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15 王都
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王都―――。
遠目から見てもその大きさと華やかさがわかった。
幼い頃の記憶よりも遥かに大きい。
近づいて行く王都に感嘆よりも不安が勝った。
こんな大きな都で本当に弟を見つけられるのか。
微かに過った言葉を決意に置き換えてソフィアを見つめる。
必ず見つけ出す。
誓いを胸に門へ向かう。
門を通ろうとしたときこちらを見て兵士の一人が声を上げた。
「ソフィア! 久しぶりだな!」
「アレックス! 久しぶりね」
親しそうに言葉を交わす二人。
邪魔しないように少し離れたところで二人を見守っていると、兵士がアルフレッドをちらりと見た。
その目に隠しきれない敵意があるのに気付き、ひっそりとため息を吐く。
どうやら兵士はソフィアに特別な感情を寄せているらしい。
兵士の視線を受けてソフィアがアルフレッドを振り返る。
「アルフレッド、ごめんなさい。 懐かしい顔を見つけて驚いちゃった」
懐かしい顔というなら恋人ではありえないな、と心の中で思う。
もちろんそんなことはおくびにも出さずに笑顔で挨拶を交わす。
「友人を見つけたら当然だよ。
始めまして、アルフレッドと言います。
ソフィアとは仕事で知り合ったんだ。 色々と世話になってる」
仕事、と聞いてアレックスの目が恋敵を警戒するものから単なる他人を見るものへ変わる。
仕事仲間だからって油断しちゃいけないと思うんだけど。
「そうか、俺はアレックス。
ソフィアとは子供の頃からの付き合いだ。 ま、いわゆる幼馴染みというやつだな」
「そうなんだ、そんな幼い頃からの友人と街に入るなり再会できるなんて良かったね」
ソフィアに向かって笑いかける。
友人という言葉を二度も言われたアレックスは不快そうに鼻を鳴らした。
「家に帰るんだろう? 久しぶりに俺も顔を出していいか」
「悪いけれど立て込んでるから時間が取れないと思うわ」
アレックスがアルフレッドを見る。そいつは連れて行くのにという不満が見えるようだ。
「何かあったのか? 力になるから遠慮せずに言ってくれ」
「そんな大げさなものじゃないの、気にしないで」
「そんなこと言うなよ、大切な幼馴染みが困ってるなら手を貸すのは当然だ」
ソフィアは少し考える素振りをしてアレックスを見上げた。
「あまり大きな事にはしたくないんだけれどね…。
実はアルフレッドの弟さんが行方不明になっちゃってね。
王都に向かったという話があったからそれらしき人を見つけたら教えてくれないかしら?」
「弟?」
アレックスの目がアルフレッドに向く。
「容姿はアルフレッドと同じ色の髪と目で、背は少し低いかしら?」
「そうだな、俺よりも頭半分くらいは低い」
デリクはあまり家から出ず運動もしなかったから色白で少し太めの体型をしている。
特徴を伝えてアレックスに頭を下げる。
「申し訳ないがもし巡回の途中にでも見かけたら教えてくれないか?」
アレックスは家出人の捜索か、と呟いて力強く頷いてくれた。
「わかった、同僚にも声を掛けておくから。
もし手掛かりを得られたらソフィアの家に報告に行くよ」
ちゃらっと先程断られたソフィアの家に行くこと盛り込んで請け合う。
ありがとう、と笑うソフィアも気づかなかったように流した。
王都に入ってアレックスから離れたところでソフィアにさっきのことを聞く。
「ソフィア、どうして盗みに遭った事を話さなかったんだ?」
アレックスのさっきの様子なら何を置いても探してくれそうな気がするのに。
「アレックスは融通が利かないから弟さんを見つけたらその場で逮捕、連行して大事にしちゃうと思うの」
人探しなら見つけても大事には出来ない。
家出人だとしても帰るかどうかは本人の意思次第なので見つけて家族に知らせるくらいしかないだろう。
保護が必要な幼い子供というわけでもないし。
「ありがとう…」
弟の立場を慮ってくれるソフィアに言葉しか返せない。
ソフィアは困ったように笑った。
「じゃあ、私の家に行きましょうか。
何か情報が聞けると良いわね」
