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3-12 古との対話
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「ンだよ……いるんじゃん……ドラゴンーー……」
呆気にとられてクー様の存在を亡きものにしたことを許してほしい。
それほどにまで「イメージ通りのドラゴン」がそこにはいた。
地下神殿を思わせる造りで、中央の祭壇に横たわるようにしてそいつはこちらを見ていた。
大きな翼、長い尾。東洋の蛇を連想させる龍ではなく、西洋の背中に翼の生えたドラゴンでもない。
どちらかといえばプテラノドンを始めとする翼竜に似たーー……まぁ、クー様と同じように「ワイバーン」と呼ばれることの多い、腕から翼が付いたタイプのドラゴンだった。
体は真紅の鱗に覆われており、消えることがないのであろう青の炎を反射させている。
ゆらゆらと、その瞳の中で炎の波に合わせて僕たちの姿がちらついて見えた。
「よく来たな、若き姫君よ。ーー……大きくなった」
「主様はお変わりないようで」
口を開いて話しているわけではない。先ほどと同じように頭の中に直接声が響き渡っていた。
低く、地を揺らすような重い声色だ。
「……なぁに、驚くことはない。長い年月を生きていればこそ……かような芸事も覚えるわい」
「いや……まぁ……うん……?」
エミリアかエシリヤさんか、どっちかに「ドラゴンですら人の言葉を話せない」って言われた気がしてもやっとした。
いや、喋ってはないけど。テレパシーの一種だけど。
「うーん……?」
なんて考えもお見通しなんだからやりづらい相手だ。
「して……貴様はなんの冗談じゃ?」
「ん?」
エミリアとの再会は淡白なもので、あっさりと済ませて僕を睨む。初対面なのに。
「『どうしてそのような姿をしておる』」
「…………」
それはどっちの意味なんだろうーー。
どちらとでも取れる質問はお互いにとって不幸でしかないんだけど、とりあえず、
「考えが読めるなら聞く必要はないですよね?」
と答えておく。
覗くなら勝手に覗いてどーぞ。
下手に説明するよりその方が手間が省けていい。
「……ふん……防壁を張っておいてよく言う」
「……?」
はて、なんのことやら。
さっぱり見に覚えのないことでなじられてちょっと困惑。
結梨も首をかしげてるし何か勘違いされているらしい。
「読めないんですか?」
「正しくは理解できぬ、じゃな。主の思考は乱雑すぎる」
えー……。
これでも理路整然とした思考の持ち主だと思っていたんだけどな……。
つか、頭の中を覗いて「あー、お薬お出ししときますねー」とか酷くないか。なんだよそれ、勝手に診断すんなよ。
「それに読むのは疲れるでの」
おじいちゃんか。
「それでどうして『あのお方の姿を真似ておる』」
「…………」
ちょっと思考停止。……ではなく、思考を走らせる。
ーーあのお方の姿を真似てる……?
「もしかしてこの人を知ってるんですか?」
「……? 奇怪なことを尋ねるお嬢さんじゃのう。知ってるもなにも、『かの黒の魔導士さま』ではないか」
「……」
その口ぶりは「その人物を知っていた」。
このドラゴンは「黒の魔導士」を直接見たことがある。いや、話したことがある……?
本人と間違えられたわけではなく「真似ている」と言われたんだからきっと最近じゃない。大昔だ。よく見れば翼は所々痛み、年季も入っている。
ーーまさか伝説のドラゴンだとか言わないよなコイツ……。
「どうした、答えぬか」
「アカリ様は記憶喪失なのです……! しかしその魔力は伝承の魔導士様と瓜二つ……、おそらくは神様のお導きではないかと……」
一生懸命エミリアはフォローしてくれるけれどドラゴンの視線は冷たい。
「お主が何者であろうと知ったことではないが、……その姿、その力ーー……災いを呼ぶぞ」
「ンなこと言われても……」
「ねぇちょっと、その話って重要なわけ?」
最初は警戒していた結梨だったけど、案外話せる(?)相手だとわかったのか口を挟んできた。
流石に結梨の言葉はわからないらしく首を傾げたドラゴンに言葉を伝える。
「本題は僕らじゃなくてエミリアじゃないの」
「まぁ……そうじゃな……」
歯切れが悪い。
……でかい図体してなんだか親近感を覚えた。
「お話ししたいことは多々ございます……しかし時間がないことも確か……、……主様。杖を、授けて頂けますでしょうか」
太い首をもたげ、主様はジッとエミリアを見つめる。
そこには孫を見つめる祖父母みたいな優しさがあった。
エミリアは何も言わず瞳を見つめ返す。クー様は二人の間でパタパタと飛び、様子を見守っていた。
……なんだかなぁ……。
分かってはいたけどやっぱり僕は部外者だ。
黒の魔導士だとかなんとか言われてるけど第三者であり、傍観者だ。
何かあればエミリアのことを守る程度の役割で、下手に首をつっこむ余地は「恐らく無い」。……無いと思う。
半分願望が入ったけど、この国の問題はきっと僕がいなくても解決されるのだろう。神様のお導きだとかなんとか言ってるけど、ここに来たのは偶然魔法陣が発動して飛ばされただけだし、運命だとか大それたものではないんだろう。
「よかろう……この日が来ることは覚悟していた」
「ありがとうございます」
それほどまでに、彼らのやり取りに口を挟む余地はなかった。
