すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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「あ、あ、あ、ん、ん、ん」
 現在は人間の鳴き声の確認中。

「ざざざ~」
 ここにいる面子で人間の鳴き声を聞いた事があるのは草スライムだけなので、オススメで周りから聞こえる音や鳴き声を真似してみて。と言う指示を実行中。
 ちなみに今のは風で木の葉が鳴る音だ。

「ピチチ、ギャースッ!」

「ケチョッケチョッ」

「ガーガーキャーッ!」

 かなりの鳴き声が出せる模様。
 でも聞いている草スライムが体を傾げて納得できない様子。

 人間の鳴き声ってこういうのじゃないのか?
 ……体をねじる。
 違うようだ。

 まずは身体に慣れるように。
「あい!」
 人間がビシッと片手を上げて鳴く。
 その隣でセキ達も手を上げている。
 草スライムがそれを聞いて上下に揺れる。これで良いらしい。

 人間のお腹から音が鳴って、セキ達がケイに頼んで柔らかい木の実を持たせていた。
「こう食べるんだよ」とセキ達が硬い木の実をかじって見せている。

 人間は真似して木の実をかじると後は無心に食べていた。
 空腹なのを自覚したようだ。
 しかし何だって畑から離れたこんな崖にいるんだ?

 理由が知りたい。
 食事が済んだ人間に持っている物を出してみるように指示すると、身体を探って色々出した。
 知らない物ばかりなのでわかる物は草スライムの解説を頼んだ。

 入れ物があってその中に全部入っていた。
 食料はわかるので除外な。

 まずは光を反射する平たい棒だな。あんまり長くはない。これが二本。
 ……剣と言うらしい。
 次は木を削って作った器だな。
 ……人間が川の水を入れて飲んで見せてくれた。なるほど。
 それと大きな革か?
 ……人間が体をくるんで見せてくれた。そう使うらしい。
 小さい袋に入った小さい金属。自分よりは小さいか?
 ……使い方をスライム達だけで伝達したのか、その金属とケイの持った木の実を交換していた。
 物と交換するための金属か。

 あと、これは何だ?見た事ない形のものだ。
 樹の皮より薄い物を束ねた物。
 外側は木の板かな?
 人間が力を入れて引っ張ったらビリビリと破れた!大丈夫か?
 ……人間が頷いたので近くで見ると、黒い模様がたくさん浮かんでいた。
 これは何だ?
「に、にっき」
 ……木の板の上の黒い物を見ていた人間が答えた。
 これの名前なのか?

 じゃあ、この黒いのが何かわかるか?
「も、じ」
 どうやら人間には自分達とは違う概念があるようだ。
 血液を介してこの人間の名前とかわかるか?
 ……人間は首を傾げる。
 わからないか。

 残りは小さい金属の板か。
 これにも黒い模様『もじ』があるな。わかるか?
「かーく」
 他には?
「すてるす、ぽーすん」
 それだけか?と聞けば頷かれた。

 もし人間がいる所に行って生活は出来そうか?
「……あい」
 鳴き声がわかってないが平気か?
「……あい」
 言っちゃなんだが死ぬ前の記憶って残ってるのか?
「……あい?」
 その返答は、記憶ってなんだってことか?
「あい」
 自分の名前もそうだし、今までどこに住んでいたかとか、何が好きかとか、自分の事で覚えている事。それが記憶だ。
「あい」
 人間は両手を叩いて、さっきの金属の板の文字を指差した。
「カーク」そう言って自分を指差した。
 血を介してじゃなく記憶を介してと聞くのが正しかったようだ。
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