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ミラ編
ミラの初恋
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ここからミラ編になります。
ミラ編はアンジェラ編より過去からの話になります。
登場する王太子は同じ人物で王太子が十六歳の頃です。
***
「あの女は本当に可愛げがないな。学問などできなくてもいいから、リリアのように男の庇護欲をそそってくれる女が理想だ。それにリリアの豊満な胸は柔らかくていいぞ。おい、お前ら、リリアの胸は俺専用だからお前達は手を出すなよ」
ディビスとその取り巻き達の下卑た笑い声が王宮の休憩用の個室で響く。
私は隣の部屋の内部で続いてる扉のノブに手を掛けたところだった。あちらには大きな衝立がありこちらの姿は見えない。
あそこで揶揄されてる婚約者は私のことだ。
私ミア・ホークは伯爵家の娘だ。
私自身は人様の口の端に上るような容姿を持っていないが、ホーク伯爵家は王国創立以来の名家の一つだ。古いだけで財政的に苦しいのは古い名家にありがちなことだ。それでも家の名前に釣られて、縁談は結構あった。
その中から父が選んだのは、ドルン侯爵家の嫡子ディビスだ。ドルン侯爵家は輸入販売の商会を経営して、裕福だが新興の侯爵家なので我が家の名家と言う価値を求めたのだろう。そして我が家は見返りに経済的に援助してもらうことを求めていた。
初めて会ったのは私が十五歳ディビスが十八歳だった。ディビスは私をじろりと眺めて
「なんだ。名家の娘と言うから期待したのに地味な女じゃないか」
と吐き捨てて私にすぐ興味を失ったようだった。婚約者として義務的に会うこと以外手紙も来なかった。
私は読書が好きで父が王城に上がる時に一緒に上がって、王宮の図書室に入り浸った。我が家とは比べられない規模の本があり、夢中で本を読み漁っていた。
ある日自分の背より高いところにある厚い本を取ろうと背伸びをして本の背に指をかけたら、その本が私に向かって落ちてきた。
厚い本だったので、思わず目を瞑って、痛みに準備したら、誰かが私の肩を引き寄せてくれた。
恐る恐る目を開けると、プラチナブロンドが窓から入る日の光で輝き逆光になって碧眼が深い湖のような煌めきをたたえていた人が片手で私の肩を引き、片手で本を受け止めてくれていた。
「レディが無理して本を取らないで、入り口にいる司書に声をかけて」
思わず見惚れて、返事が遅くなってしまった。
「す すみません。ありがとうございます。これからはそうします」
長身のその人は私に微笑みを与え本を渡して、図書室の内部の階段を降りて行った。その背中に
「あの」
と思わず呼び掛けた。振り返ってその人は
「どうしました?」
「あ いえ なんでもありません」
ここによく来るのか聞いてみたかったが、勇気が出なかった。それでもその人が誰かすぐわかることになる。
私に興味のない婚約者でもさすがに私のデビュタントはパートナーとして迎えにきた。
「なんだ おまえは今年のデビュタントの中でも下の方の容姿だな」
王宮の大ホールに入ってすぐにディビスは白いドレスを着たデビュタントの令嬢達を眺めてそう言った。その時侍従の先払いがあり王族がおいでになったことに気がついた。国王陛下と王妃様、そして王太子殿下。あの方は王太子殿下だったのか。
「王太子殿下も今年十六になられたから舞踏会に参加されるのだな。これは高位貴族令嬢方は色めき立つな」
周りの人々がひそやかに噂話をしている。目をやると王太子殿下の周りを高価なデビュタントの衣装を身に纏った令嬢方が取り巻いている。公爵、侯爵家の令嬢方だろう。うらやましかった。王族が踊ってくださるダンスも王太子殿下は高位貴族令嬢方優先だろう。
ディビスはお義理にファーストダンスを踊るとさっさと自分の取り巻きの方に行ってしまった。
私の王族のダンスは王弟殿下だった。
「おやおや 王太子は大人気だな。エリックはまだ婚約者がいないからね。よかったらまだエリックに踊ってもらったら?」
にこやかに王弟殿下が仰られる。俯いて返事もできなかった。
ダンスが終わって壁に近づき、王太子殿下が軽いステップで高位貴族令嬢方とダンスをしているのをずっと目で追っていた。