神聖とはこのことを言うのだろうか。この世界そのものが空想(ファンタジー)なんだけど、巨大なドラゴンと対峙するエミリアはそれだけで絵になった。ここに僕らがいることなんて、誰も気づいていないように。
「どうせ大したものではない。……だが、それの意味するところを忘れるでないぞ」
「はい」
その巨大な体をずりずりと動かし、祭壇への道を開けるとその先に一本の杖が祀られていた。
魔法使いの杖というよりも、司祭が持っていそうな装飾が細かく施されたものだった。
白銀の柄、金か銀か。きらめく飾りは炎の明かりを受けて色を変え、その先には蕾が開くように小さなドラゴンが翼を広げようとしていた。四方から伸びた白金の布に吊るされ、宙に浮いていたそれを手に取ると布は四散して消えーー、きらきらと辺りを舞った。
「……おばあさま……」
ぼそりと、その杖を見つめてエミリアがこぼしたのが聞こえた。
「先代の巫女?」
「ええ、まぁ」
恐らくは良くしてもらったのだろう。昔の記憶が込み上げてきているのかもしれない。
目が潤み、頬が少し赤くなっていた。
「これからはエミリアが竜宮の巫女になるんだな?」
「……はいっ」
そのことを自分に言い聞かせるように頷き。言ってからそのことを実感したらしくキュッと口元を固く締めた。
「名に恥じぬ巫女でありたいと思います」
「ああ」
主様はなにも言わず、じっとそんな「孫」を見つめていた。
クー様が肩に止まり、二人で杖を見上げる。
光舞う中、その存在はまるで天の導きに従う勇者のようにも思えた。
……なーんてな。
一応さっきから入り口を警戒してはいる。ここに入ってから見られている感覚は無くなっていたけど、それでも襲撃が無いとは限らない。
杖を手に入れることを阻止したいのであれば、緊張が一度とける「今が」一番の狙い目だろう。
「……ユーリ」
「ゆ・う・り」
「……来るかな」
「さぁ? どっちにしても守ってくれるんでしょ、あ・か・り・ん」
「あかりんて……」
どうにも緊張感のないあだ名を頂戴してしまった。
周囲を確認するけど今の所は何も起きていない。というか、何も起きなさすぎているような……?
エミリアは祭壇からこちらに戻ってきて主様ことドラゴン様とお話ししているみたいだし、平和すぎやしないか……?
「ねぇ、主様。ちょっといい?」
「なんじゃ贋作」
「贋作て……」
さりげなく罵倒してくるあたり一体僕のことを何だと思ってるんだろう。それはかつての魔導士様への忠誠心が故……? 大人気(おとなげ)ないなぁ、このドラゴン……。
「この国のことなら把握してるんだよね?」
「おおまかにじゃがな、ここは龍脈の集まる場所じゃからの」
「僕たちをーー……エミリアを襲ってきたやつの事は把握できてるんですか?」
「……何者かは分からぬ、……じゃが人間でないことは確かじゃな」
「ふーむ……」
魔力源、とやらが人よりも多いってことだろうか。
まぁ、魔法もなしにあんな「崖を壊す」なんて真似は早々できないだろうしエシリヤさんも「ドラゴンたちに狙われてる」って言ってたしな……。
「そいつの居場所は?」
「随分前から気配を消しておる。探ってはおるが見つけられぬな」
僕の頭の中も読めないとか言ってたし、案外能力低いのかもしれない。デカい図体して。
「聞こえておるぞバカもの」
「ありゃ」
ともかく。いまは姿を消してるっていうなら帰りはそれほど気を張らなくていいんだろう。念のために大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)でも張っておけば今夜中には城に戻れ……、
「……どうした」
「もしかして外ってもう夜なのかなーって……」
「そうじゃな、日は暮れたようじゃが」
「マジかぁー……」
「ええっと……? 野宿ですね!」
なんで嬉しそうなんだエミリア……。まぁ戻れるとは思ってなかったけど野宿て……、キャンプとか小学校の頃以来だぞ。
「ここで寝ても?」
「外よりかは安全じゃろう。ワシもおるからな」
「あいよ」
言って「遥か栄光の彼方」を発動させると中から荷物を取り出す。
ホイホイ、っと魔法陣で開いた空間に腕を突っ込みパンパンに膨れたカバンを確認するとちゃんと全部揃っているようだった。
ーー正直怖かったんだけどなぁ……。
旅をするには便利な魔法だと思った。中の時間経過がどうなってるのかわからないけど、もし「時間の流れが止まってる」とかいうなら食材を運ぶのも楽だろうし、なんなら貿易で一儲けトカ。
「相変わらず雑念が多いやつじゃな」
「なら覗かなきゃいいだろ」
「ふん」
いちいち突っかかってきて寂しがり屋かッ。
「…………」
「余計なことは考えんでいい」
「ぉ……?」
考えを読んだらしく、聞く前に返事が返ってきた。
エミリアと結梨は手分けして荷物を引っ張り出し、寝袋やら調理道具なんかを床に並べていた。
「ふーむ……?」
少し手を止めてホイホイっとドラゴンのそばへと寄ってみる。
食事に関しては僕が手を出すより二人に任せといた方が安全だろう。
……結梨の手料理はともかく、エミリア「まで」下手だとは思えないし……。
「なー、主さま」
「なんじゃ」
「んー……」
頭の中を読んでるなら考えてることは筒抜けなわけだし、いちいち聞くのは無駄なんじゃ……。ていうか、「何を聞かれるのかわかっていて」「なんじゃ」って聞き返すってことはあんまり聞かれたくないってことなんじゃ……?
