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騎士団長子息 リューイかく語りき
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いや そんなに怯えられると話しにくいな。心配するな。俺には貴君らを処分する権限などないから。ただ一点重版すると聞くから訂正して欲しいだけなんだ。
何から言っていいのかわからないが、何しろ俺は幼い頃から武に生きてきたから弁は立たないんだよ。
おおそうだな。学園に入学したところから話すか。俺は騎士団長に任ぜられた伯爵家の生まれだ。父は騎士団長で兄達はすでに騎士団に入団している
王太子殿下と同い年のこともあり、幼い頃から側近として身近に侍っていた。
エリザベス嬢と王太子殿下との仲?どうだろう?いいのか悪いのか朴念仁の俺にはわからなかったな。ただ言えることは、エリザベス嬢は王妃に相応しい美しく品位と教養がある素晴らしいお方だということだ。
それまでもエリザベス嬢と王太子殿下が不仲と断じて、王太子殿下にすり寄ってくる令嬢は多かった。
俺は王太子殿下が肉体を使ってまで露骨に言い寄って来る令嬢方を全く相手にしないから、王太子殿下はエリザベス嬢に態度こそつれないが、エリザベス嬢を婚約者として認めているのだと思っていた。
将来の一国の王と王妃だ。惚れた腫れたでなく、有能であるかどうかで結びついたお二人だと思っていた。
それがどうして男爵令嬢みたいな女を殿下がそばに置くことにしたのか?残念だがそれは俺もわからん。いや本当にわからんのだ。あの女はまず俺とアルフレッドに近づいて来た。アルフレッド?知ってるだろう今回の事で渦中の一人の宰相閣下の子息さ。
あの女は俺に「お兄様達との剣の腕の差でコンプレックス持っているんでしょう。あなたはあなたよ自信を持って」とか言いやがった。そんなものもってない。本当かって?本当だ。隠してなんかない。俺はそんなに器用じゃないからな。じゃあどうしてコンプレックスをもってないのか?
それは簡単だ。俺を俺として認めてくれる人がいるからだ。一番上の兄は剣の天才だ。俺は到底追いつかん。将来騎士団長になるだろう。二番目の兄は剣の才能は一番目の兄に劣るが、集団をまとめる才能がある。副団長として一番目の兄のできないところを補助していくだろう。
俺か?俺は二人に到底及ばんと言ったろう?それでもコンプレックスを持ってないのかって?実は小さい頃は俺は何もできんと拗ねていた。それを見ていたのだろう、俺の婚約者が叱ってくれた。じめじめしてるんじゃない!男だろう!努力してないくせに!と男装姿で俺の前に立ちはだかった。
目がキラキラしてな。そりゃきれいだった。
なんで男装してたかって?彼女の家も武の家でな。父親は将軍なんだ。彼女も子供の頃から剣を嗜み、学園ではエリザベス嬢の護衛を兼ねていた。
話が先走ったが俺は婚約者のカトリーヌにどやされて、剣に体術にと頑張った。共に稽古してくれるカトリーヌの笑顔に励まされてな。今の俺は剣も話術も兄上達には及ばんが、体術はなかなかのもんだぞ。
それをあの女はコンプレックスとか訳わからん事言って胸を押しつけて来るんだ。カトリーヌ様にはこんな身体ないでしょうとか言いやがって。カトリーヌは普段から動きやすいように晒しで巻いているんだ。そんな事も知らんくせに、カトリーヌは実は……ゲホンゲホン……まあそういうことだ。
護衛を兼ねている俺があの女が殿下に近づくのを身体を張って止めるべきだったのではないかって?耳が痛いな。
だけれどもあの女を俺は嫌いでな。関わりあいたくないと思った。殿下もどういうわけかあの女といる時は俺らから距離を取っていた。まあ俺らが居なくても、近衛騎士が護衛してるから安全なんだが。
卒業パーティーの日に王太子殿下がエリザベス嬢に婚約破棄を言い出した時はびっくりした。
側にいたあの女が「リューイ様もカトリーヌ様なんかと婚約破棄して」と言った時は激怒した。思わず怒鳴りつけた。「俺はカトリーヌを愛してる。失礼なこと言うと斬るぞ」とな。
王太子殿下とエリザベス嬢が行動を共にしないのは入学前からなので、俺は気にして無かった。まさか婚約破棄するなどと思いもしなかった。カトリーヌに疎いと怒られたが、男女の機敏などわからん。カトリーヌがいてくれればいい。
それで俺が訂正を頼みたいのは、文中でまるで俺があの女に一時的に気があったように書かれているところだ。今聞かせたように俺はあの女が嫌いだ。カトリーヌの悪口を俺に吹き込もうとしていたことだけでも許せん。カトリーヌにも自分は身分が下のくせに男女とか言ってたと言うし。カトリーヌ?カトリーヌは将軍家の長女で伯爵令嬢だ。
俺が一時でもあの女が好きだったと書かれていることにカトリーヌが怒ってな。カトリーヌに怒られるとどうにもいかん。
