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第三章 際限なき悪意

獄炎乱舞

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「ミーナっ!!

 国王陛下達を引き連れて、今すぐここから離れろ!?」


「っ!!?」


 剣聖の声に、素早く対処を始める聖女。


 普段の彼女なら、剣聖に加勢すると反論する所だが…………。


 今の剣聖には、頼もしいと思えるパートナーがいる。


 それに、を使うなら、聖女達は邪魔以外の何ものでもない。


「ニガサナイ…………」


「おっと!!」


 《ヴァルキリー》を纏う、ライハもどきが聖女達に砲身を向けようとして、剣聖の大剣に阻まれた。


「お前らの相手はこの俺だ!?


 よそ見してんなよ!?」


「ジャマシナイデ…………」


 剣聖の背後に回り込む《神電》タイプも剣を振り下ろすが、軽々と受け流されて、膝蹴りを喰らった。


 そのまま、吹き飛ばされ、何本か大木を薙ぎ倒して、立ち上がる模倣達。


 邪魔者である剣聖を排除した方が得策だと考えたのか、剣聖に敵意を向けて、戦闘態勢に入る。


 漸く、相手が本気になったかと思うと、剣聖は頬が思わず緩む。


『随分と燃えて来る状況じゃねえか…………。

 そう思わねえか?

 なあ、マスター!!?』


 その気持ちは、グレンも同じようで、自然と剣聖も、自分の気持ちが段々と昂って行くのを感じる。


「当たり前じゃねえか!?

 守るべき者がいる!!

 立ち塞がる者がいる!!

 倒すべき敵がいる!!

 ここで燃えなくちゃ、剣聖の名が廃るぜっ!!」


『それでこそ、俺のマスターだっ!!』


「だったら、やるぞ!!

 グレン!!」


『おうよ!!

 戦闘シークエンス起動!!

 解放上限値レベル三まで解放!!

 全セーフティーの解除確認!!』


『「《獄炎乱舞ごくえんらんぶ!!》」』


 そう叫んだ瞬間、剣聖の機体の装甲から紅蓮の炎が吹き出した。


 それが、身体全体を包み込むようになると、大剣の刀身も赤く熱を持ち、周囲の木々がその熱を浴びて、燃え盛る。


「行くぞおおおおおおっ!!!」


 次の瞬間、剣聖が《ヴァルキリー》を纏う方へとブースターを全力で点火して、距離を詰めると…………。


 その大剣が、その身体を一突きに貫いた。


 そして、その大剣の熱が、《ヴァルキリー》の装甲ごと、偽ライハを灰になるまで焼き尽くした。


「さて、次はお前だな……?」


 剣聖は獣のような獰猛な笑みで、振り返ると、機械的な動作で《神電》を纏う偽者が刀を構えていた。


「良いねぇ…………」


 ただ、楽しかった。

 我ながら悪い癖だと思うが…………。


 やはり、強者との戦いは俺の心を踊らせてくれる。


 特に、偽者とはいえ…………あのライハだ。


 これで、心が躍らない奴がいるものか!!

 
 相手が動くと同時に、剣聖は大剣を振り上げ、互いの獲物が火花を散らせてぶつかり合った。


 まだ、戦いは始まったばかりだ。


 もうちっと、楽しませて貰うぜ!?
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