いつのまにかディビスが迎えにきたので帰ることにした。何かディビスがぶつぶつ言っていたが耳に入らなかった。
ミラ編はアンジェラ編より過去からの話になります。
登場する王太子は同じ人物で王太子が十六歳の頃です。
***
「あの女は本当に可愛げがないな。学問などできなくてもいいから、リリアのように男の庇護欲をそそってくれる女が理想だ。それにリリアの豊満な胸は柔らかくていいぞ。おい、お前ら、リリアの胸は俺専用だからお前達は手を出すなよ」
ディビスとその取り巻き達の下卑た笑い声が王宮の休憩用の個室で響く。
私は隣の部屋の内部で続いてる扉のノブに手を掛けたところだった。あちらには大きな衝立がありこちらの姿は見えない。
あそこで揶揄されてる婚約者は私のことだ。
私ミア・ホークは伯爵家の娘だ。
私自身は人様の口の端に上るような容姿を持っていないが、ホーク伯爵家は王国創立以来の名家の一つだ。古いだけで財政的に苦しいのは古い名家にありがちなことだ。それでも家の名前に釣られて、縁談は結構あった。
その中から父が選んだのは、ドルン侯爵家の嫡子ディビスだ。ドルン侯爵家は輸入販売の商会を経営して、裕福だが新興の侯爵家なので我が家の名家と言う価値を求めたのだろう。そして我が家は見返りに経済的に援助してもらうことを求めていた。
初めて会ったのは私が十五歳ディビスが十八歳だった。ディビスは私をじろりと眺めて
「なんだ。名家の娘と言うから期待したのに地味な女じゃないか」
と吐き捨てて私にすぐ興味を失ったようだった。婚約者として義務的に会うこと以外手紙も来なかった。
私は読書が好きで父が王城に上がる時に一緒に上がって、王宮の図書室に入り浸った。我が家とは比べられない規模の本があり、夢中で本を読み漁っていた。
ある日自分の背より高いところにある厚い本を取ろうと背伸びをして本の背に指をかけたら、その本が私に向かって落ちてきた。
厚い本だったので、思わず目を瞑って、痛みに準備したら、誰かが私の肩を引き寄せてくれた。
恐る恐る目を開けると、プラチナブロンドが窓から入る日の光で輝き逆光になって碧眼が深い湖のような煌めきをたたえていた人が片手で私の肩を引き、片手で本を受け止めてくれていた。
「レディが無理して本を取らないで、入り口にいる司書に声をかけて」
思わず見惚れて、返事が遅くなってしまった。
「す すみません。ありがとうございます。これからはそうします」
長身のその人は私に微笑みを与え本を渡して、図書室の内部の階段を降りて行った。その背中に
「あの」
と思わず呼び掛けた。振り返ってその人は
「どうしました?」
「あ いえ なんでもありません」
ここによく来るのか聞いてみたかったが、勇気が出なかった。それでもその人が誰かすぐわかることになる。
私に興味のない婚約者でもさすがに私のデビュタントはパートナーとして迎えにきた。
「なんだ おまえは今年のデビュタントの中でも下の方の容姿だな」
王宮の大ホールに入ってすぐにディビスは白いドレスを着たデビュタントの令嬢達を眺めてそう言った。その時侍従の先払いがあり王族がおいでになったことに気がついた。国王陛下と王妃様、そして王太子殿下。あの方は王太子殿下だったのか。
「王太子殿下も今年十六になられたから舞踏会に参加されるのだな。これは高位貴族令嬢方は色めき立つな」
周りの人々がひそやかに噂話をしている。目をやると王太子殿下の周りを高価なデビュタントの衣装を身に纏った令嬢方が取り巻いている。公爵、侯爵家の令嬢方だろう。うらやましかった。王族が踊ってくださるダンスも王太子殿下は高位貴族令嬢方優先だろう。
ディビスはお義理にファーストダンスを踊るとさっさと自分の取り巻きの方に行ってしまった。
私の王族のダンスは王弟殿下だった。
「おやおや 王太子は大人気だな。エリックはまだ婚約者がいないからね。よかったらまだエリックに踊ってもらったら?」
にこやかに王弟殿下が仰られる。俯いて返事もできなかった。
ダンスが終わって壁に近づき、王太子殿下が軽いステップで高位貴族令嬢方とダンスをしているのをずっと目で追っていた。
いつのまにかディビスが迎えにきたので帰ることにした。何かディビスがぶつぶつ言っていたが耳に入らなかった。
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