幸せを噛みしめて

ゆう

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新しい世界

入学式

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 入学式、春休み中は人が少なかったとは思えないほど体育館は人だらけだった。
 椅子が用意されてあるのはありがたい。
 それにこんな広い体育館に空調設備整ってて電気代やばそう(庶民の意見)。
 秋人…もとい理事長や校長先生の話、学年代表のスピーチなど普段なら眠くなりそうな話だが、学年代表は長男似の一条直人、新入生代表は五男似の徳大寺渚だった為、眠くはなかった。
 むしろ母親のような感情が生まれ、立派に喋れるようになったね…!目線でちょっと涙がほろりしたのはナイショだ。
 不審者に思われなかったと信じたい。
 

 
「ゆーき――!ゆき!!入学式お疲れ~~」

「げっ」
 

 入学式後、ホームルーム以外は特に授業はなかった為、俺はお昼を購買で購入して、花が咲く人があまり居ない研修棟の中庭で食べていたところに秋人が現れた。
 おい、理事長って忙しいんじゃないのか。
 ぎゅうぎゅう抱き寄せてくる秋人を剥がして、俺は昼食を食べ続ける。

 
「雪メール無視するのひどくない?」
 
「会いたいばっか送ってくるからじゃん」
 

 今はツガイじゃないし。
 それに高校生として、夜に会うのってちょと、ねぇ。
 前世の俺は早々に秋人に処女を奪われましたが、今世の俺ちゃんと童貞も処女も死守する予定だ。
 もうね、前世で散々したからいいんですよ。
 高校生なのにそんなんで大丈夫?って思われるかもしれないけど、心は母だったり、精神年齢は四十過ぎたおっさんなのかもしれない。
 

「雪が冷たい」

「今に始まったことじゃない」
 

 すぐ甘えたそうにする秋人。
 秋人を甘やかしたい気持ちもあるが、今俺は新しい人生を謳歌中なのだ、許してくれ。
 まったく創造主も秋人にも記憶があるようにするとかずるいじゃんー。
 
 はぁとため息をついて、少しだけ傍に寄ってあげる。
 あー、わかったわかった。そんな嬉しそうにしないで。
 
 
「へー、秋人サンにオンナがいるって噂は本当だったんだー」
 

 突如俺たちに向けて発せられた声。
 先ほどまで人が居なかったので急に人が立っていてかなり驚いた。
 

「おー、圭。お前入学式さぼったな?」
 
「出ても寝るだけじゃんー」
 
 けだるそうに答える彼、圭こと西園寺圭は俺の次男だった男だ。
 兄弟で唯一やんちゃで手に負えなかった。
 男女かかわらずふらふらと遊び、手のかかる子だった。
 いや、手のかかる子ほどかわいいのではあるが。
 誰をも惹き付けるタイプは一番秋人に似ていると思った。
 秋人も今世では息子達と血は繋がっていないとはいえ、仲良くしているのだろう。

 
「ちょっと、秋人。オンナってところ否定しろよ」
 
「え?なんで?」
 
 めっちゃ圭がじろじろ見てんじゃん!そんな目で見るのやめて!!

 
「ふーん、やっぱ身体の具合イイの?」
 
「えぇ―?ナイショ」
 
「オィイ!意味ありげな風に言うな――!!身体の関係もった事はないだろうが!!(今世では!)」
 
「雪つれない事言わないで」
 

 なんか俺ツッコミキャラになってない?大丈夫?
 なれないからちょっと疲れちゃったよ俺。
 

「ほ、ほら…理事長、先輩、戻りましょう?理事長も新学期で忙しいでしょう?早く理事長室に戻ったらどうですか?」
 

 急かすように俺は立ち上がり。二人を背中で押した。
 途中、寮と理事長室では方向が違うので、秋人とは別れた。
 
(う、三男に続き、次男にまで見られるとは…気まずい…。秋人覚えてろ)
 

「俺、三年の西園寺圭。あんたは?」

「あ、一年の中山雪です」
 
「ねー、さっきの話本当?」 

「え?」
 

 二人きりになると圭は足を止めて俺の方を向く。
 
「身体の関係はまだだって話」

「は…はぁ…」
 
 圭はにこにことした表情だがこれは圭の余所行きの笑顔だと知っている。
 曖昧な返事を漏らすと、ぐいと身体を引き寄せられ、その動きは慣れたように俺の唇が奪われた。
 
「んむっ、っ…」
 
 顎を持ち上げられ、腰に手をかけられれば、圭の身体はびくともしなかった。
どうした圭!!俺にキスするなんて気がおかしくなったのか…!?
 濃厚な口づけをされることどれくらいだろう、口を開放された時には呼吸もままならず、少し涙目になってしまった。
 
「っ、はぁ…はぁ…」
 
「雪ちゃん息乱れちゃってかわいー。秋人さんまだ手出してないの勿体ないなぁ~。俺奪っちゃおうかな♪」
 
 
 おいおいおい、圭!!俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!
 そんな事は言えず、やめておけ、俺はΩでもなく普通の少年だぞという意味を込めてとりあえず全力で嫌な顔をしておいた。
 笑い事じゃないぞ圭!
 これは秋人からも、圭からも俺は貞操を守らねばならないと思った。
 先が思いやれる。








 次の日登校すると、とんでもない波乱が待ちうけているとは知らずに。
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