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それからおれは真っ直ぐ走っていた。
だんだんと日が落ちてゆき、辺りは暗くなろうとしていた。
日が落ちるまでの長い時間、この森が異様であることに気がつくのには充分な時間があった。
逃げ出してから最初に違和感を感じてのは森の景色だ。
いくら走っても木が変わらない。
似たような木があるのかとも思ったが、コブの具合までそっくりなのである。走れば走るほど同じ木が現れる。
次に決定的におかしなことがあった。
走っても走っても後ろを振り返るとあの家が見えるのである。
家の方を向きながら、後ろ歩きをしてみても全く進んでいる気がしない。
どんなに走ろうが横を見ても振り返っても同じ景色。
違うのは、日の高さだけ。
もう太陽は沈みかけ、辺りが見えないほど暗くなってしまった。
目には涙が込み上げ、頭にはばあちゃんの顔が浮かぶ。
きっと一直線に走れば、いつもの村に出て、ばあちゃんが夕飯の支度をしながら
待っててくれている。そうに違いないと自分を慰め、再び走り始めるも後ろを見ると全く進んでおらず、絶望に走る気力すらなくなる。
「ばあちゃん…うっグス、母ちゃん…ヒッ、ウかえりたいよぅ」
その場に膝を抱えて泣き崩れる。
顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだ。
もう走れない。
もう疲れた。
お腹が空いた。
このまましんでしまうのだろうか?
もうばあちゃんにも母ちゃんにも会えないのだろうか?そんなことを考えているとさらに涙が込み上げてくる。
完全に暗闇に呑まれた森の中で蝉の声だけが変わらず響いている。
「夕飯までには帰っておいでっていったよね」
後ろから声がした。
もう言い返す気力も逃げる力も残っていない
「一度ここにくるともう出られないんだ。」
やしろは正面に回って来ると、そっと手を差し出した。
「さぁ、帰ろう」
このまま森で泣いていたら死んでしまうかもしれない。怖い動物に食べられちゃうかもしれない。それだったら、この男の手を掴んでもいいんじゃないだろうか。
…もう考える力もあさとには残っていなかった。
考える前に身体が、手がやしろの手へと伸びていた。
白いその手は優しくあさとのひとまわり小さな手を包み込む。
とにかく疲れた。
手を握られるの確認したのを最後にあさとの意識は夜の森よりも暗く深い底へと落ちて行った。
だんだんと日が落ちてゆき、辺りは暗くなろうとしていた。
日が落ちるまでの長い時間、この森が異様であることに気がつくのには充分な時間があった。
逃げ出してから最初に違和感を感じてのは森の景色だ。
いくら走っても木が変わらない。
似たような木があるのかとも思ったが、コブの具合までそっくりなのである。走れば走るほど同じ木が現れる。
次に決定的におかしなことがあった。
走っても走っても後ろを振り返るとあの家が見えるのである。
家の方を向きながら、後ろ歩きをしてみても全く進んでいる気がしない。
どんなに走ろうが横を見ても振り返っても同じ景色。
違うのは、日の高さだけ。
もう太陽は沈みかけ、辺りが見えないほど暗くなってしまった。
目には涙が込み上げ、頭にはばあちゃんの顔が浮かぶ。
きっと一直線に走れば、いつもの村に出て、ばあちゃんが夕飯の支度をしながら
待っててくれている。そうに違いないと自分を慰め、再び走り始めるも後ろを見ると全く進んでおらず、絶望に走る気力すらなくなる。
「ばあちゃん…うっグス、母ちゃん…ヒッ、ウかえりたいよぅ」
その場に膝を抱えて泣き崩れる。
顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだ。
もう走れない。
もう疲れた。
お腹が空いた。
このまましんでしまうのだろうか?
もうばあちゃんにも母ちゃんにも会えないのだろうか?そんなことを考えているとさらに涙が込み上げてくる。
完全に暗闇に呑まれた森の中で蝉の声だけが変わらず響いている。
「夕飯までには帰っておいでっていったよね」
後ろから声がした。
もう言い返す気力も逃げる力も残っていない
「一度ここにくるともう出られないんだ。」
やしろは正面に回って来ると、そっと手を差し出した。
「さぁ、帰ろう」
このまま森で泣いていたら死んでしまうかもしれない。怖い動物に食べられちゃうかもしれない。それだったら、この男の手を掴んでもいいんじゃないだろうか。
…もう考える力もあさとには残っていなかった。
考える前に身体が、手がやしろの手へと伸びていた。
白いその手は優しくあさとのひとまわり小さな手を包み込む。
とにかく疲れた。
手を握られるの確認したのを最後にあさとの意識は夜の森よりも暗く深い底へと落ちて行った。
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