なんだ。尻にひかれてるとは。まあいいか事実だな。幸いあの騒ぎで俺があの女に批判的だった事でお咎めなしで、卒業後すんなりと騎士団に入団した。数年頑張ってカトリーヌと結婚するからカトリーヌのご機嫌を損ねたくないんだ。頼んだぞ。
何から言っていいのかわからないが、何しろ俺は幼い頃から武に生きてきたから弁は立たないんだよ。
おおそうだな。学園に入学したところから話すか。俺は騎士団長に任ぜられた伯爵家の生まれだ。父は騎士団長で兄達はすでに騎士団に入団している
王太子殿下と同い年のこともあり、幼い頃から側近として身近に侍っていた。
エリザベス嬢と王太子殿下との仲?どうだろう?いいのか悪いのか朴念仁の俺にはわからなかったな。ただ言えることは、エリザベス嬢は王妃に相応しい美しく品位と教養がある素晴らしいお方だということだ。
それまでもエリザベス嬢と王太子殿下が不仲と断じて、王太子殿下にすり寄ってくる令嬢は多かった。
俺は王太子殿下が肉体を使ってまで露骨に言い寄って来る令嬢方を全く相手にしないから、王太子殿下はエリザベス嬢に態度こそつれないが、エリザベス嬢を婚約者として認めているのだと思っていた。
将来の一国の王と王妃だ。惚れた腫れたでなく、有能であるかどうかで結びついたお二人だと思っていた。
それがどうして男爵令嬢みたいな女を殿下がそばに置くことにしたのか?残念だがそれは俺もわからん。いや本当にわからんのだ。あの女はまず俺とアルフレッドに近づいて来た。アルフレッド?知ってるだろう今回の事で渦中の一人の宰相閣下の子息さ。
あの女は俺に「お兄様達との剣の腕の差でコンプレックス持っているんでしょう。あなたはあなたよ自信を持って」とか言いやがった。そんなものもってない。本当かって?本当だ。隠してなんかない。俺はそんなに器用じゃないからな。じゃあどうしてコンプレックスをもってないのか?
それは簡単だ。俺を俺として認めてくれる人がいるからだ。一番上の兄は剣の天才だ。俺は到底追いつかん。将来騎士団長になるだろう。二番目の兄は剣の才能は一番目の兄に劣るが、集団をまとめる才能がある。副団長として一番目の兄のできないところを補助していくだろう。
俺か?俺は二人に到底及ばんと言ったろう?それでもコンプレックスを持ってないのかって?実は小さい頃は俺は何もできんと拗ねていた。それを見ていたのだろう、俺の婚約者が叱ってくれた。じめじめしてるんじゃない!男だろう!努力してないくせに!と男装姿で俺の前に立ちはだかった。
目がキラキラしてな。そりゃきれいだった。
なんで男装してたかって?彼女の家も武の家でな。父親は将軍なんだ。彼女も子供の頃から剣を嗜み、学園ではエリザベス嬢の護衛を兼ねていた。
話が先走ったが俺は婚約者のカトリーヌにどやされて、剣に体術にと頑張った。共に稽古してくれるカトリーヌの笑顔に励まされてな。今の俺は剣も話術も兄上達には及ばんが、体術はなかなかのもんだぞ。
それをあの女はコンプレックスとか訳わからん事言って胸を押しつけて来るんだ。カトリーヌ様にはこんな身体ないでしょうとか言いやがって。カトリーヌは普段から動きやすいように晒しで巻いているんだ。そんな事も知らんくせに、カトリーヌは実は……ゲホンゲホン……まあそういうことだ。
護衛を兼ねている俺があの女が殿下に近づくのを身体を張って止めるべきだったのではないかって?耳が痛いな。
だけれどもあの女を俺は嫌いでな。関わりあいたくないと思った。殿下もどういうわけかあの女といる時は俺らから距離を取っていた。まあ俺らが居なくても、近衛騎士が護衛してるから安全なんだが。
卒業パーティーの日に王太子殿下がエリザベス嬢に婚約破棄を言い出した時はびっくりした。
側にいたあの女が「リューイ様もカトリーヌ様なんかと婚約破棄して」と言った時は激怒した。思わず怒鳴りつけた。「俺はカトリーヌを愛してる。失礼なこと言うと斬るぞ」とな。
王太子殿下とエリザベス嬢が行動を共にしないのは入学前からなので、俺は気にして無かった。まさか婚約破棄するなどと思いもしなかった。カトリーヌに疎いと怒られたが、男女の機敏などわからん。カトリーヌがいてくれればいい。
それで俺が訂正を頼みたいのは、文中でまるで俺があの女に一時的に気があったように書かれているところだ。今聞かせたように俺はあの女が嫌いだ。カトリーヌの悪口を俺に吹き込もうとしていたことだけでも許せん。カトリーヌにも自分は身分が下のくせに男女とか言ってたと言うし。カトリーヌ?カトリーヌは将軍家の長女で伯爵令嬢だ。
俺が一時でもあの女が好きだったと書かれていることにカトリーヌが怒ってな。カトリーヌに怒られるとどうにもいかん。
なんだ。尻にひかれてるとは。まあいいか事実だな。幸いあの騒ぎで俺があの女に批判的だった事でお咎めなしで、卒業後すんなりと騎士団に入団した。数年頑張ってカトリーヌと結婚するからカトリーヌのご機嫌を損ねたくないんだ。頼んだぞ。
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