Fault Loop

モカ

文字の大きさ
4 / 9

しおりを挟む





「お願いします! 必ず役に立ちますから! あなたとご一緒させて下さい!!」

「……俺はお前が思ってるような奴じゃない」


しかし、そんな男との二人旅は長くは続かなかった。暫くすると男に仲間が出来たからだ。

男のやり方? それとも生き様? に感銘を受けた、行き場のない者たちがどうか連れてって下さいと、足手纏いにならないからと、自分の有用性を売って男に乞うようになったのだ。

最初は男も断っていたものの、諦めの悪い者や、同じことを言い出す人たちが多くなってくれば、折れざるを得なかったようで。結局街をめぐるごとに人数が増え、旅団並みの数になった。

その時にはもうただの旅人というよりも、各々の特技を生かし芸団まがいの事をしていて。逆に奪わなくても路銀が稼げるようになったのは、男にとっても嬉しい誤算だったのかもしれない。


「旦那!」

「団長」

「おはよございます、兄貴!」


「……お前らは俺を何だと思ってるんだ」


男を慕う者に囲まれて、俺と一緒に二人きりで旅をしていたときよりも笑顔が増えたのは俺にとって嬉しい誤算だった。…でも、なんでそう思うのか、少しだけ悔しさや悲しさも混じっているこの感情がよく分からなかった。

だから、男の仲間に聞いてみた。

俺の体質を知っているのは全員ではなかったけど、一番最初に男に志願してきたナイフの扱いが上手いルビと、半ばぐらいに来たけど男からそれなりに重宝されている情報収集が得意なエマとか、他にも少しいるけど、俺を特に気にかけてくれていたのはこの二人だったから。


「…ねぇ、ルビ、エマ」

「なぁに?」

「あんだよ」


どうして男が俺を使わないのか、男に対する俺の気持ちとか。

両親が肉塊と化してから、自分でもよく分からないほど沈んでしまった感情は、きっと死んではいなかった。死ぬ前に、男に掬い上げられてしまったのだ。俺という命ごと。

全てを話し終えると、ルビはとても痛ましげな顔をして、エマは表情を見る前に抱き締められてしまったから分からなかったけど、きっとルビと同じような顔をしていたんじゃないかなと、思った。


「……どうしてか、分かったの?」

「……どうして? そんなの、一つしかないわ」

「………あぁ、そうだな、一つしかない」


どうしてこんなことをするのか意味が分からなくてそう言うと、エマの抱き締める力が強くなった。ルビも痛ましげな顔のまま俺たちに近づいて、頭を撫でてきた。

きょとりとする俺に、二人はまるで愛しいものを見るような眼差しを向けて言う。


「きっと、あなたはあの人のことが大好きなのよ」

「……だい、すき…?」

「すっごく、いっぱい好きってことだ。好きより上の、好き」

「すきよりも上の、すき…」


二人の結論は、あまり口に馴染みのない言葉だった。何度も反芻する俺を見て、エマは笑う。


「あの人だって、きっとそうよ」

「え?」

「あの人もあなたが、すっごく、いっぱいいっぱい、だーい好きだから、そんな風に思うのよ」

「…あの男が…俺を…?」


思っても見なかったことだった。

確かに、俺の感情はルビたちが言ったものに近いかもしれない。でも男も…? 俺と同じ感情を持っているなんて、微塵も思っていなかった。そんな…でも、まさか……。

頭をぐるぐるさせている俺に気を使ってか、二人はそれ以上言葉を重ねなかった。ただ黙って、男が就寝前に俺を迎えにくるまで見守ってくれた。


「……寝るぞ。来い」

「…ん。おやすみなさい、ルビ、エマ」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


男は昼間は忙しくしていて信頼できる仲間に俺を任せて仕事をしているが、夜になると必ず俺を迎えに来て同じ布団で寝るのだ。

最初は俺が逃げ出さないか警戒しているからこうしているのかと思ったけど、エマたちの話を聞いた後だとなんだか違って思える。不思議だ。


「……なんだ」

「…別に。今日はちょっと、寒いから」

「……そうか、なら今日はもう一枚上にかけて寝るか」

「…ん」


抱き上げられたまま考え事をしていたからか、無意識に男の服を掴んでいた。寒いなどと誤魔化せば、布団を増やすなどと言う男に、もしかしたら本当に大事にされているのかもと思った。

だとしたら、俺はどうやって男に応えればいいのだろう。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの夜が明けるまで

世夜美沢よよ子
BL
圭佑と聖は、ささやかな幸せを分け合いながら暮らしていた。 だがある冬の朝、圭佑は事故で突然この世を去る。 死んだはずの圭佑が次に目を覚ましたのは、二人で暮らしていたアパートだった。 時間はすでに二年が経っている。 そして彼の目の前で、恋人の聖は“終わらせよう”としていた。 声も届かず、触れることもできないまま、それでも圭佑は聖を追いかける。 やがて二人は、かつて何度も通った高台の公園へ辿り着く。 星の下で、ついに圭佑の声と姿を認識した聖は、壊れたように言葉を溢れさせる。 時間がない中で語られる、言えなかった想い。 果たされなかったプロポーズ。 「忘れてくれ」と「忘れないでくれ」の矛盾した愛。 別れのあと、聖は圭佑の言葉を胸に、生きることを選ぶ。 それは長く、静かで、確かな一生だった。 これは、 愛する人を失った夜が、朝へと変わるまでの物語。

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

もう遅いなんて言わせない

木葉茶々
BL
受けのことを蔑ろにしすぎて受けに出ていかれてから存在の大きさに気づき攻めが奮闘する話

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

処理中です...