柄にもなく気をつかってしまう。ドラゴン相手なのに無駄に。
「……寂しくないの?」
「……気を使うんじゃないのか」
「人付き合いは苦手なんだよ」
「のようじゃな」
友達と呼べる人はいないし、学校で話すのも幼馴染の結梨ぐらい。
先輩とは随分ながらくご無沙汰だし、クラスでも友人ができる事はないだろう。
もっとも、元の世界に戻れれば……だけど。
「孤独というものは温もりを知っておるから身にこたえる……じゃが、それもいずれは慣れる」
「……だったらこれからまた辛いね」
「たわけ者」
ドラゴンの語る言葉は静かだった。
感情を押しつぶしたような、のっぺりとした抑揚のなさがやるせなくさせる。
当然だ、こんな地下に、……一体何年いるのかはわからないけれど「竜宮の巫女の杖」を守り続けてるんだ。寂しくないわけがない。
かつては地上で生きていたのだろう。話を聞くに黒の魔導士や初代国王のことも知っているらしい。
契約を結んでいれば死を共にするだろうから「生きている」ということは契約を結んだドラゴンというわけではない。
でも、「事実が伝承に変わるほどの時間を」生き続けているとなればその孤独は計り知れない。
永劫とも思える時を過ごすにしても、一人孤独に過ごすのであれば主様のいうとおり「慣れる」のかもしれない。
けど、エミリアと再会した後は?
こうして時間を共にした後は……?
楽しい時間が終わることを辛く感じるのと同じように、先の見えない孤独に戻ることはドラゴンといえど辛いんじゃないだろうか。
「……そのような姿で気を遣うな。こそばゆいわい」
「なに。黒の魔導士ってケッコーわがままな人だったの」
「まぁの。……ヒトの言うことを聞かぬ、おてんば娘だったわい」
「へぇ……」
かつてのことを思う眼差しは優しい。
それはさっきエミリアを見ていた時のように柔らかく、そして静かに沈んでいくのだった。
「お主が何者なのかは知らぬ。……じゃがその姿は災厄を招くであろう」
「進んでこの姿になってるわけじゃねーやい。忠告は有難く受け取っとくけど」
「そうか……」
心なしか僕を見つめる瞳が柔らかくなった気がした。もしかしたらかつての「黒の魔導士」を重ねて見たのかもしれない。
「まぁ……なんだ。……エミリアは守るから安心してくれ」
自信はないけどご老体だと思うと無駄に気を遣ってしまった。僕も僕で結梨の爺さんのことを重ねてんのかもな……。
まだこっちにきて数日も経ってないのに随分時間が経ったように思える。向こうの暮らしがなんだか恋しい。
「……魔法が使えなくなるのはちょっと寂しいけど」
「その魔力源のことじゃがな……」
「……?」
独り言のつもりだったけど頭の中を読んでいたのか普通に聞こえていたのか、主様が口を挟んで来た。
「見たところ、あのお方と同じような体の仕組みをしておるようだが……即ちそれは同じ末路を辿ることになるやもしれん。……そのことを貴様は分っておらぬのだろう?」
「……あ、読めてる?」
「うぬ」
答えなくても応えてくれるってのは便利なんだかなんだかー。
ならこの人(?)に聞いたほうが早いのかもな。黒の魔導士が一体何者なのか、何をしたのか。
そして「この体が一体何なのか」。……多分、エシリヤさんに聞いたところで伝承以上のことは得られない。なら、共に時間を過ごしたであろうこのドラゴンにーー、
「……なぁ、主様? 黒の魔導士ってさーー、」
思えば、フラグらしいフラグだったと後になって思った。
僕がその核心に触れた瞬間、世界が“縦に揺れた”。
「ーーーーッ……!?」
思わず防壁魔法を引きずり出し、構えるが立っていられるレベルじゃなかった。
前につんのめり、そのまま踏ん張れずに跳ねた勢いで後ろに倒れ、主様の首元に埋まりこんだ。
「だっ……?! 結梨!! エミリア!!」
揺れがおさまり、なんとか体を起こすと二人も地面に倒れこんでいるものの建物が崩壊した様子はない。
魔法で燃えているのであろう炎はちらつきこそすれ、周囲を照らしていた。
「落ち着け、地上じゃ」
動いた視線の先を追って見上げる。いまもまだ微かに地響きは聞こえてきていて、確かにそれは遥か遠くからのものに思える。
ーーってことは祠が……?
「……いや、王都の方じゃな」
「……?!」
王都って、そんな遠くからのものがここまで……?
頂上から見下ろした景色がふと浮かんだ。半日以上かけて登った山は王都の裏手側に位置するとはいえかなりの距離があった。
それなのにその衝撃がここまでーー、しかも地下まで伝わって来てるってことは……。
「……エシリヤさんは無事なのか……?」
嫌な予感がした。
自慢じゃないけど地震には慣れっこだ。でもいまみたいな揺れは向こうの世界で感じたが無い。
何が起きたのかはわからないけど「震災だとしても」死人が出るレベルだろう。
僕の焦りを読んだ上での配慮なのか主様の対応は静かだった。
「いまのところは平気なようだ。王都には防壁魔法の仕組みが敷かれておる、あの方直々の魔法陣じゃ。そう易々とは打ち砕かれんーー、……じゃが……、」
「……じゃが……?」
何か言いづらそうに……、言葉の先を探るようにして紅きドラゴンは「内側から打ち砕かんとする者がおる」と顔を歪ませた。
「……ドラゴンなのか」
苦渋に染まった顔を見て察する。
この国の主様といえどドラゴンと人は対立しており、エミリアを狙っているのもドラゴンだ。
となれば襲撃してきた同胞を憎みきれないというのもわかる。
お互いに何も言わず、黙って見つめ合うと不思議と考えていることが分かった気がした。
ーーそれでも守らなければいけないものがある。
これはもしかすると僕の感情じゃないのかもしれない。頭の中を覗かれついでにこいつの気持ちを移された。なーんて。
だからそれでも……、それだけでも十分だった。僕は出来る限り優しく、……それでいて励ますようにその首筋を叩くと「任せとけ」と足を踏み出す。傍観者だなんて気取るのは実際に首を突っ込んでみてからだ。
「ユーリ、エミリア。怪我は?」
「平気。エミリアもクーちゃんのおかげでなんとか」
「クゥッ」
人一倍怯えているかと思ったけど既にエミリアは立ち上がり、地上を睨んでいた。
しかしその杖を持つ手は震え、口元は固く閉ざされている。
「……そう固くなるな」
やっぱり主様がちょっと乗り移ったのかもしれない。
エミリアの隣まで歩くと肩に手を置き、そっと力を抜いてやる。
「俺たちに任せとけ」
結梨が後ろで「バカ」とこぼしたのが聞こえた。
それがなんとなく、過去の記憶を蘇らせる。
薄暗い剣道場、こっちを睨む上級生に俯いたままの結梨。
陽が沈んでひんやりと冷え始めた道場の冷たさが背筋をそっと撫でる。
ーーそっか、あの時とおんなじなのか。
後悔なんてしてなかった。「そうすること」が当然だと思ってたし、それで僕を取り巻く環境が変わったところで気にもしてなかった。……けど、こうやって躊躇し続ける程度には根付いてたんだろう。
「ほんとバカだなぁ……」
口からこぼれたのは無意識だった。
あの頃の自分がここにいたら何も言わず、苦笑するほかない。
後悔するとわかっていてもたぶん僕はやめなかったから。
目の前で一人戦おうとしている子を放っておくなんて、きっとできないから。
……だから、
「バカでごめんっ……?」
改めて結梨に謝っておく。
きっと僕はまた後悔するだろうから。
自分で選んで、自分で首を突っ込んでおいて……きっと後悔すると思うからーー。
僕の言葉に結梨は目を丸くする。
なんのことを言っているのかもきっと伝わってるんだろう。
だからあの時と同じように俯き、目を合わせないようにして「好きすれば」と苦々しくつぶやいた。
「どーせ何言ったって聞かないくせに」
「あはは……」
ただあの時と違って結梨は笑ってくれたけど。
「よしっーー、」
気合を入れてマントを帽子を被しなおす。
伝承の魔導士として、やれることはやってみようーー。
例えそれが後悔する結末になったとしても、僕は。
……女の子の体になっていても、僕は僕だから。きっと。
呆気にとられてクー様の存在を亡きものにしたことを許してほしい。
それほどにまで「イメージ通りのドラゴン」がそこにはいた。
地下神殿を思わせる造りで、中央の祭壇に横たわるようにしてそいつはこちらを見ていた。
大きな翼、長い尾。東洋の蛇を連想させる龍ではなく、西洋の背中に翼の生えたドラゴンでもない。
どちらかといえばプテラノドンを始めとする翼竜に似たーー……まぁ、クー様と同じように「ワイバーン」と呼ばれることの多い、腕から翼が付いたタイプのドラゴンだった。
体は真紅の鱗に覆われており、消えることがないのであろう青の炎を反射させている。
ゆらゆらと、その瞳の中で炎の波に合わせて僕たちの姿がちらついて見えた。
「よく来たな、若き姫君よ。ーー……大きくなった」
「主様はお変わりないようで」
口を開いて話しているわけではない。先ほどと同じように頭の中に直接声が響き渡っていた。
低く、地を揺らすような重い声色だ。
「……なぁに、驚くことはない。長い年月を生きていればこそ……かような芸事も覚えるわい」
「いや……まぁ……うん……?」
エミリアかエシリヤさんか、どっちかに「ドラゴンですら人の言葉を話せない」って言われた気がしてもやっとした。
いや、喋ってはないけど。テレパシーの一種だけど。
「うーん……?」
なんて考えもお見通しなんだからやりづらい相手だ。
「して……貴様はなんの冗談じゃ?」
「ん?」
エミリアとの再会は淡白なもので、あっさりと済ませて僕を睨む。初対面なのに。
「『どうしてそのような姿をしておる』」
「…………」
それはどっちの意味なんだろうーー。
どちらとでも取れる質問はお互いにとって不幸でしかないんだけど、とりあえず、
「考えが読めるなら聞く必要はないですよね?」
と答えておく。
覗くなら勝手に覗いてどーぞ。
下手に説明するよりその方が手間が省けていい。
「……ふん……防壁を張っておいてよく言う」
「……?」
はて、なんのことやら。
さっぱり見に覚えのないことでなじられてちょっと困惑。
結梨も首をかしげてるし何か勘違いされているらしい。
「読めないんですか?」
「正しくは理解できぬ、じゃな。主の思考は乱雑すぎる」
えー……。
これでも理路整然とした思考の持ち主だと思っていたんだけどな……。
つか、頭の中を覗いて「あー、お薬お出ししときますねー」とか酷くないか。なんだよそれ、勝手に診断すんなよ。
「それに読むのは疲れるでの」
おじいちゃんか。
「それでどうして『あのお方の姿を真似ておる』」
「…………」
ちょっと思考停止。……ではなく、思考を走らせる。
ーーあのお方の姿を真似てる……?
「もしかしてこの人を知ってるんですか?」
「……? 奇怪なことを尋ねるお嬢さんじゃのう。知ってるもなにも、『かの黒の魔導士さま』ではないか」
「……」
その口ぶりは「その人物を知っていた」。
このドラゴンは「黒の魔導士」を直接見たことがある。いや、話したことがある……?
本人と間違えられたわけではなく「真似ている」と言われたんだからきっと最近じゃない。大昔だ。よく見れば翼は所々痛み、年季も入っている。
ーーまさか伝説のドラゴンだとか言わないよなコイツ……。
「どうした、答えぬか」
「アカリ様は記憶喪失なのです……! しかしその魔力は伝承の魔導士様と瓜二つ……、おそらくは神様のお導きではないかと……」
一生懸命エミリアはフォローしてくれるけれどドラゴンの視線は冷たい。
「お主が何者であろうと知ったことではないが、……その姿、その力ーー……災いを呼ぶぞ」
「ンなこと言われても……」
「ねぇちょっと、その話って重要なわけ?」
最初は警戒していた結梨だったけど、案外話せる(?)相手だとわかったのか口を挟んできた。
流石に結梨の言葉はわからないらしく首を傾げたドラゴンに言葉を伝える。
「本題は僕らじゃなくてエミリアじゃないの」
「まぁ……そうじゃな……」
歯切れが悪い。
……でかい図体してなんだか親近感を覚えた。
「お話ししたいことは多々ございます……しかし時間がないことも確か……、……主様。杖を、授けて頂けますでしょうか」
太い首をもたげ、主様はジッとエミリアを見つめる。
そこには孫を見つめる祖父母みたいな優しさがあった。
エミリアは何も言わず瞳を見つめ返す。クー様は二人の間でパタパタと飛び、様子を見守っていた。
……なんだかなぁ……。
分かってはいたけどやっぱり僕は部外者だ。
黒の魔導士だとかなんとか言われてるけど第三者であり、傍観者だ。
何かあればエミリアのことを守る程度の役割で、下手に首をつっこむ余地は「恐らく無い」。……無いと思う。
半分願望が入ったけど、この国の問題はきっと僕がいなくても解決されるのだろう。神様のお導きだとかなんとか言ってるけど、ここに来たのは偶然魔法陣が発動して飛ばされただけだし、運命だとか大それたものではないんだろう。
「よかろう……この日が来ることは覚悟していた」
「ありがとうございます」
それほどまでに、彼らのやり取りに口を挟む余地はなかった。
神聖とはこのことを言うのだろうか。この世界そのものが空想(ファンタジー)なんだけど、巨大なドラゴンと対峙するエミリアはそれだけで絵になった。ここに僕らがいることなんて、誰も気づいていないように。
「どうせ大したものではない。……だが、それの意味するところを忘れるでないぞ」
「はい」
その巨大な体をずりずりと動かし、祭壇への道を開けるとその先に一本の杖が祀られていた。
魔法使いの杖というよりも、司祭が持っていそうな装飾が細かく施されたものだった。
白銀の柄、金か銀か。きらめく飾りは炎の明かりを受けて色を変え、その先には蕾が開くように小さなドラゴンが翼を広げようとしていた。四方から伸びた白金の布に吊るされ、宙に浮いていたそれを手に取ると布は四散して消えーー、きらきらと辺りを舞った。
「……おばあさま……」
ぼそりと、その杖を見つめてエミリアがこぼしたのが聞こえた。
「先代の巫女?」
「ええ、まぁ」
恐らくは良くしてもらったのだろう。昔の記憶が込み上げてきているのかもしれない。
目が潤み、頬が少し赤くなっていた。
「これからはエミリアが竜宮の巫女になるんだな?」
「……はいっ」
そのことを自分に言い聞かせるように頷き。言ってからそのことを実感したらしくキュッと口元を固く締めた。
「名に恥じぬ巫女でありたいと思います」
「ああ」
主様はなにも言わず、じっとそんな「孫」を見つめていた。
クー様が肩に止まり、二人で杖を見上げる。
光舞う中、その存在はまるで天の導きに従う勇者のようにも思えた。
……なーんてな。
一応さっきから入り口を警戒してはいる。ここに入ってから見られている感覚は無くなっていたけど、それでも襲撃が無いとは限らない。
杖を手に入れることを阻止したいのであれば、緊張が一度とける「今が」一番の狙い目だろう。
「……ユーリ」
「ゆ・う・り」
「……来るかな」
「さぁ? どっちにしても守ってくれるんでしょ、あ・か・り・ん」
「あかりんて……」
どうにも緊張感のないあだ名を頂戴してしまった。
周囲を確認するけど今の所は何も起きていない。というか、何も起きなさすぎているような……?
エミリアは祭壇からこちらに戻ってきて主様ことドラゴン様とお話ししているみたいだし、平和すぎやしないか……?
「ねぇ、主様。ちょっといい?」
「なんじゃ贋作」
「贋作て……」
さりげなく罵倒してくるあたり一体僕のことを何だと思ってるんだろう。それはかつての魔導士様への忠誠心が故……? 大人気(おとなげ)ないなぁ、このドラゴン……。
「この国のことなら把握してるんだよね?」
「おおまかにじゃがな、ここは龍脈の集まる場所じゃからの」
「僕たちをーー……エミリアを襲ってきたやつの事は把握できてるんですか?」
「……何者かは分からぬ、……じゃが人間でないことは確かじゃな」
「ふーむ……」
魔力源、とやらが人よりも多いってことだろうか。
まぁ、魔法もなしにあんな「崖を壊す」なんて真似は早々できないだろうしエシリヤさんも「ドラゴンたちに狙われてる」って言ってたしな……。
「そいつの居場所は?」
「随分前から気配を消しておる。探ってはおるが見つけられぬな」
僕の頭の中も読めないとか言ってたし、案外能力低いのかもしれない。デカい図体して。
「聞こえておるぞバカもの」
「ありゃ」
ともかく。いまは姿を消してるっていうなら帰りはそれほど気を張らなくていいんだろう。念のために大天使の守護領域(エンジェリング・フィールド)でも張っておけば今夜中には城に戻れ……、
「……どうした」
「もしかして外ってもう夜なのかなーって……」
「そうじゃな、日は暮れたようじゃが」
「マジかぁー……」
「ええっと……? 野宿ですね!」
なんで嬉しそうなんだエミリア……。まぁ戻れるとは思ってなかったけど野宿て……、キャンプとか小学校の頃以来だぞ。
「ここで寝ても?」
「外よりかは安全じゃろう。ワシもおるからな」
「あいよ」
言って「遥か栄光の彼方」を発動させると中から荷物を取り出す。
ホイホイ、っと魔法陣で開いた空間に腕を突っ込みパンパンに膨れたカバンを確認するとちゃんと全部揃っているようだった。
ーー正直怖かったんだけどなぁ……。
旅をするには便利な魔法だと思った。中の時間経過がどうなってるのかわからないけど、もし「時間の流れが止まってる」とかいうなら食材を運ぶのも楽だろうし、なんなら貿易で一儲けトカ。
「相変わらず雑念が多いやつじゃな」
「なら覗かなきゃいいだろ」
「ふん」
いちいち突っかかってきて寂しがり屋かッ。
「…………」
「余計なことは考えんでいい」
「ぉ……?」
考えを読んだらしく、聞く前に返事が返ってきた。
エミリアと結梨は手分けして荷物を引っ張り出し、寝袋やら調理道具なんかを床に並べていた。
「ふーむ……?」
少し手を止めてホイホイっとドラゴンのそばへと寄ってみる。
食事に関しては僕が手を出すより二人に任せといた方が安全だろう。
……結梨の手料理はともかく、エミリア「まで」下手だとは思えないし……。
「なー、主さま」
「なんじゃ」
「んー……」
頭の中を読んでるなら考えてることは筒抜けなわけだし、いちいち聞くのは無駄なんじゃ……。ていうか、「何を聞かれるのかわかっていて」「なんじゃ」って聞き返すってことはあんまり聞かれたくないってことなんじゃ……?
柄にもなく気をつかってしまう。ドラゴン相手なのに無駄に。
「……寂しくないの?」
「……気を使うんじゃないのか」
「人付き合いは苦手なんだよ」
「のようじゃな」
友達と呼べる人はいないし、学校で話すのも幼馴染の結梨ぐらい。
先輩とは随分ながらくご無沙汰だし、クラスでも友人ができる事はないだろう。
もっとも、元の世界に戻れれば……だけど。
「孤独というものは温もりを知っておるから身にこたえる……じゃが、それもいずれは慣れる」
「……だったらこれからまた辛いね」
「たわけ者」
ドラゴンの語る言葉は静かだった。
感情を押しつぶしたような、のっぺりとした抑揚のなさがやるせなくさせる。
当然だ、こんな地下に、……一体何年いるのかはわからないけれど「竜宮の巫女の杖」を守り続けてるんだ。寂しくないわけがない。
かつては地上で生きていたのだろう。話を聞くに黒の魔導士や初代国王のことも知っているらしい。
契約を結んでいれば死を共にするだろうから「生きている」ということは契約を結んだドラゴンというわけではない。
でも、「事実が伝承に変わるほどの時間を」生き続けているとなればその孤独は計り知れない。
永劫とも思える時を過ごすにしても、一人孤独に過ごすのであれば主様のいうとおり「慣れる」のかもしれない。
けど、エミリアと再会した後は?
こうして時間を共にした後は……?
楽しい時間が終わることを辛く感じるのと同じように、先の見えない孤独に戻ることはドラゴンといえど辛いんじゃないだろうか。
「……そのような姿で気を遣うな。こそばゆいわい」
「なに。黒の魔導士ってケッコーわがままな人だったの」
「まぁの。……ヒトの言うことを聞かぬ、おてんば娘だったわい」
「へぇ……」
かつてのことを思う眼差しは優しい。
それはさっきエミリアを見ていた時のように柔らかく、そして静かに沈んでいくのだった。
「お主が何者なのかは知らぬ。……じゃがその姿は災厄を招くであろう」
「進んでこの姿になってるわけじゃねーやい。忠告は有難く受け取っとくけど」
「そうか……」
心なしか僕を見つめる瞳が柔らかくなった気がした。もしかしたらかつての「黒の魔導士」を重ねて見たのかもしれない。
「まぁ……なんだ。……エミリアは守るから安心してくれ」
自信はないけどご老体だと思うと無駄に気を遣ってしまった。僕も僕で結梨の爺さんのことを重ねてんのかもな……。
まだこっちにきて数日も経ってないのに随分時間が経ったように思える。向こうの暮らしがなんだか恋しい。
「……魔法が使えなくなるのはちょっと寂しいけど」
「その魔力源のことじゃがな……」
「……?」
独り言のつもりだったけど頭の中を読んでいたのか普通に聞こえていたのか、主様が口を挟んで来た。
「見たところ、あのお方と同じような体の仕組みをしておるようだが……即ちそれは同じ末路を辿ることになるやもしれん。……そのことを貴様は分っておらぬのだろう?」
「……あ、読めてる?」
「うぬ」
答えなくても応えてくれるってのは便利なんだかなんだかー。
ならこの人(?)に聞いたほうが早いのかもな。黒の魔導士が一体何者なのか、何をしたのか。
そして「この体が一体何なのか」。……多分、エシリヤさんに聞いたところで伝承以上のことは得られない。なら、共に時間を過ごしたであろうこのドラゴンにーー、
「……なぁ、主様? 黒の魔導士ってさーー、」
思えば、フラグらしいフラグだったと後になって思った。
僕がその核心に触れた瞬間、世界が“縦に揺れた”。
「ーーーーッ……!?」
思わず防壁魔法を引きずり出し、構えるが立っていられるレベルじゃなかった。
前につんのめり、そのまま踏ん張れずに跳ねた勢いで後ろに倒れ、主様の首元に埋まりこんだ。
「だっ……?! 結梨!! エミリア!!」
揺れがおさまり、なんとか体を起こすと二人も地面に倒れこんでいるものの建物が崩壊した様子はない。
魔法で燃えているのであろう炎はちらつきこそすれ、周囲を照らしていた。
「落ち着け、地上じゃ」
動いた視線の先を追って見上げる。いまもまだ微かに地響きは聞こえてきていて、確かにそれは遥か遠くからのものに思える。
ーーってことは祠が……?
