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セレスタ 波乱の婚約式編
破壊 3
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部屋に戻るとユリノアスが椅子に倒れ込んだ。
深く溜め息を吐くユリノアスに大丈夫かと声を掛けると疲れた様子で頷いた。
威圧に晒されて疲れたんだろうと思っていると意外な言葉を掛けられる。
「君は本当に無茶をする」
深い溜め息と共に吐かれた言葉に言い返す。
「無茶をしたのはあなたの方ではないですか。
本当に大丈夫ですか? あんなに震えて顔色も悪くしていたのですから、不調があったなら無理をせずに言ってくださいね」
マリナは真面目に心配を向けたのにユリノアスは俯いて顔を覆う。
「そうはっきりと震えていたとか言わないでくれ……。
自分がとても情けない男に思えてくる」
力なく項垂れる姿に首を傾げる。
「何を気にしているのかわからないのですが。
あなたは武人でもない普通の人間なのですから、怖くて当然ではないですか」
「そういうことを言っているんじゃないんだ……。
守るべき女性を前が危険にさらされているのに怖くて震えるなんて情けない……。
それにユースティス兄上なら、ラムゼス兄上を相手にしても怯えたようすなんて見せないだろう」
確かにユースティスならラムゼスにそんな顔は見せないだろう。
実際に危険を感じることがあったとしても、表面に出すことはしないと思う。けど、ユリノアスが気にすることでもないと思うのだけれど。
「情けないですか?
私は主である王子が怖くて震えていても何とも思いませんが」
ラムゼスのような人間と相対したら必死に胆力をかき集め堪えても、その後怖かったと素直に言ってマリナやヴォルフの前では怯えを見せてくれるだろう。
それを情けないとは思わない。
そういった脅威から守るのがマリナたちの仕事であり、誇りだ。
双翼がいるからこそ、敵に対して怯えを覚えても視線を逸らすことなく相対することができる。
そこまで信じてもらえたら、護衛冥利に尽きるではないか。
王子にそこまで明確な敵なんていないので仮定に過ぎないが。
「青褪めながらも視線を逸らさず立ち続けた姿は立派だと思いますよ?」
心配してしまうくらい必死になってラムゼスに抵抗していた。
感心しているほどなのに。ユリノアスはまだ落ち込んでいる。
「結局君に庇われてしまったし」
ラムゼスを怒らせる言葉を意図的に吐いたのは間違いないけれど、そう落ち込まれるとかえって悪いことをした気分になる。
少しでも気分を軽くできないかと考えた沈黙に控えていたカイゼが入ってきた。
「とりあえず先に手当をしたらどうです?」
すっかり忘れていた。手当するまでもない傷だと思うけれど大人しく手当を受ける。
「しかしあの魔道具を破壊するとは……」
カイゼが様々な感情が入り混じった声で呟く。
カイゼの立場からしたら手に入れてこいと命じられている技術を目の前で壊されてなかなかに複雑な思いだろう。
必死になっても手に入らない類の魔道具だし、魔石だけでも計り知れない価値がある。
あれは本当に貴重な魔石だ。
燻る怒りが胸を焦がす。
自分の中の怒りを処理しているとカイゼの目がちらりとこちらを向いた。
「どのような魔道具かお聞きしても答えてくれないでしょうね」
「現物が壊れた今、嘘を吐かれてもわからないでしょう?」
笑みを返すと珍しく顔を顰める。
本当のことを答えるとは限らないとカイゼもわかっているからそれ以上追及してこない。
ユリノアスの前だから舌打ちこそしないものの悔しげな顔は見ていると楽しい。
出会いからやられっぱなしのマリナは小さな仕返しに笑った。
深く溜め息を吐くユリノアスに大丈夫かと声を掛けると疲れた様子で頷いた。
威圧に晒されて疲れたんだろうと思っていると意外な言葉を掛けられる。
「君は本当に無茶をする」
深い溜め息と共に吐かれた言葉に言い返す。
「無茶をしたのはあなたの方ではないですか。
本当に大丈夫ですか? あんなに震えて顔色も悪くしていたのですから、不調があったなら無理をせずに言ってくださいね」
マリナは真面目に心配を向けたのにユリノアスは俯いて顔を覆う。
「そうはっきりと震えていたとか言わないでくれ……。
自分がとても情けない男に思えてくる」
力なく項垂れる姿に首を傾げる。
「何を気にしているのかわからないのですが。
あなたは武人でもない普通の人間なのですから、怖くて当然ではないですか」
「そういうことを言っているんじゃないんだ……。
守るべき女性を前が危険にさらされているのに怖くて震えるなんて情けない……。
それにユースティス兄上なら、ラムゼス兄上を相手にしても怯えたようすなんて見せないだろう」
確かにユースティスならラムゼスにそんな顔は見せないだろう。
実際に危険を感じることがあったとしても、表面に出すことはしないと思う。けど、ユリノアスが気にすることでもないと思うのだけれど。
「情けないですか?
私は主である王子が怖くて震えていても何とも思いませんが」
ラムゼスのような人間と相対したら必死に胆力をかき集め堪えても、その後怖かったと素直に言ってマリナやヴォルフの前では怯えを見せてくれるだろう。
それを情けないとは思わない。
そういった脅威から守るのがマリナたちの仕事であり、誇りだ。
双翼がいるからこそ、敵に対して怯えを覚えても視線を逸らすことなく相対することができる。
そこまで信じてもらえたら、護衛冥利に尽きるではないか。
王子にそこまで明確な敵なんていないので仮定に過ぎないが。
「青褪めながらも視線を逸らさず立ち続けた姿は立派だと思いますよ?」
心配してしまうくらい必死になってラムゼスに抵抗していた。
感心しているほどなのに。ユリノアスはまだ落ち込んでいる。
「結局君に庇われてしまったし」
ラムゼスを怒らせる言葉を意図的に吐いたのは間違いないけれど、そう落ち込まれるとかえって悪いことをした気分になる。
少しでも気分を軽くできないかと考えた沈黙に控えていたカイゼが入ってきた。
「とりあえず先に手当をしたらどうです?」
すっかり忘れていた。手当するまでもない傷だと思うけれど大人しく手当を受ける。
「しかしあの魔道具を破壊するとは……」
カイゼが様々な感情が入り混じった声で呟く。
カイゼの立場からしたら手に入れてこいと命じられている技術を目の前で壊されてなかなかに複雑な思いだろう。
必死になっても手に入らない類の魔道具だし、魔石だけでも計り知れない価値がある。
あれは本当に貴重な魔石だ。
燻る怒りが胸を焦がす。
自分の中の怒りを処理しているとカイゼの目がちらりとこちらを向いた。
「どのような魔道具かお聞きしても答えてくれないでしょうね」
「現物が壊れた今、嘘を吐かれてもわからないでしょう?」
笑みを返すと珍しく顔を顰める。
本当のことを答えるとは限らないとカイゼもわかっているからそれ以上追及してこない。
ユリノアスの前だから舌打ちこそしないものの悔しげな顔は見ていると楽しい。
出会いからやられっぱなしのマリナは小さな仕返しに笑った。
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