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◇エクス視点◇
パタ……パタ……
俺は頬に水が滴り落ちてくる感触で目を覚ました。
「う……ううん……。」
どうやら芝生の上に倒れているようだ。
「……生きているのか……?。」
俺は重い身をゆっくりと起こした。
俺の名前はエクスカリビア、勇者をしている。
そんな俺は、先程まで魔王と戦っていた。
窪んだ目元が特徴の、髪の長い細身の男だった。
彼の駆使する『詠唱』は恐ろしい威力で、相討ち覚悟で俺は技を繰り出した。
……辺りから気を失っていたらしい。
死んだ自覚があったんだけど、どうやらまだ生きているようだ。
いや、まて。
俺は自分の体を擦った。
怪我が無い。
先程魔王に喰らった詠唱の怪我が消えていた。
身体中炭化するほどの酷い怪我だった筈だ。
不思議に思い、辺りを見渡す。
「あれ……?、さっきまで魔王の城にいたのに……?。」
気が付けば、公園の様な所で寝そべっていた。
地面がタイルで覆われた、整然とした公園だ。
近くにはブランコや鉄棒がある。
その先には噴水があって、奥の方には長い滑り台があるようだ。
子供のはしゃぐ声が聞こえる。
そして、俺の近くに倒れている人影を発見した。
魔王だった。
「魔王、大丈夫か?。」
俺は彼の体を揺する。
彼は敵だけど、今の状況や場所を確認しておきたかったからだ。
「う……勇者様……?。」
魔王がゆっくりと身を起こした。
「勇者様……ご無事でしたのね。
わたくしも生きていたのですか……。」
「魔王、教えてくれ。
ここは何処だ?。」
「え?。」
魔王が辺りを見渡す。
「わたくしの城ではない……?。」
彼は不思議そうに首を傾げた。
「わたくし達のいた場所とは随分違いますわね……。
何て整備された場所なんでしょう。
ああ、もしかしたらここは天国なのかも知れません。
そうだったんですの……、わたくしと勇者様は同じ天国に行く者同士でしたのね……。」
「おいおい魔王魔王、ちょっと待ってくれ!。」
天国?。
俺は疑問に思う。
天国と言うにはあまりに現実的な世界だと思ったからだ。
「魔王、少し村人に話を聞こう。」
俺はブランコの前で遊んでいる子供連れの母親に話を聞くことにした。
「あの、お嬢さんすみません。」
俺はありったけの笑顔に詠唱を乗せて彼女に話しかける。
勇者の技の1つ、『魅了』だ。
「まあ、勇者様ったらゲスな技をお持ちで……。」
「うるさいよ、魔王。」
ちなみにこの魅了、自分でも自信がある技だ。
これで落ちない女性はいなかった。
しかし…………
「翔ちゃーん!、そんな座りかたしないの!。」
女性は子供から目を離さなかった。
「あらぁ、シ・カ・ト・ですわね♡。」
魔王がニマニマと面白そうな笑顔を向けてくる。
「いちいちうるさいよ、魔王!。」
自慢の技が不発となった俺は、照れ隠しも込めて魔王に当たった。
「と言うより、まるで俺達が見えてないかの様だ。」
そう俺が言うと、顎に手をおいた魔王が先程の母親の前に立つ。
「お嬢さん、少しお話良いかしら?。」
しかし彼女は言葉を返してこない。
と言うより、認識されてない様だった。
「これは勇者様の仰る通りかも知れませんわね……。」
魔王が複雑そうな表情を浮かべ、女性の目の前で手を振った。
女性は全く気付いていない様だった。
俺は溜め息をついた。
「何て事でしょう……。
まずは、わたくし達を認識出来る人を探し出さなければいけない様ですわね……。」
魔王が肩をガックリと落とす。
でもその言葉を聞いた俺は、少しやる気が出てきた。
「魔王、良い提案をありがとう!。
まずは俺達が見える人を探し出そう!。」
「あら勇者様、この状況なのに何か元気ですわね。」
彼のその言葉に、俺は大きく頷いた。
やっぱり勇者をやってるだけあって、逆境に強いと言うかピンチを楽しむ気持ちが強いんだと思う。
「よし!、目的が決まれば話は早い。
まずはこの公園を出よう。」
俺の提案に魔王が頷く。
「分かりましたわ勇者様。
わたくしもお供致します。」
こうして俺と魔王は公園を後にした。
