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セレスタ 帰還編
追跡 1
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魔力を感知して咄嗟に飛び出したマリナだったけれど、早くも息が切れてきた。
魔法の付与がなければ絶対に見失っている。
ちらりと後ろを見ると白煙が建物の上に見えた。
結構な音がした爆発音と煙に街は騒然としている。
野次馬をしに煙が上がった方へ走り出す人もいた。
爆発騒ぎに気を取られて走るマリナを気に留める人はほとんどいない。
足を動かしながら心の中で文句を言う。
(夜なら飛んで追いかけるのに…、もう!)
目立ちすぎるのでそれが出来ないのが、残念でならなかった。
四六時中鍛えている人間と違って、体力に自信なんてない。
追いかけて来たのはマリナにしか追えないと思った、それだけだ。
対象とは一本以上道が離れているのでマリナには気が付いていないはず。
マリナはただ発している魔力を頼りに追いかけていた。
(まるで攫われることがわかっていたみたいね…)
魔力の痕跡を残す魔道具なんて普通の人間は持たない。
そう、こうして魔力を追える人間がいると知っていたみたいな動き。
さっきの爆発といい、不可解だった。
何者が技師を攫ったのか。
街には多くの人がいる。人は多かれ少なかれ魔力を有しているので、街中を抜けるまでは発する魔力が多すぎて対象を掴みきれない。
ただ、外壁に向かって走るマリナの先を、同じ方向に進む人間が複数いる。
大の大人を一人で攫ったということはないだろうし、相手は少なくとも二人以上いるはずだ。
感じている魔力がレグルスの外に出た。
辺りに人がいないのをさっと確認して、外壁に飛び乗る。
見えたのはレグルスから伸びる街道を走る男達。
何処に行くつもりなのか…。徒歩なのでこのまま別の街や国外に出るわけではなさそうだ。
街道の先で道をそれるところを見ると近くに潜伏するつもりのようだった。
とある廃屋。
転がった男を眼下に見ながらマリナは思案していた。
(どうしようかしら。 追いかけて来たのはいいものの…、ここで私が出て行ったらちょっと問題よね)
王子が勧誘しようとしていた技師を攫った男たちは2名。
何らかの訓練を受けた人間だろうと、白昼堂々街中から人を攫うという大胆さから予想していた。
あともう一つ。男たちの素性に予想が付いている。
だからこそ、マリナは動けない。
男たちが魔法に長けていないのは運がよかったけれど、こうして見ているだけでは状況が変わらない。
廃屋の屋根の上から感知できる魔力反応は3つ。
二階の階段から一番遠い部屋にいるのが技師。
一階の一番広い部屋にいる二人が誘拐犯だ。
男たちは本当に魔法に関して鈍いというか、素人のようだ。
魔法で音を拾いながら考える。
一応魔力を抑えているけれど、何もしなくても気づかれないかもしれない。
レグルス近郊の村からさらに外れた場所、元は農家の家だったろう廃屋で男たちは休んでいた。
「ヤツはどうしてる?」
「大人しくしてるよ。 抵抗しても無駄だと教えてやったからな、枷も付けてるし逃げようなんてバカなことは考えないだろ」
技師はすでに危害を加えられているかもしれない。さっきから部屋に転がって、全く動かない。
「迎えが来るまでの辛抱とはいえ、暇だな」
「すぐだ、気を抜くなよ」
胸の中で舌打ちをする。
更に移動されたらヴォルフ達が追い付けないかもしれない。
かといってマリナが男たちの前に出ていくことも出来ない。覚えられたら面倒なことになる。
せめて夜ならよかったのに、と考えながら辺りを見回した。
屋根から見える範囲に人はいない。
つまり多少騒がしいことになっても大丈夫だ。
最悪の場合廃屋を壊してでも技師を連れ帰ることは可能なのだけど…。
(廃屋とはいえ誰かの財産だから、勝手に壊すと後々面倒なのよね…)
権利問題は何かと拗れる。
弁償くらいできるけれど、外聞が悪い。
騎士団が誘拐犯を捕まえに来るという形が一番望ましかった。
(具体的な案は後で考えることにして、取りあえず連絡しよっと)
街道から離れているとはいえ、開けた場所なので近づいてくる者があれば男たちも気づく。
打開する方法が見つからない以上、一人で頭を悩ませてないで相談するべきだ。
王子に渡した魔道具を頼りにレグルスへ魔力を飛ば―――。
そうとしたところで足元から聞こえる音に意識を中断させられた。
魔法の付与がなければ絶対に見失っている。
ちらりと後ろを見ると白煙が建物の上に見えた。
結構な音がした爆発音と煙に街は騒然としている。
野次馬をしに煙が上がった方へ走り出す人もいた。
爆発騒ぎに気を取られて走るマリナを気に留める人はほとんどいない。
足を動かしながら心の中で文句を言う。
(夜なら飛んで追いかけるのに…、もう!)
