187 / 368
セレスタ 弟さんの結婚式編
大役
しおりを挟む
執務室で書類とにらめっこしていると扉を叩く音が聞こえた。
王子が入室を許可すると内務卿の部下が入ってくる。
内務卿がマリナを呼んでいるとのこと。
王子に視線を向けると行っておいでと送り出される。
王子は呼び出しの内容を知っているのか驚いた様子はなかった。
扉の前で一呼吸して扉を開けてもらう。
中に入ると内務卿はマリナを一瞥して執務の手を止めた。
書類を机の端に避けて内務卿が手を組む。
「ジークヴァルトにはすでに話しましたが王子の婚約式が決まりました」
聞かされた内容に知らずと背筋が伸びる。
「婚約発表は今年最後の夜会で行います。
婚約式は来年の春、王子の誕生日に合わせた発表になります」
王子が生まれたのは一番花が美しく咲く季節だ。
慶事にふさわしい明るい季節。
「結婚式はいつ頃になるんですか?」
多分一年以上は先になるだろうけれど、可能な限り急がせたいはず。
「状況によりますが婚約式から一年半後に予定を組んでます」
では再来年の秋頃か。
ちょうど今頃の時期になる。
「そこで、あなたに王子の結婚式の演出を任せたいと思います」
「え?」
一瞬「は?」と言いそうになった。危ない。
内心冷や汗を流しつつ内務卿に意味を問う。
「式全体の演出をしろとは言っていません。
そんなことは無理でしょうし、あなたに任せたら他の者が納得しない」
「そうですよね」
それはそうだ。
式典などなら典礼官の領分だし、実際に準備をするなら侍従や女官、それを管轄し全体に指示を出すのは内務卿率いる内務省の仕事だ。
「あなたに任せたいのは他国に向けたデモンストレーションです」
「デモンストレーション」
セレスタの技術を見せつけろと。
マリナの表情を読み取って内務卿はわずかに口の端を上げる。
「そうです、最近何かと騒がしい国がありますからね。
どの程度の差があるのか見せつけるつもりでやりなさい」
内務卿から告げられたとは思えない直接的な言葉に目を瞬く。
意外ですか、と問われて首を振る。
言い方はともかく納得できる依頼だった。
セレスタが有する技術を見せつけ技術の差を思い知らせて、盗もうと手を伸ばしたところで到底及ばないと知らしめる。
とても楽しそうだ。
『見せつけるつもりでやりなさい』
そんな俗な言い方をするくらいには内務卿もレグルスの事件を根に持っているらしい。
「魔術師たちを纏めて王子の為に最高のものを見せなさい。
ジグと相談してあなたが主導で成すように」
「はい!」
言い渡されたことの大きさに気を引き締める。
とはいえ、魔術師を集めて大規模な魔術を使うだけなら左程準備は必要ない。
必要なのはどう見せるかということ。
経験豊富なジグ様に意見を仰ぎ、魔術師たちの意見を元に内容を決めることになる。
滅多にない機会に胸が躍る。他の魔術師たちも同様だろう。
暴走しないように抑えるのが大変そうだけど、楽しみだった。
王子が入室を許可すると内務卿の部下が入ってくる。
内務卿がマリナを呼んでいるとのこと。
王子に視線を向けると行っておいでと送り出される。
王子は呼び出しの内容を知っているのか驚いた様子はなかった。
扉の前で一呼吸して扉を開けてもらう。
中に入ると内務卿はマリナを一瞥して執務の手を止めた。
書類を机の端に避けて内務卿が手を組む。
「ジークヴァルトにはすでに話しましたが王子の婚約式が決まりました」
聞かされた内容に知らずと背筋が伸びる。
「婚約発表は今年最後の夜会で行います。
婚約式は来年の春、王子の誕生日に合わせた発表になります」
王子が生まれたのは一番花が美しく咲く季節だ。
慶事にふさわしい明るい季節。
「結婚式はいつ頃になるんですか?」
多分一年以上は先になるだろうけれど、可能な限り急がせたいはず。
「状況によりますが婚約式から一年半後に予定を組んでます」
では再来年の秋頃か。
ちょうど今頃の時期になる。
「そこで、あなたに王子の結婚式の演出を任せたいと思います」
「え?」
一瞬「は?」と言いそうになった。危ない。
内心冷や汗を流しつつ内務卿に意味を問う。
「式全体の演出をしろとは言っていません。
そんなことは無理でしょうし、あなたに任せたら他の者が納得しない」
「そうですよね」
それはそうだ。
式典などなら典礼官の領分だし、実際に準備をするなら侍従や女官、それを管轄し全体に指示を出すのは内務卿率いる内務省の仕事だ。
「あなたに任せたいのは他国に向けたデモンストレーションです」
「デモンストレーション」
セレスタの技術を見せつけろと。
マリナの表情を読み取って内務卿はわずかに口の端を上げる。
「そうです、最近何かと騒がしい国がありますからね。
どの程度の差があるのか見せつけるつもりでやりなさい」
内務卿から告げられたとは思えない直接的な言葉に目を瞬く。
意外ですか、と問われて首を振る。
言い方はともかく納得できる依頼だった。
セレスタが有する技術を見せつけ技術の差を思い知らせて、盗もうと手を伸ばしたところで到底及ばないと知らしめる。
とても楽しそうだ。
『見せつけるつもりでやりなさい』
そんな俗な言い方をするくらいには内務卿もレグルスの事件を根に持っているらしい。
「魔術師たちを纏めて王子の為に最高のものを見せなさい。
ジグと相談してあなたが主導で成すように」
「はい!」
言い渡されたことの大きさに気を引き締める。
とはいえ、魔術師を集めて大規模な魔術を使うだけなら左程準備は必要ない。
必要なのはどう見せるかということ。
経験豊富なジグ様に意見を仰ぎ、魔術師たちの意見を元に内容を決めることになる。
滅多にない機会に胸が躍る。他の魔術師たちも同様だろう。
暴走しないように抑えるのが大変そうだけど、楽しみだった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています
鷹 綾
恋愛
婚約者である王太子ユリウスに、
「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄を告げられた
公爵令嬢アイシス・フローレス。
――しかし本人は、内心大喜びしていた。
「これで、自由な生活ができますわ!」
ところが王都を離れた彼女を待っていたのは、
“冷酷”と噂される辺境伯ライナルトとの 契約結婚 だった。
ところがこの旦那様、噂とは真逆で——
誰より不器用で、誰よりまっすぐ、そして圧倒的に強い男で……?
静かな辺境で始まったふたりの共同生活は、
やがて互いの心を少しずつ近づけていく。
そんな中、王太子が突然辺境へ乱入。
「君こそ私の真実の愛だ!」と勝手な宣言をし、
平民少女エミーラまで巻き込み、事態は大混乱に。
しかしアイシスは毅然と言い放つ。
「殿下、わたくしはもう“あなたの舞台装置”ではございません」
――婚約破棄のざまぁはここからが本番。
王都から逃げる王太子、
彼を裁く新王、
そして辺境で絆を深めるアイシスとライナルト。
契約から始まった関係は、
やがて“本物の夫婦”へと変わっていく――。
婚約破棄から始まる、
辺境スローライフ×最強旦那様の溺愛ラブストーリー!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳
どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。
一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。
聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。
居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。
左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。
かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。
今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。
彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。
怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて
ムーライトノベルでも先行掲載しています。
前半はあまりイチャイチャはありません。
イラストは青ちょびれさんに依頼しました
118話完結です。
ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる