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しおりを挟むまあ、私の心の中では、この美形国王に対する罵詈雑言が渦巻いているが、表面的にはにっこりと口角を上げて、外交スマイルを維持している。
しかし、この夫婦、交互に私に話しかけるが、お互いの会話が無い。目線すら交わさない。それなのにお互いが思い合ってるような演技をしている。たかが十六の小娘にすら見破ることができるなんて、なんて冷たい夫婦仲なんだろう。
目前でこの夫婦を見ていると、私の未来がここにあるようでゾッとする。王太子が徹底的に反抗してくれてよかったとすら思える。
「……それでわたくしの自慢の温室にお招きしたいと思ってますの。植物とか花とかお好き?」
おっと、王妃から話しかけられていた。
「はい、我が国の王宮の中に森がありまして、よく森林浴に参りますの。花も大好きですわ」
「それはよかったわ。後で私が交配させた花をお届けしますわ。わたくしの数少ない趣味ですの」
「ほお、王妃は花の交配が趣味なのか」
酷薄国王よ。妻の趣味も知らんのか。ふん、酷いものだと内心うんざりした。
デザートが出てきたところで、言われた言葉を告げる。
「疲れてしまって、本日は早寝をしようと思いますので、これで失礼させていただきます」
そう言って、立ち上がり、二人に礼をして自室に戻る。ふかふかの絨毯に足を取られてふらりとする。自覚はなかったが、狸と狐の化かし合いのような夫妻との食事は神経を使って、ずいぶん消耗したようだ。
でも、今日はまだ終わってない。気を引き締めて王妃と対面しなくては。
自室に戻り、湯を再び使い、寝間着にガウンを羽織って夜中を待つ。寝たことにしてあるから、侍女は全員向かいの部屋に行った。灯も枕元灯を残すのみで、薄ぼんやりしている。頼りになるのは屋根裏の暗部と扉の前の護衛騎士だけだ。
知らない国にやってきたとは言え、こんなに暗部大作戦みたいになるなんて思わなかった。一の兄の言う通りに兄の配下の暗部を多めに連れてきてよかったと思うわ。そんな事を考えていたら、かたんという音がして、はっと気がついたら誰かがベッドの端に腰をかけている私の前に立っていた。
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