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第三章
はじめて笑った
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◆
柔らかい春の日差しの中、二人は今日も言葉を交わす。会話するといってもコマドリの方は筆談だが。
ハークの話は面白い。最近は専ら任務で起こった出来事が中心だ。
「それで咄嗟に敵の足元に鉄板を作ったんだ。思いっきり引き抜いてやったらみんな見事にすっ転んでよ」
でもついでに俺もすっ転んじゃってさー、とハークは頭を掻いた。
『大丈夫だった?』
「全然大丈夫! でも茂みに突っ込んでくっつき虫だらけになっちまったんだよな」
『くっつき虫って何?』
「植物の種だよ。チクチクしてて服にくっ付くとなかなか取れねぇんだ。これがそん時の写真」
差し出された写真には緑色のチクチクの塊をたくさんくっ付けたハークの姿が写っていた。周りには沢山の人達。皆ハークと同じ制服を着ている。きっとハークの仕事仲間だろう。ハークは仲間に揶揄われているのか顔を真っ赤にして何やら喚いているみたいだ。その姿が可愛らしくてコマドリは思わず笑ってしまった。
『おかしな話。でもとても好きよ』
ふんわりと微笑んでみせると、何故だかハークの顔が赤くなる。
「初めて笑った・・・・・・可愛い・・・・・・」
『?』
「いや! 何でもない!」
ハークは両手をぶんぶんと振って目をぎゅっと閉じた。どうやら照れているらしい。
そわそわ立ったり座ったりして忙しない。しかし今重要なのはそこではない。聞き間違いでなければ先程『可愛い』と言われた。ハークに可愛いと思ってもらえたのだ。
それが嬉しくて、コマドリはもじもじしながら髪の毛を指にくるくると巻き付けて弄んだ。
「きょ、今日はもう帰る!」
『え、でも・・・・・・まだ来たばかりなのに』
「ごめん!」
ハークは九十度のお辞儀をすると、扉からではなく窓から去っていく。暫くしてドスンと言う音と「痛っ」という声が聞こえてきた。相当動揺しているらしい。
「嫌われた・・・・・・ってことは無いわよね。ハークは凄く照れ屋さんなのかしら?」
コマドリはハークの残していった写真を手に取って眺める。やはりコマドリの王子様はとてもチャーミングだ。そうしてその写真を大切に抱き締めると、先程の出来事を反芻する。ハークに可愛いと思ってもらえるなんて夢みたいだ。
彼は明日も来てくれるだろうか。もし告白されたらどうしよう。いや、それはまだ気が早いだろうか。彼にもっと愛されるにはどうしたらいいだろう。ああ桃色の妄想が止まらない。コマドリはその日一日どこか夢見心地のまま、どうしたらハークも自分と同じ気持ちになってくれるかということだけを考えて過ごしたのだった。
柔らかい春の日差しの中、二人は今日も言葉を交わす。会話するといってもコマドリの方は筆談だが。
ハークの話は面白い。最近は専ら任務で起こった出来事が中心だ。
「それで咄嗟に敵の足元に鉄板を作ったんだ。思いっきり引き抜いてやったらみんな見事にすっ転んでよ」
でもついでに俺もすっ転んじゃってさー、とハークは頭を掻いた。
『大丈夫だった?』
「全然大丈夫! でも茂みに突っ込んでくっつき虫だらけになっちまったんだよな」
『くっつき虫って何?』
「植物の種だよ。チクチクしてて服にくっ付くとなかなか取れねぇんだ。これがそん時の写真」
差し出された写真には緑色のチクチクの塊をたくさんくっ付けたハークの姿が写っていた。周りには沢山の人達。皆ハークと同じ制服を着ている。きっとハークの仕事仲間だろう。ハークは仲間に揶揄われているのか顔を真っ赤にして何やら喚いているみたいだ。その姿が可愛らしくてコマドリは思わず笑ってしまった。
『おかしな話。でもとても好きよ』
ふんわりと微笑んでみせると、何故だかハークの顔が赤くなる。
「初めて笑った・・・・・・可愛い・・・・・・」
『?』
「いや! 何でもない!」
ハークは両手をぶんぶんと振って目をぎゅっと閉じた。どうやら照れているらしい。
そわそわ立ったり座ったりして忙しない。しかし今重要なのはそこではない。聞き間違いでなければ先程『可愛い』と言われた。ハークに可愛いと思ってもらえたのだ。
それが嬉しくて、コマドリはもじもじしながら髪の毛を指にくるくると巻き付けて弄んだ。
「きょ、今日はもう帰る!」
『え、でも・・・・・・まだ来たばかりなのに』
「ごめん!」
ハークは九十度のお辞儀をすると、扉からではなく窓から去っていく。暫くしてドスンと言う音と「痛っ」という声が聞こえてきた。相当動揺しているらしい。
「嫌われた・・・・・・ってことは無いわよね。ハークは凄く照れ屋さんなのかしら?」
コマドリはハークの残していった写真を手に取って眺める。やはりコマドリの王子様はとてもチャーミングだ。そうしてその写真を大切に抱き締めると、先程の出来事を反芻する。ハークに可愛いと思ってもらえるなんて夢みたいだ。
彼は明日も来てくれるだろうか。もし告白されたらどうしよう。いや、それはまだ気が早いだろうか。彼にもっと愛されるにはどうしたらいいだろう。ああ桃色の妄想が止まらない。コマドリはその日一日どこか夢見心地のまま、どうしたらハークも自分と同じ気持ちになってくれるかということだけを考えて過ごしたのだった。
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