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しおりを挟むその日以降、リリアンヌはクラウスを連れて、訪問してくるようになった。主目的はレオンハルトの教育。あとはユリアのドレスの仮縫いや装身具の選択だったけれども……
「俺だって一応執務があるし、別に社交界のメス豹に狙われてないのに」
と、レオンハルトと一緒に教育されるクラウスが声をあげると、愛する妻に一喝される。
「あなたは見た目で狙われているわけじゃないわ」
「じゃあ、なんだよ」
「お金よ。裕福なエーレンフェスト家の愛人に収まって、贅沢したい女がいっぱいいるのよ」
「なんだ、金か」
いくらか、がっかりしたように言うクラウスをリリアンヌが睨め付けた。
「あら、残念そうですわね。愛人が欲しいのですか」
クラウスは思わず立ち上がって、ふるふると震えて言った。
「とんでもない!平凡顔の俺は麗しのリリアンヌがそばにいてくれるだけでいいんだ!他に女はいらないよ」
ユリアはそんな兄夫婦を見て、心底羨ましいと思った。あんな風に言い合えるのは、お互いどれだけ信頼し合っているのか。
「お兄様とリリアンヌはいつからの仲なの?」
ユリアが尋ねるとクラウスが答えた。
「父はユリアの婚約は早々と決めたが、俺の方は放置だった。だから自分で見つけたのさ。こんなにいい女を落としたなんて、本当に自分を褒めてやりたい」
クラウスが押しに押して婚約に持ち込んだのだろうか。クラウスはユリアと一緒の茶の髪に茶の瞳。醜くはないけれど、レオンハルトに比べると、本人も言ったように平凡だ。
「義妹に嘘を言わなくてもいいのよ」
リリアンヌが苦笑いして、ユリアを見た。
「え?」
ユリアが聞き返すとリリアンヌが言った。
「事実は学園で私が一目惚れして、クラウスと同級生だった兄に頼んで橋渡しをして貰ったのよ」
意外だった。リリアンヌは豊かなハニーブロンドに澄んだ紫の瞳で、女性にしてはやや背が高いが、毅然とした美しい女性だ。公爵家の生まれだと聞いている。はっきり言って、公爵令嬢だったリリアンヌはもっといい縁談はあったろうに。
「意外です。ご実家で反対されませんでしたか」
思わず本音をユリアが漏らすと、レオンハルトがユリアを自分の方に引き寄せた。
「ユリア」
「あら、レオンハルト様、クラウスに気を遣ってくださるの?それをこれからユリアを社交界で守るのに使ってくださいね」
リリアンヌに切り込まれて、神妙に頷くレオンハルト。
「ユリア、クラウスはおおらかで、受け止めてくれる器の大きさが魅力的よ。しかも有能。エーレンフェスト家は兄妹ともに優秀なのよ。だから見た目なんて磨けばいいの。あなたは、ハーブ香油をノンナが毎日塗り続けて、髪も肌も艶々で魅力的なプロポーション、ね、レオンハルト様」
レオンハルトに話がふられた。
「磨きあげなくても、昔から思慮深くて優しいユリアが好きだったよ」
レオンハルトはユリアの肩を抱きながら、耳元で囁く。これをもっと早く言ってくれたら、ユリアはこんなに苦しまなかっただろうにと、ユリアはもう居なくなった昔のユリアをかわいそうに思った。
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