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そしてまた、繰り返す
しおりを挟む全てが光に包まれた。
暖かく、懐かしい、もう二度と見ないと誓ったはずの、あの光。
瞬いた瞬間にそれは収まり、周りを見渡せばあれだけいた数の敵が掻き消えていた。それは恐らく、あの子供の能力で。
あの少しで届くはずだった手を握りしめて、その場に膝をついた。
「ーーまた上手くいかなかった…ッ!」
もう二度と流すまいと、抑えていた感情が涙と共に溢れる。
今度こそ、今度こそ上手くいくと思ったのに。始まりは今までで最悪だったけど、二人で旅をし、仲間ができて、あの子供から「俺を使わないの?」と問いかけられなくなったから、上手く行っていると思っていた。
子供が自分の意思で生き延びようとしていた。俺が言ったからではなく、自分で考えてその上で行動していた。感情の起伏は今まで一番小さかったけど、その分ブレがなくて発作的に死のうともしなかったし、安定して成長してくれた。
仲間が出来てからは、少しづつ自分が感じているものが何なのか分かるように、いや、分かろうとしていた。
12歳を越えたのは、今回が初めてだった。
きっと、色々順調にいっていると思っていたから油断が生まれた。それが敵に付け入る隙をつくらせ、あげく全てを失った。
あの子供も、俺を慕ってくれた仲間も。
馬鹿か、俺は。舞い上がりすぎたのだ。あの子供が、俺を慕うような視線を向けてくれたから。
きっと、大丈夫なんて、思ってしまった。
結局、仲間は約束通り子供を優先して死んで、子供は俺を優先して死んだ。
あまり笑うのが得意ではない子供が、俺に精一杯に笑ってみせたあの顔を思い出し、拳を地面に叩きつけた。
「ありがとうなんて言われるほどのことを、俺はまだお前にしてやれてなかったのに!」
まだこれからだったのに。人生はまだまだこれからなのに。あの子供に、この世界の、もっと綺麗なところを見せてやりたかったのに。
ーーあぁ、それもまた最初からだ。
血の滲む拳をほどき、さっきまで子供がきていた衣服をかき分け、その中で眠る赤ん坊を抱き上げた。
一歳にも満たないような、その子供だったものを抱いて、立ち上がる。
「あと、何度やり直せばいい…」
何度やり直しても子供は奪われ、使い捨てられるか、俺の為に力を使ってしまう。
どうすればいいのだろう。もう思いつく限りのことはやり尽くした。そして、そのどれも上手くいかなかったのだ。
すやすやと寝息を立てる赤ん坊を見下ろし、やり切れない気持ちが込み上げてきて、また視界が滲む。
「なぁ、リネア。今度は、今度こそ、お前を守り切るから。そうしたら、普通の人間として、生きて、笑って、泣いて、悲しんで、そして、俺と一緒にーー」
呟いた言葉は、掠れていて誰にも届かない、俺だけの誓いの言葉だった。
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