「……いや、王都の方じゃな」
「……?!」
王都って、そんな遠くからのものがここまで……?
頂上から見下ろした景色がふと浮かんだ。半日以上かけて登った山は王都の裏手側に位置するとはいえかなりの距離があった。
それなのにその衝撃がここまでーー、しかも地下まで伝わって来てるってことは……。
「……エシリヤさんは無事なのか……?」
嫌な予感がした。
自慢じゃないけど地震には慣れっこだ。でもいまみたいな揺れは向こうの世界で感じたが無い。
何が起きたのかはわからないけど「震災だとしても」死人が出るレベルだろう。
僕の焦りを読んだ上での配慮なのか主様の対応は静かだった。
「いまのところは平気なようだ。王都には防壁魔法の仕組みが敷かれておる、あの方直々の魔法陣じゃ。そう易々とは打ち砕かれんーー、……じゃが……、」
「……じゃが……?」
何か言いづらそうに……、言葉の先を探るようにして紅きドラゴンは「内側から打ち砕かんとする者がおる」と顔を歪ませた。
「……ドラゴンなのか」
苦渋に染まった顔を見て察する。
この国の主様といえどドラゴンと人は対立しており、エミリアを狙っているのもドラゴンだ。
となれば襲撃してきた同胞を憎みきれないというのもわかる。
お互いに何も言わず、黙って見つめ合うと不思議と考えていることが分かった気がした。
ーーそれでも守らなければいけないものがある。
これはもしかすると僕の感情じゃないのかもしれない。頭の中を覗かれついでにこいつの気持ちを移された。なーんて。
だからそれでも……、それだけでも十分だった。僕は出来る限り優しく、……それでいて励ますようにその首筋を叩くと「任せとけ」と足を踏み出す。傍観者だなんて気取るのは実際に首を突っ込んでみてからだ。
「ユーリ、エミリア。怪我は?」
「平気。エミリアもクーちゃんのおかげでなんとか」
「クゥッ」
人一倍怯えているかと思ったけど既にエミリアは立ち上がり、地上を睨んでいた。
しかしその杖を持つ手は震え、口元は固く閉ざされている。
「……そう固くなるな」
やっぱり主様がちょっと乗り移ったのかもしれない。
エミリアの隣まで歩くと肩に手を置き、そっと力を抜いてやる。
「俺たちに任せとけ」
結梨が後ろで「バカ」とこぼしたのが聞こえた。
それがなんとなく、過去の記憶を蘇らせる。
薄暗い剣道場、こっちを睨む上級生に俯いたままの結梨。
陽が沈んでひんやりと冷え始めた道場の冷たさが背筋をそっと撫でる。
ーーそっか、あの時とおんなじなのか。
後悔なんてしてなかった。「そうすること」が当然だと思ってたし、それで僕を取り巻く環境が変わったところで気にもしてなかった。……けど、こうやって躊躇し続ける程度には根付いてたんだろう。
「ほんとバカだなぁ……」
口からこぼれたのは無意識だった。
あの頃の自分がここにいたら何も言わず、苦笑するほかない。
後悔するとわかっていてもたぶん僕はやめなかったから。
目の前で一人戦おうとしている子を放っておくなんて、きっとできないから。
……だから、
「バカでごめんっ……?」
改めて結梨に謝っておく。
きっと僕はまた後悔するだろうから。
自分で選んで、自分で首を突っ込んでおいて……きっと後悔すると思うからーー。
僕の言葉に結梨は目を丸くする。
なんのことを言っているのかもきっと伝わってるんだろう。
だからあの時と同じように俯き、目を合わせないようにして「好きすれば」と苦々しくつぶやいた。
「どーせ何言ったって聞かないくせに」
「あはは……」
ただあの時と違って結梨は笑ってくれたけど。
「よしっーー、」
気合を入れてマントを帽子を被しなおす。
伝承の魔導士として、やれることはやってみようーー。
例えそれが後悔する結末になったとしても、僕は。
……女の子の体になっていても、僕は僕だから。きっと。
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