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髙﨑 レイ

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壱章 クマさん道場

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「じゃあこれで儂は失礼する。天埜香織、貴殿はなすべきことをなせ。まだそこにはいないのだろう」
「分かりました。ただかの地にての実戦は宜しいのでしょうか?」
「構わん。ただの数日である場所ではなかろう」
 良かった。例のくまさんはかなり強いらしいしただの対人戦だけで鎧兜なんて化け物倒せるとは思っていない。それに白咎を裁定でも馴染ませて置くべきだろう。
「香織の今日、明日の授業を免除しとけ。ここはそういう学園だろう」
 学園長に対してそう告げる英義。えっ、そのレベルですか。まあこの刃を馴染ませようとしたらかなり時間が掛かるわけだし。NEO‘Sや学業に割く時間を削るだろうし。それよりもこの学園の在り方も知ってるんですか翁。
「分かったわ。では香織くんももう帰宅して取り組みなさい。荷物は沙月さんに持って行かせるわ」
 半同棲生活もご存知ですか。いや近所だからほぼ会いにくると言うか半ば通い妻状態だからな。
「分かりました。では自分はこれで」
 全員の視界から消えて部屋を出て即座に靴を履き替えて高速軌道で家に戻る。そしてすぐに部屋着に着替えて胴着を持って地下道場に入る。そして素早く胴着に着替えて白咎を抜き放つ。

 抜刀術枝転

 短刀術葉転

 片刃術吹崩

 ナイフや短刀で使われる術理を全て使っていく。これからすべきは初代以外は本当に僅かすぎる人しか辿りついていない場所。いくら中途半端に異能が使えるとはいえどもそれは異端だ。あまり頼りすぎるモノではない。

 それから1時間ほど【白咎】を振い続けたが手足のようには未だ扱えない。まあ本来このサイズだと護衛か自殺用だしな。刃物である以上は殺す武器となり得る。天埜流は開祖の位置に辿り着くまでに様々なモノを取り組んできた。だからこそ日本には存在しなかった武器の類も扱える。

「ふう。そう言えばもう授業終わってるな。次」
 【白咎】を納刀して隠すと今度は今朝使った真剣や刀に槍を取り出して振るう。

 更に1時間ほど鍛錬をして汗を軽く流す。

「香織!急に帰ったいうから心配した」
 家に戻ると3人の姿はなく沙月1人が居てキッチンで洗い物と夕飯の仕込みをしていたらしい。
「悪い。個人的な頼まれ事が入ってな。明日も一日中稽古する」
 両親は海外だしな。師範代連中もこんな件では出ないだろうし。それに何よりもあの人は僕に何かをさせたがっている。それを無視できるほど甘い性格はしていない。
「それは命に関わるよね!」
「ああ。僕に回ってきたわけだし」
 本来なら浄化は司祭系の人の仕事。妖怪が依頼者である以上それは出来ないだろうし僧侶には頼んでそれでいて失敗してもう後には引けないだろう。あの学園生を頼ったわけでもあるからな。
「ならなんで!あの時の事をわすれたの?」
「まさか。ただ今回の件はアレよりも遥かに危険がある。もしも最悪な事態になったら終わるぞ日本」
 綿津見の名だしな。海産資源が取れないとなると経済破綻は免れ無い。だからこそ最悪の結末も用意できるレベルでの使えると手札を全て使い切ったのだろう。それにあの時とは条件を変える。
「言っておくが誰一人として連れて行く気はないからな。お前らにはまだ早い!」
「でも香織が」
「でもじゃない!そのレベルに危険だ。例え何が相手でも勝つ気でいるがどう出るか分からない以上は誰一人として失いたくない。分かってくれ!」
 心配してくれるのは嬉しいがもし力不足で失う方が怖い。それも今までずっと側にいてくれた異性の幼馴染だ。傷一つ僕以外によって付けて欲しくない。長生きしてほしい。更にいうとナニカの血で手を汚す必要なんてまるでない。ずっと綺麗なまま穢れを知らずに己が人生を歩んでほしい。
「分かったわ。その代わり必ず生きて戻ってきて。そして私に貴方の世界を書かせて」
「勿論だ。必ず戻る」
 何というか流石は作家っていう感じの告白だな。ここまで言わせた以上は必ず戻らないとな。それにまだ目標の場所へと届いてすらいないのだ。死ぬわけにはいかない。
「頼むわよ。ダーリン」
「おうって誰がダーリンだ⁉︎」
 やっぱりこの辺は変わらず沙月だな。でもその方が変に気を背負わなくて良いかもな。僕たちには僕たちのやり方があるわけだし。それを思い出させてくれるだけでも有り難い。
「手伝うことは?」
「野菜の皮むきと切るのは任せた」
「はいよ」
 それで渡されたのは大量の人参、ジャガイモ、玉ねぎ。ふむ肉じゃがか。確かにこの量切ればリメイクにも使えるからな。

 約20分すると一応の仕込みが完了した。
「じゃあやりますか?」
「勿論。レベル上げもしとかないと」
 互いにソファーで寝転がり唱える。
「「NEO‘S起動」」

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