乙女ゲームの登場人物かく語りき

ぐう

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宰相子息 アルフレッドかく語りき

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 急に来てすまないな。そんなに驚かなくても大丈夫だから。クレームを入れに来たわけではないから。なんと言うかお願いだな。

 リューイが来たそうだな。そう騎士団長の息子だ。カトリーヌに叱られるから頼み込んだとか言っていたが、本当に内容を変えてくれるのか?

 そうか 作者には伝えてくれるのだな。仮想の物語だから現実と合致することが有っても偶然か。うん 上手いこと言うな。それでも世間ではこの小説はあの騒動を描いたものだと思ってる。

 そんなに怯えるな。文句を言いに来た訳じゃないと言っただろう。私もリューイと一緒でどうしても変えて欲しい点があるのだ。


 私とリューイは王太子殿下と同じ年で八歳の時に側近になった。うん?ああエリザベス嬢も来てるのか。そう王太子殿下とエリザベス嬢が婚約したのも同じ時期だ。王太子殿下に裕福で血統のいい公爵家のエリザベス嬢を当てがい、文官代表の宰相の息子と武の騎士団長の息子を側近にする。国王陛下による囲い込みだ。

 エリザベス嬢との婚約は政略ではあったけれども、王太子殿下の態度は褒められたものではなかった。結婚するのは決まっているのだから、少しでも歩み寄ろうとしなければと何度も言ったのだが、聞き入れて頂けなかった。と言って、あの女が出て来るまで女を近づける事はなかった。

 エリザベス嬢?非の打ち所のない令嬢と表現していい。あんなに所作が美しく知識も申し分ない令嬢のどこが嫌なのか、王太子殿下に聞いても苦笑いするだけ。側近でありながら私は王太子殿下の気持ちがわからなかった。


 学園に入学して、あの女は高位貴族である我々に礼儀もなく、話しかけて来た。私には「ご両親の事で心を痛めているのですね。わかります。私が慰めて差し上げます」と言ってすり寄って来た。残念ながら私は両親の事で悩んでない。母は生き生きと仕事しているし、父は宰相として忙しい。

 私の両親は政略結婚だった。だが不和では無かった。どうしてもお互い恋情は抱けず、あくまで幼馴染みで友達だった。
 後継はいるから男が産まれるまで目を瞑って頑張ったそうだ。男と女の仲になっても恋情は湧かず私が生まれてからは部屋は別々だ。
 高位貴族は後継さえ設ければ、後は愛人を作るとかするが、私の両親はそうではなかった。父は娼館にこそ通ったが母を大事にしていた。母は父に許されて趣味を生かしてドレスメーカーを立ち上げて忙しくしている。お互い邸で顔を合わせば穏やかに接している。姉も私もこんな夫婦もいるのだなと達観している。子供の私達は決して不幸じゃない。なのにあの女が事情も知らずに私を不幸と決めつけて腹が立った。

 だから私は礼儀知らずで知ったかぶりなあの女が大嫌いだった。そんな女を近づける王太子殿下に口が酸っぱくなるほど諫言したが聞き入れてもらえず、あの女といる時は私とリューイは遠ざけられるようになった。

 あの女を気に入ったとしても、よくて愛妾だ。え?高位貴族の養子にすればいいのにだって?そう言う例も過去にあっただろうが、エリザベス嬢の公爵家に逆らってまで養子に取る高位貴族はいない。エリザベス嬢の代わりにあの女が王妃になったら良い目にあえるから養子にする家があるのではないかって? 残念ながら母親の生まれが悪くて後ろ盾がない王太子殿下の後ろ盾にするための婚約だ。王妃がエリザベス嬢の公爵家以下の家の養子では足りない。
 一生公爵家の顔色を見る政権になる。上手くは回らないだろう。それともっと確実な事は国王陛下のお許しが下りないだろう。あの女を王妃になどしたら、政権は回らないだろうから。


 まあ 政治の話はこれぐらいで。わかっているだろうけど他言無用だ。そんなに青ざめて震えなくてもいい。私はまだ下位の文官で父親の補助でしかない。

 忘れるところだった。できるなら訂正して欲しいのは、私がこの結果を先見してエリザベス嬢の冤罪を私が晴らしたように書かれているが、前に立ってあの女を断罪したのは私だが、証拠を集めたのはエリザベス嬢の公爵家の影なんだ。だから何もしてない。王太子殿下の側近でありながら殿下を救えなかった。後悔ばかりしている。そんな男をよく書くのはやめてくれ。それだけだ。

 それではこれで。作者によろしく。
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