異世界に飛ばされちゃったわたしは、どうもお姫様の身代わりに花嫁にされちゃったらしい。

みにゃるき しうにゃ

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たぶん最終章、レースの魔法の女神様の再来と呼ばれるのは また別のおはなし。

その5

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 あれからちょくちょくお姉さんはやって来て、わたしと一緒にレースを編むようになった。

 ちゃんとした職人さんに作ってもらったレース針も使い勝手が良いらしい。

 元々魔方陣を編むことの出来るお姉さんはレース編みの理解も早く、しかも魔方陣の形は頭の中に入っているから本を見なくても編める。すごい。わたしには到底ムリ。

 そんなわけで器用なお姉さんと不器用なわたしとじゃ、数ヶ月の差なんてあっという間に埋められてしまい、今じゃお姉さんのほうが編むのが早いくらい。

「こうやって見ると確かに、服の飾りに使うのも悪くないわねぇ」

 編みかけのレースを自分の服にあて、お姉さんがつぶやく。

「でしょう。スカートや袖の縁にこんな風にちょっぴりレースを付けるだけでもすごく可愛くなりますし、細かなレースを広範囲につけてドレッシーにも出来るんですよ。今編んでるのは白糸ですけど黒い糸のレースとかもセクシーで素敵だと思うんですっ」

 この世界に一緒に持ってきた本が、コースターとかドイリーばかり載っている本で残念だ。魔方陣とは全く違う形の四角とかブレードとかの素敵なレースもお姉さんに見せてあげたい。

「黒い糸のレース……。想像出来ないわ。今度染めてもらおうかしら」

 そんな話をしていたら、ノックと共にクロモがやって来た。

「最近入り浸り過ぎじゃないか、姉さん」

 そんな憎まれ口を叩くけど、本気で嫌がってるわけなない事はわたしもお姉さんも知っている。

「あら、こんなに可愛い妹ちゃんが出来たんですもの。入り浸りたくもなりますわ」

 言いながらお姉さんはきゅっとわたしに抱きついてくる。

「お姉さん、危ないですよ。普通の針ほどは尖ってないけど、レース針だって刺さる時には刺さるんですから! 部活の先輩が昔うっかり転んだひょうしに刺さっちゃって、先が鈎状になってるから抜くのもめっちゃ痛かったって言ってました。治るのも時間かかったって」

 想像するだけで痛い。震えがきちゃう。

「まあ。そうね、テーブルの上とはいえハサミもあるのだし、気を抜いちゃダメね。ごめんなさい」

 そう言いながらもお姉さんはにこにこ笑っている。

 一方クロモはムッとした顔でお姉さんを睨んでる。

 そんなクロモにお姉さんは「ふふふ」と笑いながら告げる。

「いいじゃない。昼間の数時間くらい。あとはクロモと妹ちゃん、ずーっと二人っきりでしょう? ひっつきたければその時どーぞ」

 お姉さんはすぐにそうやってわたしとクロモをからかう。

 最初の頃は動揺して赤くなっちゃってたけど、最近だいぶ慣れてきた。それはクロモも同じなのか、以前のように過剰に反応することなく「あー、はいはい」と流して返事をする。

「そんな事より、本を貸してくれないか? 君の世界から持ってきた本を」

「え? うん。分かった。ちょっと待っててね」

 最近は魔方陣ばかり編んでたから、わたしが持ってきた本は部屋にしまいっぱなしだった。まあすぐに取り出せる場所に隠してるからすぐに持って来れたけど。

 日本語の書かれたその本を見ると、懐かしくてちょっとうるっときてしまった。クロモやお姉さんに見られたら心配かけちゃうから、慌てて涙を拭う。

「はい。どーぞ。けど、何に使うの? クロモ、日本語読めないよね? でもそーいえば不思議だよねー。文字は違うけど、言葉は同じだなんて。あ、もしかしてクロモ、わたしに翻訳魔法とか掛けてくれてたり?」

 本を渡しながらクロモに問いかける。するとクロモは少し困ったように笑いながら答えてくれた。

「魔法は掛けていない。同じなのは偶然だろう。そしてその本は、君の世界を探す手がかりにしたい」

 手がかり。そっか。クロモがどんな探し方をしているのかはわたしには分からないけど、手がかりがあった方が探しやすいよね。

「他にも何かいる? こっちの世界になくてあっちにある物……。あ、スニーカーとかどうかな。こっちにはああいう靴無いでしょう? あとは……。あ、お金とか。文字とか絵が入ってるから手がかりになりやすいかも!」

 そう思って早速取りに行こうとしたら、クロモがわたしの手を取った。

「いや。取りあえずは本だけでいい。他の物はまた次に必要になったら頼む」

「そう? 手がかり多いほうが分かりやすいと思うけど。あ、でもそっか。まだあんまり絞れてない時にあれこれ出してもどれから手を付けたらいいのか分かんなくなっちゃうか。うん、分かった。じゃあまた何か必要になったら遠慮なく言ってね」

 にこりと笑いかけると、クロモも「ああ」と返事をしながらにっこりと笑ってくれる。

 最初の頃は王子様スマイルだーと思っていたその顔も、今ではクロモの笑顔だって思えるようになってきた。他の誰でもない、クロモの笑顔。

 そうして笑顔を交わしているとふと、すぐ傍でお姉さんがニヤニヤしながらわたし達を見てるのに気づいた。

「お邪魔虫はそろそろお暇したほうが良いかしら?」

 楽しそうに言いながらお姉さんがテーブルの上のレース糸を片付け始める。

「え? 別に邪魔なんて……」

 お姉さんを止めようとそちらに行きかけて、クロモと手をつないだままだった事に気づいた。

「ん? ああ、すまない」

 クロモもそれに気づいて放してくれる。

「あら、つないだままで良いのに。わたしはもう、帰りますから」

 まだいてくれても全然構わないのに。引き止めたけど「可愛い弟の恋路を邪魔したくないわー」と言って、結局お姉さんは帰って行ってしまった。


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