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聖剣の秘密

メイド聖女

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「……………………」

 のんびりと要塞の食堂にて、優雅な食事を楽しんでいた俺だったが、突然、発生した緊急案件に付き-------------とても、渋い顔で、フォークをテーブルに置いた。

 前々から、思っていたが、こいつは疫病神か、何かなのか?

「おい、駄メイド。

 一つ聞いても良いか…………?」

 俺は湧き上がる怒りを何とか、抑え込み、食堂の入り口に佇むアルダートに問い掛ける。

「何でございましょうか?」

「その横にいるは何だ…………?」

「見れば、分かるかと思うのですが----------------」

 いや、分かるっちゃ分かる。

 何せ、あの聖女様が戸惑いながら、アルダートと同じようなを着用して、立っているのだから-------------

 一体、何をどうしたら、そんな事になる。

 確か、聖女様は、あのエセ勇者に生贄にされてから、蘇生ポットの培養液に浸けておいた筈だが…………。

「いつ目覚めたんだ…………?」

「先程、主と別れて、すぐにお目覚めになられました」

 いつもの如く、無表情で、端的に答えるアルダートに、嫌気が差す。

 嫌がらせか?

 嫌がらせなのか??

「あ、あの…………」

 アルダートの横に佇んでいた、聖女が不安げに声を掛けて来た。

「あぁ、聖女さんは気にする必要はねぇよ…………。

 この駄メイドが、ポンコツ過ぎて頭が痛いだけだ」

「あの、その聖女とは、私の事なのでしょうか?」

「は?」

 思わず、間の抜けた声を上げると、アルダートが、何かを思い出したように手を、ポン! と叩いた。

「そういえば、聖女様は記憶を失っているようです」

「…………何…………?」

「ですから、聖女様は記憶を失っておいでです」

「……………………」

 俺は大きくため息を吐いて、席を離れると、ゆっくりと駄メイドの前に立って、拳を振り上げた。

「ありがとうございます!」

 いつもの如く、壁にめり込み、恍惚の笑みを浮かべる駄メイド。

 だから、その顔はやめろ!!

 聖女様が怖がってるじゃねえか!?

 --------って、そうじゃない。

「なぁ、あんた…………記憶を無くしちまってるのは、本当なのか…………?」

「は、はい」

 アルダートに怯えながらも、首を縦に振る聖女。

 それを見るなり、俺は壁にめり込むアルダートの首根っこを掴んで、空いている手でアイアンクローを食い込ませる。

「あ、主…………流石に、それはわたくしのメモリーを破損させてしまいます」

「既にポンコツな上、役に立っていないんだから、問題ねぇだろう?」

 冷め切った目でアルダートを睨み付けながら、ゆっくりと力を込めて行く。

「主よ。

 本当に危険な感じなので、お許し頂けないでしょうか」

「知らん。

 ポンコツはポンコツなりに、ガラクタに成り果てろ…………。

 大体なお前、言ったよな?

 あの蘇生ポットは『完全蘇生』可能な古代の技術で作られたって…………。

 なのに、何で、聖女様が記憶を失っち待ってんだよ!」

「そ、それは…………です、ね…………。

 数百年振りに起動した為…………システムの一部に不具合が生じてしまったようです。

 あっ!?

 本当にまずいです!!

 壊れる壊れる、壊れてしまいます!!」

「チッ…………」

 何か、ヤバそうな煙が頭部から出始めたので、仕方なく手を離した。

「だったら、こんな所でふざけていないで、さっさとシステムを修復するなりして来い!!!

 このポンコツっ!!!」

「りょ、了解致しました」

 頭を押さえて、フラフラになりながら、歩き始めるアルダート。

 そんなアルダートの姿を心配そうに、手を伸ばす聖女様へと視線を向ける。

「あんたが気にする事じゃねぇよ。

 ここじゃあ、いつも通りの光景だからな…………」

「そ、そうなの、ですか?」

「そうなんだ…………」

 明らかに疲れ切ったような表情で、頷く俺。

 さて、ちょっくら、聖女様に色々と聞いてみないとな…………。
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