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セレスタ 故郷編
故郷の朝
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……あったかい。
目を閉じていてもこの手の主が誰なのかわかる。
繋いでいた手を開いて指を絡め直す。
指が触れ合った場所からじんわりと暖かさと幸せが伝わってくる。
ゆっくり目を開けると片膝を立てて隣に座るヴォルフが目に入った。
一晩中起きていたかのように布団も掛けずマリナを見下ろしている。
びっくりして思わず離しそうになった手をぎゅっと握られて目が覚めた。
「起きてたの?」
「ああ、少し前にな」
睡眠は取ったと聞いてほっと力を抜く。
「なんだ一晩中そこにいたのかと思ったわ」
「いたぞ?」
「……布団は?」
流石に布団無しはきつくないの?と思っているとヴォルフがマリナが包まっていた布団を指した。
「明け方寒かったらしくてな。 俺の分も取っていった」
「え!?」
慌てて自分を見下ろすと確かに布団が二枚ある。
どうりで熱かったわけだ、じゃなくて。
「ごめん、寒かったでしょう」
「いや? 大した時間でもないし起きてたからな。 気にするな」
私よりずっと丈夫なのは知ってるけど心配しないわけがないでしょうに。
腿に手を乗せると服の表面は冷たいけれどその下の身体は暖かい。
「ヴォルフは体温が高いわよね」
いつも暖かくて、その温度に安心する。
乗せた手に力を込めて半身を起こす。鳥の声がするのでまだ早い時間みたい。
「お前よりはな」
伸びてきた手にすっぽりと抱き込まれて身動きが取れなくなる。
ひざ裏を掬われて膝の上に乗せられる。肩を抱かれると暖かさに身体の力が抜けていく。
足先を隠す布団からも暖かさが伝わってきて、このまま眠ってしまいたくなる。
「準備しておばさんのところに行かないと」
誘惑を振り切ろうとしなければならないことを声に出す。きっと朝ご飯の用意をして待っているはずだ。
二度寝してしまうわけにもいかないので足先に掛かった布団を蹴り、ヴォルフの手から抜けようと試みる。
「離してくれないと準備できないんだけど」
何故か手が離れない。
「……離しがたい」
耳元で囁かれて鼓動が跳ねる。
急速に頬に熱が集まっていく。
吐息が触れた耳を押さえて距離を取ろうと身体を捩るけれど腕の中からは逃げられなかった。
耳を押さえる手にくちづけを落とされ、驚きに震える。
「もっとこうしていたいが……、仕方ないな」
手の甲に唇を触れさせたまま囁いてから腕を解く。
あまりの恥ずかしさに絶句したまま動けずにいるとヴォルフの黒い瞳が覗き込んでくる。
穏やかさの裏に緊張を孕んだ瞳。その瞳に見つめられて、時が止まったように硬直していた身体が動いた。
「……」
今度はヴォルフの方が驚きに目を瞠る。
抑えた息を吐きながら呟く。
「さっきみたいなヴォルフの目、嫌いじゃないわ」
今までも幾度か見せた視線。
身の危険を感じると同時に焦がれるような視線の熱さに喜びを感じる。
危険よりも何が起こるのかと期待してしまう。いつから未知への恐怖が変化したのかわからない。ただ今はもっとほしいと感じていた。
「……!」
間に落ちる緊張が高まっていく。
どちらからともなく顔を近づけようとしたとき、大きな鶏の声が響き渡った。
室内にも響き渡った鳴き声に丸くした目を見合わせる。
「……ふっ、ふふっ!」
緊張を打ち破っていった鶏の声におかしくなって笑い出す。
「ふ、ははっ!」
ヴォルフも同様に声を上げて笑っている。
「タイミング悪……、ふっ、ふふふふっ! ダメ……、おかしい!」
あんまりにも間抜けな邪魔の入り方におかしさが止まらない。
「笑い過ぎだ……、くくっ」
本当におかしい。ヴォルフも笑いが止まないみたいだ。
「あー、笑った。 準備しましょうか」
そろそろ用意しないとカイが迎えに来てしまうだろうし、じゃれ合いはここまで。
「そうだな、じゃあ俺も準備してくるか」
そう言って別室に置いてある荷物を取りに出ていく。
マリナも準備をしようと布団を畳む。
まだ零れる笑いを抑えながら身支度を整えていく。
顔を崩して笑うヴォルフなんて珍しいものを見れた。
「何やってるんだか」
笑みに崩れる口から出た言葉は明るい響きを宿している。
鏡を見ると映る自分も楽しそうに笑っていた。
無理なく笑っている自分を確かめるとヴォルフが待っている部屋へ向かう。
