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セレスタ 帰還編
波乱の行方 薬草畑の片隅で
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ヴォルフが王子に叱られているころ。
マリナは王宮の片隅にある薬草畑に蹲っていた。
自身の管理する畑にやってきたラウールは隅っこで丸まってる弟子を見つけた。
低木に身を隠すようにしゃがみこんだマリナにわざと笑いながら声を掛ける。
「あら、王宮を騒がせてる双翼さんじゃないの」
「し、師匠までそんなこと言うんですか?!」
振り向いたマリナは半泣きだった。
(あらあら)
大方噂を知ってヴォルフとケンカでもしてきたんだろうと見当をつける。
「泣くんじゃないわよ」
情けない姿を見せるマリナを珍しいと思いながら宥めるような声で立ち上がらせる。
「ほら、しゃがんでないでしっかり立ちなさい」
声を掛けるとマリナは一人で立ち上がる。
多少落ち込むことがあっても手を貸されるのを待ったりはしない。
そんな子だったら弟子にはしないし、双翼にもならなかっただろう。
とはいえ、こうして沈んでいるところを見ると慰めたくなる。
(だけどねぇ…)
甘やかすのはリオールの役目だった。
どうも自分はそういうことが上手くない。
周りの大人が甘やかさなかったこともあって、マリナは他人に頼る、甘えるということが下手だ。
原因の一端がラウールにもあるので少しだけ責任を感じていた。
「すみません、師匠…」
顔を上げたマリナがラウールを見て謝る。
「どうしたの?」
「いえ、師匠の薬草畑に勝手に入ってしまって」
ちょっと薬草を潰してしまいました、とマリナが頭を下げる。
何を言うのかと思ったら、わざとじゃなければ構わない。
「いいわよ、別に。 どうせほとんど趣味だしね」
薬草なら王宮に仕える庭師たちが育てている。ラウールのこれは趣味に近い。
役に立つかもわからない研究の為に育てているだけで、これがなくても仕事は出来る。
「良かったです。 飛び出してきたのは良いものの下手な場所には近づけなかったもので…」
「まあ、この状況で他の男と一緒にいるのを見られたら火に油を注ぐようなものだものね」
マリナもわかっているとおり、そんな隙を作ったら一気に悪意が広がるだろう。
ヴォルフを誑かし、更に他の男と天秤に掛けているなどと言われるのは目に見えている。
「で、今回のケンカの原因はしょうもない噂?」
ラウールが聞くとマリナが口を尖らせた。
「今回って、別にいつもケンカしてる訳じゃないですよ
…理由はそのとおりですけど」
こればかりは仕方ない。
マリナと彼では感じ方が違うのだから。
王宮で育った割に真っ当な恋愛観が育ってなによりだ。
自分たちは全く関与してないが。
「ヴォルフが平気な顔してて自分だけ悶えてるのが馬鹿みたいです…」
「子供はそんなものよ」
子供のころ過剰反応していたものも、歳を経れば騒ぎ立てるものじゃなくなる。
「うう…」
子供扱いされてマリナが俯く。
実際子供なのだから甘んじて受け入れればいい。
どうせ今だけなんだから。
お互いの気持ちが釣り合っていると知れれば噂は下火になる。
何故ならおもしろくないからだ。
状況がわからない今だから噂が燃え上がっているだけで、その内落ち着く。
まあ、わかっていても恥ずかしいのだろう。
とうの昔に失くした感情に寄り添うことは出来ないが助言くらいは出来る。
しばらく話を聞いているとマリナは落ち着いたようだ。
「こんな時間なので戻りますね。 多分仕事が溜まってる気がするので」
けろっとした顔で暇乞いすると早足で立ち去って行く。
立ち直りの早い子だと呆れながら見送った。
「繊細なんだか図太いんだかわからないわね」
そう言いながらもたった一人の弟子が元気になってほっとする。
拾った子供が伴侶を得る年齢になっていたとは感慨深い。
