すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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河川

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 目の前に川がある。

 まあさっきまでも見えてはいたけど、目の前に来るとザブザブ水が流れる音がする。
 大雨になるとゴロゴロと石が流れる位の川だ。
 視界が無かった間も水を感じた事はある。
 身が削られるような大雨は無かったけどな。

 水の中に何かいるみたいだ。
 河原側の浅い部分だから伸びればよく見れそうだ。
 お願いできるか?

 そーっと水の中を覗き込む。
 ゆらゆら体を揺らしながら動くものがいる。
 これが水の中の生き物か~。
 ほ~と見ていると、何かにキュッと吸いつかれた。

 え?
 ぐいと水の中に引っ張り込まれる。
 勢いが強かったのか、ケイとのつながった部分が切れてしまった。
 河原でオロオロするケイの姿があっという間に見えなくなる。

 驚いたけどまずは状況を確認しよう。
 自分に吸いついた生き物は、吸いついた口の奥にあったらしい歯でガジガジ自分の体を噛み切ろうとしているようだ。
 しばらく水の中を泳ぎながら齧っていたが、自分が食べ物ではないとやっとわかったようで、ペッと捨てられた。
 川底に。

 川底だよ。
 こんなとこに捨てられたら顔に苔が生えてしまうじゃないか!

 そんなのは嫌だ!
 自分は川から出たい!
 でも、どうしようか……。

 ん?
 背中に感じていた川底の石の感触が離れてないか?
 顔に感じていた水の流れもいつの間にか感じなくなっている。
 ゆっくりとではあるけど、石であるはずの自分の体が移動している。
 水の流れを無視した真横方向に。
 水草や苔の傾いてる方向で流れはわかるからね。

 どうなっているんだろうなぁ。

 しばらく身を任せて漂っていると、なんと水面から出た!
 自分は薄い緑色の塊に包まれているようだ。
 透明ではあるので外は見える。

 此処はどこだろう?
 出て来た川の方を見ると、川の向こうに広い河原が見える。
 川上方向から河原を何かが歩いてくるのが見えた。

 あ、ケイだ!
 離れても形を失っていなかったみたいだね。

 じゃあ自分を包んでいるは?
 見上げると上に何か見える。
 上のは何だろう?

 疑問を浮かべた途端に身体が上昇を感じててっぺんを見せてもらえた。
 ……苔が生えていた。
 え?という事は、は川の水か!?
  ――――――――――---‐
   川水センスイ
  ――――――――――---‐
 頭に言葉が浮かび、塊の外側で何かがブンブンと揺れている。
 ……縦揺れか。

 このまま運んでもらえるか?
 ……縦揺れだな。
 川の向こうに渡れるか?
 ……悩んだように止まっていたけど縦揺れ。
 じゃあ目的地は対岸のケイの所だ。
 突起は上に掲げ上げられたまま川に突入した!

 始めは水面を進んでいたが、流されてしまって進めないので川底に掴まりながら進んだ。
 川底の苔石がしだいに砂になってその砂の河原に登っていく。
 ふ~結構かかったな。

 少しほっとしていると、何かが飛び跳ねながら近づいてきた。
 何だと思ったケイだった。
 急ぐ時は飛び跳ねるのか。
 中にいる時はやめてほしいな。

 ケイの突起がグルグル振り回されている。
 これは喜んでいるように見える。

 表面に出してもらうと、ケイが擦り寄ってきた。
 頭の上で突起の打ち合いが起こっていた。
 その結果、自分はケイの中に落ち着いた。
 水の塊の方が落ち込んでいる。
 てっぺんにあったはずの苔が斜めになっているからそう見えるんだが。

 川に戻るかと聞いたら、勢いよく横に振られた。
 じゃあ名前だな。
 川の水って事だし、センでいいな。
 ビシッと突起が上に掲げ上げられた。
 あれも返事かな?
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