目立ちすぎるのでそれが出来ないのが、残念でならなかった。
四六時中鍛えている人間と違って、体力に自信なんてない。
追いかけて来たのはマリナにしか追えないと思った、それだけだ。
対象とは一本以上道が離れているのでマリナには気が付いていないはず。
マリナはただ発している魔力を頼りに追いかけていた。
(まるで攫われることがわかっていたみたいね…)
魔力の痕跡を残す魔道具なんて普通の人間は持たない。
そう、こうして魔力を追える人間がいると知っていたみたいな動き。
さっきの爆発といい、不可解だった。
何者が技師を攫ったのか。
街には多くの人がいる。人は多かれ少なかれ魔力を有しているので、街中を抜けるまでは発する魔力が多すぎて対象を掴みきれない。
ただ、外壁に向かって走るマリナの先を、同じ方向に進む人間が複数いる。
大の大人を一人で攫ったということはないだろうし、相手は少なくとも二人以上いるはずだ。
感じている魔力がレグルスの外に出た。
辺りに人がいないのをさっと確認して、外壁に飛び乗る。
見えたのはレグルスから伸びる街道を走る男達。
何処に行くつもりなのか…。徒歩なのでこのまま別の街や国外に出るわけではなさそうだ。
街道の先で道をそれるところを見ると近くに潜伏するつもりのようだった。
とある廃屋。
転がった男を眼下に見ながらマリナは思案していた。
(どうしようかしら。 追いかけて来たのはいいものの…、ここで私が出て行ったらちょっと問題よね)
王子が勧誘しようとしていた技師を攫った男たちは2名。
何らかの訓練を受けた人間だろうと、白昼堂々街中から人を攫うという大胆さから予想していた。
あともう一つ。男たちの素性に予想が付いている。
だからこそ、マリナは動けない。
男たちが魔法に長けていないのは運がよかったけれど、こうして見ているだけでは状況が変わらない。
廃屋の屋根の上から感知できる魔力反応は3つ。
二階の階段から一番遠い部屋にいるのが技師。
一階の一番広い部屋にいる二人が誘拐犯だ。
男たちは本当に魔法に関して鈍いというか、素人のようだ。
魔法で音を拾いながら考える。
一応魔力を抑えているけれど、何もしなくても気づかれないかもしれない。
レグルス近郊の村からさらに外れた場所、元は農家の家だったろう廃屋で男たちは休んでいた。
「ヤツはどうしてる?」
「大人しくしてるよ。 抵抗しても無駄だと教えてやったからな、枷も付けてるし逃げようなんてバカなことは考えないだろ」
技師はすでに危害を加えられているかもしれない。さっきから部屋に転がって、全く動かない。
「迎えが来るまでの辛抱とはいえ、暇だな」
「すぐだ、気を抜くなよ」
胸の中で舌打ちをする。
更に移動されたらヴォルフ達が追い付けないかもしれない。
かといってマリナが男たちの前に出ていくことも出来ない。覚えられたら面倒なことになる。
せめて夜ならよかったのに、と考えながら辺りを見回した。
屋根から見える範囲に人はいない。
つまり多少騒がしいことになっても大丈夫だ。
最悪の場合廃屋を壊してでも技師を連れ帰ることは可能なのだけど…。
(廃屋とはいえ誰かの財産だから、勝手に壊すと後々面倒なのよね…)
権利問題は何かと拗れる。
弁償くらいできるけれど、外聞が悪い。
騎士団が誘拐犯を捕まえに来るという形が一番望ましかった。
(具体的な案は後で考えることにして、取りあえず連絡しよっと)
街道から離れているとはいえ、開けた場所なので近づいてくる者があれば男たちも気づく。
打開する方法が見つからない以上、一人で頭を悩ませてないで相談するべきだ。
王子に渡した魔道具を頼りにレグルスへ魔力を飛ば―――。
そうとしたところで足元から聞こえる音に意識を中断させられた。
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