17 / 81
新しい世界
入学式
しおりを挟む入学式、春休み中は人が少なかったとは思えないほど体育館は人だらけだった。
椅子が用意されてあるのはありがたい。
それにこんな広い体育館に空調設備整ってて電気代やばそう(庶民の意見)。
秋人…もとい理事長や校長先生の話、学年代表のスピーチなど普段なら眠くなりそうな話だが、学年代表は長男似の一条直人、新入生代表は五男似の徳大寺渚だった為、眠くはなかった。
むしろ母親のような感情が生まれ、立派に喋れるようになったね…!目線でちょっと涙がほろりしたのはナイショだ。
不審者に思われなかったと信じたい。
「ゆーき――!ゆき!!入学式お疲れ~~」
「げっ」
入学式後、ホームルーム以外は特に授業はなかった為、俺はお昼を購買で購入して、花が咲く人があまり居ない研修棟の中庭で食べていたところに秋人が現れた。
おい、理事長って忙しいんじゃないのか。
ぎゅうぎゅう抱き寄せてくる秋人を剥がして、俺は昼食を食べ続ける。
「雪メール無視するのひどくない?」
「会いたいばっか送ってくるからじゃん」
今は番じゃないし。
それに高校生として、夜に会うのってちょと、ねぇ。
前世の俺は早々に秋人に処女を奪われましたが、今世の俺ちゃんと童貞も処女も死守する予定だ。
もうね、前世で散々したからいいんですよ。
高校生なのにそんなんで大丈夫?って思われるかもしれないけど、心は母だったり、精神年齢は四十過ぎたおっさんなのかもしれない。
「雪が冷たい」
「今に始まったことじゃない」
すぐ甘えたそうにする秋人。
秋人を甘やかしたい気持ちもあるが、今俺は新しい人生を謳歌中なのだ、許してくれ。
まったく創造主も秋人にも記憶があるようにするとかずるいじゃんー。
はぁとため息をついて、少しだけ傍に寄ってあげる。
あー、わかったわかった。そんな嬉しそうにしないで。
「へー、秋人サンにオンナがいるって噂は本当だったんだー」
突如俺たちに向けて発せられた声。
先ほどまで人が居なかったので急に人が立っていてかなり驚いた。
「おー、圭。お前入学式さぼったな?」
「出ても寝るだけじゃんー」
けだるそうに答える彼、圭こと西園寺圭は俺の次男だった男だ。
兄弟で唯一やんちゃで手に負えなかった。
男女かかわらずふらふらと遊び、手のかかる子だった。
いや、手のかかる子ほどかわいいのではあるが。
誰をも惹き付けるタイプは一番秋人に似ていると思った。
秋人も今世では息子達と血は繋がっていないとはいえ、仲良くしているのだろう。
「ちょっと、秋人。オンナってところ否定しろよ」
「え?なんで?」
めっちゃ圭がじろじろ見てんじゃん!そんな目で見るのやめて!!
「ふーん、やっぱ身体の具合イイの?」
「えぇ―?ナイショ」
「オィイ!意味ありげな風に言うな――!!身体の関係もった事はないだろうが!!(今世では!)」
「雪つれない事言わないで」
なんか俺ツッコミキャラになってない?大丈夫?
なれないからちょっと疲れちゃったよ俺。
「ほ、ほら…理事長、先輩、戻りましょう?理事長も新学期で忙しいでしょう?早く理事長室に戻ったらどうですか?」
急かすように俺は立ち上がり。二人を背中で押した。
途中、寮と理事長室では方向が違うので、秋人とは別れた。
(う、三男に続き、次男にまで見られるとは…気まずい…。秋人覚えてろ)
「俺、三年の西園寺圭。あんたは?」
「あ、一年の中山雪です」
「ねー、さっきの話本当?」
「え?」
二人きりになると圭は足を止めて俺の方を向く。
「身体の関係はまだだって話」
「は…はぁ…」
圭はにこにことした表情だがこれは圭の余所行きの笑顔だと知っている。
曖昧な返事を漏らすと、ぐいと身体を引き寄せられ、その動きは慣れたように俺の唇が奪われた。
「んむっ、っ…」
顎を持ち上げられ、腰に手をかけられれば、圭の身体はびくともしなかった。
どうした圭!!俺にキスするなんて気がおかしくなったのか…!?
濃厚な口づけをされることどれくらいだろう、口を開放された時には呼吸もままならず、少し涙目になってしまった。
「っ、はぁ…はぁ…」
「雪ちゃん息乱れちゃってかわいー。秋人さんまだ手出してないの勿体ないなぁ~。俺奪っちゃおうかな♪」
おいおいおい、圭!!俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!
そんな事は言えず、やめておけ、俺はΩでもなく普通の少年だぞという意味を込めてとりあえず全力で嫌な顔をしておいた。
笑い事じゃないぞ圭!
これは秋人からも、圭からも俺は貞操を守らねばならないと思った。
先が思いやれる。
次の日登校すると、とんでもない波乱が待ちうけているとは知らずに。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる