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髙﨑 レイ

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序章 刻の始まり

走る馬は灯す

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 人は命の危機に瀕すると走馬燈を見ると言われる。
 その走馬燈とは命の危機に対して生まれてから今までの過去をから現在までを返り見ることでその状況を打開するための策を見出すものだ。


 ただ仮想空間でソレが起こる事はほぼないとされている。
 当然だ。現実での肉体が死に瀕しているわけでもなく仮想上での死それもほぼ確実に蘇生するわけだからだ。

 それにも例外は存在する。
 例えばゲーム内でのデス、イコール現実での死というデスゲームの場合は肉体にも僅かながらも死が近づくわけだが。
 逆の場合は違う。
 仮想空間であろうが現実世界であろうがその人物に刻まれた記憶であり経験であるのだから現実での死際に仮想空間での思い出が理論上は出てくるはずだ。

 その空間をあくまでゲームであり作られたデータであると理解できていれば。その場所の力を仮初と理解していれば。


 そう世の研究者はこう考えるわけだ。
 もし現実と寸分違わないゲームを作りその中で幾つもの経験を積ませて現実での死を覚悟するような出来事が起これば異能に覚醒するのではないかと。


 そんな記憶がふと蘇る。
 なぜそんな記憶が蘇ったのは分からないのだが。

 仮想上とはいえどもここまで肉体が痛むとは思わなかった。いや覚えていなかった。
 その記憶を忘れていたのも今この場で思い出したのもソレが原因なのだろう。
「たっく、本当に胸糞悪い話だ」
 結論から言えばその仮説は間違いではあったが正解でもあった。


 天埜香織というイレギュラーが存在したがため。
 

 さて現状確認だ。
 木一本の残骸が周囲に散らばっているが遥か前方にミコト。良かった、彼女は無事だ。

 多分さっきのは走馬燈の一種だな。幻痛もそうだろう。体の軋みを感じてもデフォルトが痛覚0のはずだし。まああったとしたら確実にMAXだが。
 LPは5分以下。MP・STは8割程度。まだ十二分に戦える。否、戦略級武術 天埜流武術免許皆伝 天埜香織に或る魂が戦えと叫ぶ。体全身がいつになく軽く感じる。いつになく全ての感覚が冴え渡っている。

 本来ならこんな事象はもう少し後半に起こるべきなのだろうが。それじゃあただのご都合主義だ。この状態はただリミッターが外れただけのスペックでしかない。コレは再帰させるための通過儀礼なのだろう。
 面倒な事この上ない。異能も術理も使われられその上、こんな事も思い出せさたんだ。その報いは受けてもらおう。


 剣を構え銃で照準を定める。瞬間付呪インスタンスはどちらも切れている。緩くなったものだ。本来ならあんな空飛ぶトカゲ如き30分あれば十分だ。
「さて、覚悟しろクソトカゲ」
 両足をバネのようにして爆発的に加速する。

「第二ラウンドだ。瞬間付呪インスタンス嵐 対象:銃 剣」
 その砲声とともに6連射で動きを牽制する。それだけで十分だ。

 反撃開始だ。
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