外に出ると丁度呼びに来たカイが手を振りながら走ってきた。
目を閉じていてもこの手の主が誰なのかわかる。
繋いでいた手を開いて指を絡め直す。
指が触れ合った場所からじんわりと暖かさと幸せが伝わってくる。
ゆっくり目を開けると片膝を立てて隣に座るヴォルフが目に入った。
一晩中起きていたかのように布団も掛けずマリナを見下ろしている。
びっくりして思わず離しそうになった手をぎゅっと握られて目が覚めた。
「起きてたの?」
「ああ、少し前にな」
睡眠は取ったと聞いてほっと力を抜く。
「なんだ一晩中そこにいたのかと思ったわ」
「いたぞ?」
「……布団は?」
流石に布団無しはきつくないの?と思っているとヴォルフがマリナが包まっていた布団を指した。
「明け方寒かったらしくてな。 俺の分も取っていった」
「え!?」
慌てて自分を見下ろすと確かに布団が二枚ある。
どうりで熱かったわけだ、じゃなくて。
「ごめん、寒かったでしょう」
「いや? 大した時間でもないし起きてたからな。 気にするな」
私よりずっと丈夫なのは知ってるけど心配しないわけがないでしょうに。
腿に手を乗せると服の表面は冷たいけれどその下の身体は暖かい。
「ヴォルフは体温が高いわよね」
いつも暖かくて、その温度に安心する。
乗せた手に力を込めて半身を起こす。鳥の声がするのでまだ早い時間みたい。
「お前よりはな」
伸びてきた手にすっぽりと抱き込まれて身動きが取れなくなる。
ひざ裏を掬われて膝の上に乗せられる。肩を抱かれると暖かさに身体の力が抜けていく。
足先を隠す布団からも暖かさが伝わってきて、このまま眠ってしまいたくなる。
「準備しておばさんのところに行かないと」
誘惑を振り切ろうとしなければならないことを声に出す。きっと朝ご飯の用意をして待っているはずだ。
二度寝してしまうわけにもいかないので足先に掛かった布団を蹴り、ヴォルフの手から抜けようと試みる。
「離してくれないと準備できないんだけど」
何故か手が離れない。
「……離しがたい」
耳元で囁かれて鼓動が跳ねる。
急速に頬に熱が集まっていく。
吐息が触れた耳を押さえて距離を取ろうと身体を捩るけれど腕の中からは逃げられなかった。
耳を押さえる手にくちづけを落とされ、驚きに震える。
「もっとこうしていたいが……、仕方ないな」
手の甲に唇を触れさせたまま囁いてから腕を解く。
あまりの恥ずかしさに絶句したまま動けずにいるとヴォルフの黒い瞳が覗き込んでくる。
穏やかさの裏に緊張を孕んだ瞳。その瞳に見つめられて、時が止まったように硬直していた身体が動いた。
「……」
今度はヴォルフの方が驚きに目を瞠る。
抑えた息を吐きながら呟く。
「さっきみたいなヴォルフの目、嫌いじゃないわ」
今までも幾度か見せた視線。
身の危険を感じると同時に焦がれるような視線の熱さに喜びを感じる。
危険よりも何が起こるのかと期待してしまう。いつから未知への恐怖が変化したのかわからない。ただ今はもっとほしいと感じていた。
「……!」
間に落ちる緊張が高まっていく。
どちらからともなく顔を近づけようとしたとき、大きな鶏の声が響き渡った。
室内にも響き渡った鳴き声に丸くした目を見合わせる。
「……ふっ、ふふっ!」
緊張を打ち破っていった鶏の声におかしくなって笑い出す。
「ふ、ははっ!」
ヴォルフも同様に声を上げて笑っている。
「タイミング悪……、ふっ、ふふふふっ! ダメ……、おかしい!」
あんまりにも間抜けな邪魔の入り方におかしさが止まらない。
「笑い過ぎだ……、くくっ」
本当におかしい。ヴォルフも笑いが止まないみたいだ。
「あー、笑った。 準備しましょうか」
そろそろ用意しないとカイが迎えに来てしまうだろうし、じゃれ合いはここまで。
「そうだな、じゃあ俺も準備してくるか」
そう言って別室に置いてある荷物を取りに出ていく。
マリナも準備をしようと布団を畳む。
まだ零れる笑いを抑えながら身支度を整えていく。
顔を崩して笑うヴォルフなんて珍しいものを見れた。
「何やってるんだか」
笑みに崩れる口から出た言葉は明るい響きを宿している。
鏡を見ると映る自分も楽しそうに笑っていた。
無理なく笑っている自分を確かめるとヴォルフが待っている部屋へ向かう。
外に出ると丁度呼びに来たカイが手を振りながら走ってきた。
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