迷子

5

目の前の男は何を言っているのだろうか？

「、おれの家はもっと遠くにあるよ？」

おれの家はこの家でも無ければ、ばあちゃんの家でもない。

「前はね？でも今日からはここが君の家になるんだよ」

やばい、本当に意味がわからない。
目の前の男は何もおかしくはないといった顔をしているが、明らかにおかしい。
もしかしたら、やしろはヤバい大人なのかもしれない。
そういえば、世の中には子供が変な意味？で好きな変態がいるって母ちゃん言ってた。

やっぱりおれを誘拐するつもりだったんだ！

「帰る！」


そう言い捨てて玄関まで全速力で駆けた。


後ろからはこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえる。

今度は道を覚えているからスムーズに進める。
玄関から出た後のことは逃げてから考えよう。今はとにかく逃げなければ！




見えた！玄関だ！


急いで玄関の取手に手をかける。
力を込めて引き戸を開けようとするがビクともしない。

「なんで！なんで開かないんだよ！、！」

扉の中央を見ても鍵らしきものも見つからない。
早くしなければ、男に追いつかれてしまう


早くしなければ！


ドンッガタｯ


顔の真横に白い手が置かれる


「森は危ないよ」



追いつかれた


「おれをばあちゃんのところに返せ！ゆうかいはん！」

そう怒鳴ると男の目がギョロっと動き、目が完全にあってしまう。


「別に？帰りたいなら帰ってみなよ。」


予想していた言葉とは違う言葉が男の口から出てきた。


「帰るから、この扉の鍵を開けろよ！」


そういうと、男は扉の上と下についたネジのようなレバーのような物を動かした。


「夕飯に間に合うよに帰って来るんだよ？」


扉が開いた瞬間、俺は一目散に駆け出した。
誰が帰るかっ！森の中を一直線に走る。
いくら森の中とはいえ、神社の雑木林に繋がっているはずだ。真っ直ぐ走ればいつも通りの田んぼが見えてくるはず！

そう信じてとにかく走った。

走りながら、あの男はなんだったんだろうか？
頭の狂った人で、子供をさらうへんたい？
その割にはあっさり玄関を開けた。

結局何だったかわからない。
帰ったらばあちゃんに聞いてみよう。


そう、帰ったら。