パタ……パタ……
俺は頬に水が滴り落ちてくる感触で目を覚ました。
「う……ううん……。」
どうやら芝生の上に倒れているようだ。
「……生きているのか……?。」
俺は重い身をゆっくりと起こした。
俺の名前はエクスカリビア、勇者をしている。
そんな俺は、先程まで魔王と戦っていた。
窪んだ目元が特徴の、髪の長い細身の男だった。
彼の駆使する『詠唱』は恐ろしい威力で、相討ち覚悟で俺は技を繰り出した。
……辺りから気を失っていたらしい。
死んだ自覚があったんだけど、どうやらまだ生きているようだ。
いや、まて。
俺は自分の体を擦った。
怪我が無い。
先程魔王に喰らった詠唱の怪我が消えていた。
身体中炭化するほどの酷い怪我だった筈だ。
不思議に思い、辺りを見渡す。
「あれ……?、さっきまで魔王の城にいたのに……?。」
気が付けば、公園の様な所で寝そべっていた。
地面がタイルで覆われた、整然とした公園だ。
近くにはブランコや鉄棒がある。
その先には噴水があって、奥の方には長い滑り台があるようだ。
子供のはしゃぐ声が聞こえる。
そして、俺の近くに倒れている人影を発見した。
魔王だった。
「魔王、大丈夫か?。」
俺は彼の体を揺する。
彼は敵だけど、今の状況や場所を確認しておきたかったからだ。
「う……勇者様……?。」
魔王がゆっくりと身を起こした。
「勇者様……ご無事でしたのね。
わたくしも生きていたのですか……。」
「魔王、教えてくれ。
ここは何処だ?。」
「え?。」
魔王が辺りを見渡す。
「わたくしの城ではない……?。」
彼は不思議そうに首を傾げた。
「わたくし達のいた場所とは随分違いますわね……。
何て整備された場所なんでしょう。
ああ、もしかしたらここは天国なのかも知れません。
そうだったんですの……、わたくしと勇者様は同じ天国に行く者同士でしたのね……。」
「おいおい魔王魔王、ちょっと待ってくれ!。」
天国?。
俺は疑問に思う。
天国と言うにはあまりに現実的な世界だと思ったからだ。
「魔王、少し村人に話を聞こう。」
俺はブランコの前で遊んでいる子供連れの母親に話を聞くことにした。
「あの、お嬢さんすみません。」
俺はありったけの笑顔に詠唱を乗せて彼女に話しかける。
勇者の技の1つ、『魅了』だ。
「まあ、勇者様ったらゲスな技をお持ちで……。」
「うるさいよ、魔王。」
ちなみにこの魅了、自分でも自信がある技だ。
これで落ちない女性はいなかった。
しかし…………
「翔ちゃーん!、そんな座りかたしないの!。」
女性は子供から目を離さなかった。
「あらぁ、シ・カ・ト・ですわね♡。」
魔王がニマニマと面白そうな笑顔を向けてくる。
「いちいちうるさいよ、魔王!。」
自慢の技が不発となった俺は、照れ隠しも込めて魔王に当たった。
「と言うより、まるで俺達が見えてないかの様だ。」
そう俺が言うと、顎に手をおいた魔王が先程の母親の前に立つ。
「お嬢さん、少しお話良いかしら?。」
しかし彼女は言葉を返してこない。
と言うより、認識されてない様だった。
「これは勇者様の仰る通りかも知れませんわね……。」
魔王が複雑そうな表情を浮かべ、女性の目の前で手を振った。
女性は全く気付いていない様だった。
俺は溜め息をついた。
「何て事でしょう……。
まずは、わたくし達を認識出来る人を探し出さなければいけない様ですわね……。」
魔王が肩をガックリと落とす。
でもその言葉を聞いた俺は、少しやる気が出てきた。
「魔王、良い提案をありがとう!。
まずは俺達が見える人を探し出そう!。」
「あら勇者様、この状況なのに何か元気ですわね。」
彼のその言葉に、俺は大きく頷いた。
やっぱり勇者をやってるだけあって、逆境に強いと言うかピンチを楽しむ気持ちが強いんだと思う。
「よし!、目的が決まれば話は早い。
まずはこの公園を出よう。」
俺の提案に魔王が頷く。
「分かりましたわ勇者様。
わたくしもお供致します。」
こうして俺と魔王は公園を後にした。
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