「子供って勝手に育つものね」
月日が流れるのは早いなとしみじみ感じた。
マリナは王宮の片隅にある薬草畑に蹲っていた。
自身の管理する畑にやってきたラウールは隅っこで丸まってる弟子を見つけた。
低木に身を隠すようにしゃがみこんだマリナにわざと笑いながら声を掛ける。
「あら、王宮を騒がせてる双翼さんじゃないの」
「し、師匠までそんなこと言うんですか?!」
振り向いたマリナは半泣きだった。
(あらあら)
大方噂を知ってヴォルフとケンカでもしてきたんだろうと見当をつける。
「泣くんじゃないわよ」
情けない姿を見せるマリナを珍しいと思いながら宥めるような声で立ち上がらせる。
「ほら、しゃがんでないでしっかり立ちなさい」
声を掛けるとマリナは一人で立ち上がる。
多少落ち込むことがあっても手を貸されるのを待ったりはしない。
そんな子だったら弟子にはしないし、双翼にもならなかっただろう。
とはいえ、こうして沈んでいるところを見ると慰めたくなる。
(だけどねぇ…)
甘やかすのはリオールの役目だった。
どうも自分はそういうことが上手くない。
周りの大人が甘やかさなかったこともあって、マリナは他人に頼る、甘えるということが下手だ。
原因の一端がラウールにもあるので少しだけ責任を感じていた。
「すみません、師匠…」
顔を上げたマリナがラウールを見て謝る。
「どうしたの?」
「いえ、師匠の薬草畑に勝手に入ってしまって」
ちょっと薬草を潰してしまいました、とマリナが頭を下げる。
何を言うのかと思ったら、わざとじゃなければ構わない。
「いいわよ、別に。 どうせほとんど趣味だしね」
薬草なら王宮に仕える庭師たちが育てている。ラウールのこれは趣味に近い。
役に立つかもわからない研究の為に育てているだけで、これがなくても仕事は出来る。
「良かったです。 飛び出してきたのは良いものの下手な場所には近づけなかったもので…」
「まあ、この状況で他の男と一緒にいるのを見られたら火に油を注ぐようなものだものね」
マリナもわかっているとおり、そんな隙を作ったら一気に悪意が広がるだろう。
ヴォルフを誑かし、更に他の男と天秤に掛けているなどと言われるのは目に見えている。
「で、今回のケンカの原因はしょうもない噂?」
ラウールが聞くとマリナが口を尖らせた。
「今回って、別にいつもケンカしてる訳じゃないですよ
…理由はそのとおりですけど」
こればかりは仕方ない。
マリナと彼では感じ方が違うのだから。
王宮で育った割に真っ当な恋愛観が育ってなによりだ。
自分たちは全く関与してないが。
「ヴォルフが平気な顔してて自分だけ悶えてるのが馬鹿みたいです…」
「子供はそんなものよ」
子供のころ過剰反応していたものも、歳を経れば騒ぎ立てるものじゃなくなる。
「うう…」
子供扱いされてマリナが俯く。
実際子供なのだから甘んじて受け入れればいい。
どうせ今だけなんだから。
お互いの気持ちが釣り合っていると知れれば噂は下火になる。
何故ならおもしろくないからだ。
状況がわからない今だから噂が燃え上がっているだけで、その内落ち着く。
まあ、わかっていても恥ずかしいのだろう。
とうの昔に失くした感情に寄り添うことは出来ないが助言くらいは出来る。
しばらく話を聞いているとマリナは落ち着いたようだ。
「こんな時間なので戻りますね。 多分仕事が溜まってる気がするので」
けろっとした顔で暇乞いすると早足で立ち去って行く。
立ち直りの早い子だと呆れながら見送った。
「繊細なんだか図太いんだかわからないわね」
そう言いながらもたった一人の弟子が元気になってほっとする。
拾った子供が伴侶を得る年齢になっていたとは感慨深い。
「子供って勝手に育つものね」
月日が流れるのは早いなとしみじみ感じた。
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