すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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あーさま

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 さっきから思ってたんだが、『あーさま』ってなんだ?
「ん~あうじさま。……いえない」
 ??
 もしかして体は動くけど、口の中は上手く動いてないのか?
「あい」
 他の言い方はないのか?

「ん~ごつじんさま?」
 やっぱり意味が分からない。
「は、は?」
 は?母?
「はい」
 『あい』が『はい』になってるが、こっちが正しいのか?
「はい」
 むむむ……あーさまも母も自分を表す言葉としては合ってない気がする。
 何か良い言葉がないものか。

「あーじさま、あーさま、あーさ?」
 アーサー?
「ん!アーサー、良い!」
 ……周りにいた皆が上下運動を繰り返す。
 これは決定か?

「で、アーサー、どうする?」
 この後か?考えてないぞ。
 人間の住んでいる場所は気になるが。
「じゃー行こう」

 すぐか?
 皆は大丈夫か?
 ……センがカークの足をつついてくる。
 どうした?
 ……センは川に向かってつついている。
 川に入りたいのか?
 ……羽根を掲げている。
 ん~でも流されるからな~。
「持つ?」
 何だ?
「こう」
 カークがセンを両手に乗せて川の方に向く。
 それなら大丈夫か。センはそれでいいか?
 ……良いようだ。何度も羽根を突き上げて踊っているみたいだな。

 じゃあカーク頼む。
「はい」
 手に乗せたまま水に沈めていく。
 透明なので羽根だけが水面に立っているように見える。
「中で、うごうご、してる」
 循環てやつかな。
 あ、じゃあこの時間にケイも減った体積を河原で補充できないか?
 ……羽根が勢いよく縦に振られて、砂地に接している部分がつぶれて広がった。
 あれで取り込んでいるんだろう。
 セキ達は毛づくろいを始めた。

 あ~カークは毛づくろいが必要か?
「ん?」
 毛の中が傷ついて血が出たままだぞ。
 血液はスライム化してるから体から出ないが、開いたままだろ。
「あ~、治すの、町で、かな」
 顔の裏側だから自分では見えないし、他の人間に見てもらう必要はあるか。
「はい」
 じゃあ人のいる所に行って傷を治すのを一番に行動な。
「はい」

 センとケイが満足したのでカバンに入れて、カークは傷を隠すように大きな革を切り取った帯を巻く。
 カバンを背負い、スコラ達を肩やら頭やらに乗せて移動開始だ。
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