王都の中心に向かって歩く。
緊張しながらソフィアの家に向かった。
遠目から見てもその大きさと華やかさがわかった。
幼い頃の記憶よりも遥かに大きい。
近づいて行く王都に感嘆よりも不安が勝った。
こんな大きな都で本当に弟を見つけられるのか。
微かに過った言葉を決意に置き換えてソフィアを見つめる。
必ず見つけ出す。
誓いを胸に門へ向かう。
門を通ろうとしたときこちらを見て兵士の一人が声を上げた。
「ソフィア! 久しぶりだな!」
「アレックス! 久しぶりね」
親しそうに言葉を交わす二人。
邪魔しないように少し離れたところで二人を見守っていると、兵士がアルフレッドをちらりと見た。
その目に隠しきれない敵意があるのに気付き、ひっそりとため息を吐く。
どうやら兵士はソフィアに特別な感情を寄せているらしい。
兵士の視線を受けてソフィアがアルフレッドを振り返る。
「アルフレッド、ごめんなさい。 懐かしい顔を見つけて驚いちゃった」
懐かしい顔というなら恋人ではありえないな、と心の中で思う。
もちろんそんなことはおくびにも出さずに笑顔で挨拶を交わす。
「友人を見つけたら当然だよ。
始めまして、アルフレッドと言います。
ソフィアとは仕事で知り合ったんだ。 色々と世話になってる」
仕事、と聞いてアレックスの目が恋敵を警戒するものから単なる他人を見るものへ変わる。
仕事仲間だからって油断しちゃいけないと思うんだけど。
「そうか、俺はアレックス。
ソフィアとは子供の頃からの付き合いだ。 ま、いわゆる幼馴染みというやつだな」
「そうなんだ、そんな幼い頃からの友人と街に入るなり再会できるなんて良かったね」
ソフィアに向かって笑いかける。
友人という言葉を二度も言われたアレックスは不快そうに鼻を鳴らした。
「家に帰るんだろう? 久しぶりに俺も顔を出していいか」
「悪いけれど立て込んでるから時間が取れないと思うわ」
アレックスがアルフレッドを見る。そいつは連れて行くのにという不満が見えるようだ。
「何かあったのか? 力になるから遠慮せずに言ってくれ」
「そんな大げさなものじゃないの、気にしないで」
「そんなこと言うなよ、大切な幼馴染みが困ってるなら手を貸すのは当然だ」
ソフィアは少し考える素振りをしてアレックスを見上げた。
「あまり大きな事にはしたくないんだけれどね…。
実はアルフレッドの弟さんが行方不明になっちゃってね。
王都に向かったという話があったからそれらしき人を見つけたら教えてくれないかしら?」
「弟?」
アレックスの目がアルフレッドに向く。
「容姿はアルフレッドと同じ色の髪と目で、背は少し低いかしら?」
「そうだな、俺よりも頭半分くらいは低い」
デリクはあまり家から出ず運動もしなかったから色白で少し太めの体型をしている。
特徴を伝えてアレックスに頭を下げる。
「申し訳ないがもし巡回の途中にでも見かけたら教えてくれないか?」
アレックスは家出人の捜索か、と呟いて力強く頷いてくれた。
「わかった、同僚にも声を掛けておくから。
もし手掛かりを得られたらソフィアの家に報告に行くよ」
ちゃらっと先程断られたソフィアの家に行くこと盛り込んで請け合う。
ありがとう、と笑うソフィアも気づかなかったように流した。
王都に入ってアレックスから離れたところでソフィアにさっきのことを聞く。
「ソフィア、どうして盗みに遭った事を話さなかったんだ?」
アレックスのさっきの様子なら何を置いても探してくれそうな気がするのに。
「アレックスは融通が利かないから弟さんを見つけたらその場で逮捕、連行して大事にしちゃうと思うの」
人探しなら見つけても大事には出来ない。
家出人だとしても帰るかどうかは本人の意思次第なので見つけて家族に知らせるくらいしかないだろう。
保護が必要な幼い子供というわけでもないし。
「ありがとう…」
弟の立場を慮ってくれるソフィアに言葉しか返せない。
ソフィアは困ったように笑った。
「じゃあ、私の家に行きましょうか。
何か情報が聞けると良いわね」
王都の中心に向かって歩く。
緊張しながらソフィアの家に向かった。
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