵様も捕らえた人や伯爵家で押収した証拠と共に王都に来るだろうし、今のうちに片づけられるところはやっておかないと。
それに――……。
ちらりと視線を向けるとクリスティーヌ様がどうしたのと不思議そうな顔をする。
「いえ、侯爵様にどうご挨拶をしたらいいのかと……」
急激に緊張してきた。
クリスティーヌ様とのことを認めてくださったお礼を改めてお伝えしないとと思ったら落ち着かない。
そう零すとクリスティーヌ様がおかしそうに声を立てて笑う。
「いつも通りでいいのに」
「そうはわかっているんですが……」
「本当にアランのことをお願いしたとき二つ返事だったのよ? 何も心配いらないわ」
笑顔で請け負うクリスティーヌ様に少し緊張がほぐれる。
今から気にしすぎていてもしかたない。
ただ心からの感謝を伝えるだけだ。
想いをそのまま口にすればいい。
クリスティーヌ様を見つめると穏やかに微笑んで俺を見ていた。
「どうしたの?」
「いえ、ただ早くその時がくればいいと思いまして」
誰に憚ることもなくクリスティーヌ様の隣に立てる日が、言葉で想いを伝えることを許される日が早く来ればいい。
嬉しそうに表情を緩ませたクリスティーヌ様と並んで寮へ戻る。
寮に入って行く彼女がこちらを振り向き小さく手を振る。そんな些細なことすら幸せに感じた。
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