番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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 転がり落ちてきたものをリヒャルトが拾う。

「確かに、たいした効力はなさそうですね。そのまま証拠として提出してもいいでしょう」

 リヒャルトが窓を開けて手を挙げると、手のひらから白い鳩が出てきて出て行った。うわ!びっくりした。魔術なんだろうけれど何だろうあれ。
 アデリナは最初叫んでいたけど、いつの間にか猿ぐつわかまされて、ぐるぐる巻きにされて転がされている。いくら魔術師の塔の中では身分は関係ないと言っても、禁忌とされている魔道具を王太子に向けては、言い訳はできないだろうな。それが例え犬猫にしか効かないとしてもね。

 それにしても鮮烈な登場だったのに、もう退場なのか?美形なのにもったいない。折角、婚約者に立候補してくれている人だったのに。残念である。でもアデリナは魔術師で、婚約者候補から外れているけれど、それ以外の魔術師になれない魔力がほどほどしかないこの国の貴族令嬢はどうだろうか。今扉の前で間抜け面で立っているテオバルトはかなりな美形だ。きっと立候補したい貴族令嬢はいっぱいいるのではないか?わざわざ他国で調達しなくても良いのでは無いかしら。自国調達しないのは、番にこだわる国王と上手くいかないからだと思っていたけど、アデリナのように一方的にテオバルトに惚れ込んでいれば、ちょっと、いやだいぶだけれど、冷たくされてもめげないのではないかしらね。
 そんなことを考えていたら、窓から数人騎士の姿の人間が入ってきた。びっくりしたよ。本当に窓から出入りするんだ。私達が一階の壁から入れてもらえたのはラッキーだったわけだ。

「お呼びと伺って」

 そう言ってかかとを打ち付けて敬礼する騎士達。

「禁忌魔道具使用の罪でアデリナ・ホーフを貴族牢に入れておけ。魔術枷ははめてある。魔術での逃亡はできない。ホーフ侯爵を王宮に呼び出すように」

 アデリナがすごい勢いで顔を横に振る。もがもが言っているが何言っているかはわからない。
 リヒャルトがてきぱき物事を進めているが、こちらは何もすることが無い。ふと扉の前に立っているテオバルトを見たら、視線を感じたのかテオバルトもこちらを見た。逃げ出すかと思ったが、何かいぶかしげにこちらを見ている。目が合ってしまったが、目を逸らすのも負けたようでしゃくなので、じっと見つめ返してやった。私とテオバルトの間にまるで敵のように火花が散った。いや私から言うと敵のようなものだな。
 じっとにらみ合ったが、テオバルトから目をそらして言った。

「きみはだれだ」

 何よ、肖像画見てないのか。そちらは送ってきてないけれども、ことらは礼儀としてちゃんと送ってあるのに。
 あー不愉快だ。弱小国はつらいよ。それでも、立ち上がり美しく礼をして言ってやった。

「レーゼル国、第一王女エレオノーラでございます」

 
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